この記事の結論:分譲マンション賃料の上昇は、市場を把握する手掛かりです。ただし募集賃料の地域平均を、個別住戸の成約賃料や純収益としてそのまま使うことはできません。対象物件に近い条件、実際の契約、空室や費用を確認して収益評価へつなげます。
- 東京都と東京23区、募集賃料と成約賃料を区別します。
- 地域平均の上昇率は、既存契約の賃料増額率ではありません。
- 賃料が上がっても、費用や還元利回りの条件次第で評価額は変わります。
ADEX / 不動産鑑定の知識
この記事の結論:分譲マンション賃料の上昇は、市場を把握する手掛かりです。ただし募集賃料の地域平均を、個別住戸の成約賃料や純収益としてそのまま使うことはできません。対象物件に近い条件、実際の契約、空室や費用を確認して収益評価へつなげます。
対象:不動産評価の依頼者・不動産実務の担当者。本稿は判断材料を整理する一般的な解説です。個別案件の法的・税務上の判断や価格・結果を保証するものではありません。
資料確認日:2026年10月16日。ニュース解説は報道で確認できた事実と実務上の提案を分けています。

2026年10月15日のR.E.portは、東京カンテイの9月調査について、東京都の分譲マンション賃料が1平方メートル当たり5,025円、前月比0.8%上昇となり、2009年3月の調査開始以来初めて5,000円台に達したと報じました。対象は分譲マンションを賃貸する際の募集賃料です。
東京カンテイの公表では、東京23区は5,215円で前月比0.9%上昇。東京都全体と23区では集計範囲が異なります。この記事では地域平均を個別住戸の賃料に換算せず、評価資料として扱う際の注意点を考えます。
賃料が上がったという見出しだけで、すべての地域や築年帯が同じ動きをしているとは判断できません。比較する資料には、地域、対象月、物件種別、募集か成約かを必ず併記します。
募集賃料は、貸主側が募集時に示す条件です。成約までに条件が変更されたり、一定期間の賃料免除が付いたりする可能性があります。募集情報が豊富だからといって、実際の契約条件と同じ精度で扱えるわけではありません。
次に、契約上の賃料と現実の入金にも違いが生じ得ます。空室期間、滞納、契約開始月、賃料免除期間などを確認します。さらに不動産の運営に必要な費用を検討し、収入総額と純収益を分けます。管理費や修繕の負担、固定資産税等の条件を無視して、募集賃料だけを利回りで割らないことが重要です。
資料が募集事例に限られる場合は、その制約を明記します。「成約事例」と書き換えたり、根拠なく一定割合を割り引いたりせず、どの情報が不足し、何を追加確認すべきかを示します。
同じ区内でも、駅からの距離、築年数、面積、階数、設備、眺望、契約形態などは異なります。広域平均は市場の方向を知る資料、近い条件の事例は個別住戸を検討する資料として役割を分けると、説明が明確になります。
例えば、周辺の募集事例が築浅の小型住戸に偏っているのに、対象が築年数の経った広い住戸である場合、平均単価を面積に掛けただけでは比較条件がそろいません。似た事例を選んだ理由と、なお残る違いを記録します。これは比較の考え方を示す想定例です。
既存の賃貸借契約がある物件では、現在の賃料、改定の経緯、残存期間なども確認します。新しい募集相場が上がったからといって、来月から同じ割合で賃料を増額できると収支に織り込むことは避けます。
収益に着目する評価では、どの期間の収益を、どの条件で見込むかが重要です。市場賃料の上昇を考慮する場合も、稼働状況、費用、契約上の制約、将来の修繕などとの整合性を確認します。
直接還元法の考え方を単純化した「年間純収益÷還元利回り」の計算でも、分子と分母の前提が動けば結果は変わります。例えば純収益が増えても、リスク等を反映する利回りの条件が変われば、評価額が同じ割合で増えるとは限りません。実際の鑑定評価では、手法や各数値の採用根拠を対象不動産に即して検討します。
| 確認する項目 | 見落としやすい点 | 実務上の確認 |
|---|---|---|
| 集計範囲 | 東京都と23区を混同 | 対象地域を明記する |
| 賃料の種類 | 募集額を実績収入に置き換える | 募集・成約・入金を区別する |
| 比較条件 | 平均単価だけで住戸を評価 | 築年・面積・駅距離等を照合 |
| 収益の前提 | 費用と空室を省略 | 収入と費用を同じ期間で整理 |
必ず同じように上がるわけではありません。実際の契約や収益、費用、物件の条件、利回り等の前提が影響します。市場動向と個別評価を分けて検討します。
市場動向を把握する資料になり得ます。ただし成約・入金の実績とは区別し、対象物件との比較可能性や情報の制約を確認して扱います。
アデックスリサーチアンドコンサルティング株式会社の視点では、市場の上昇を示すだけでなく、どの条件を対象物件へ反映したかを説明できることが重要です。資料の種類と採用理由を残し、平均値から個別評価への飛躍を避けます。
下表は直接還元の計算関係を示す仮定です。実際の市場利回りや、特定物件の鑑定評価額を示すものではありません。
| 比較する項目 | シミュレーション(説明のための想定例) |
|---|---|
| 基準例 | 年間純収益120万円÷仮定の還元利回り4%=3,000万円 |
| 収益だけ変化 | 年間純収益126万円÷4%=3,150万円 |
| 利回りも変化 | 年間純収益126万円÷4.5%=2,800万円 |
| 読み方 | 純収益が5%増えても、利回りの条件が変われば評価は同率上昇とはならない |
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分譲マンション賃料の最高値は、個別物件の収益を見直すきっかけになります。募集と成約、広域平均と類似事例、収入と純収益を区別して扱いましょう。
評価の説得力を支えるのは、強い見出しよりも、対象物件に採用した条件をたどれる説明です。
記事の制度・市場情報は、本文で示した時点と条件に基づきます。個別物件の評価では、依頼目的、価格時点、権利関係と資料の確認が必要です。鑑定評価の業務と進め方もご覧ください。
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