企業が合併や買収(M&A)を行う際、対象企業の不動産資産をどのように評価するかは、最終的な企業価値や取引価格に大きく影響します。
そこでカギとなるのが、不動産の専門家である不動産鑑定士による鑑定評価と徹底したデューデリジェンスです。
本記事では、経営者や公認会計士をはじめとするM&Aの関係者に向けて、不動産鑑定評価が「なぜ有効なのか」を解説します。
M&Aで不動産鑑定評価が重要になる理由
M&Aにおける不動産資産の評価は、財務分析だけでは捉えきれない部分があることが多々あります。
ここで、不動産鑑定士による「実勢価格」を踏まえたアプローチが加わることで、企業価値の正確な算定とリスクの明確化が可能になります。
1. バランスシート上と実勢価格の乖離を是正
企業のバランスシートには、不動産が取得原価や固定資産税評価額で計上されている場合があります。
しかし、市場動向や再開発計画などによって実勢価格が大きく変動していることも少なくありません。
不動産鑑定評価により、リアルタイムの価値を反映させることで、M&A取引価格の妥当性を高め、過大評価や過小評価による取引リスクを回避できます。
2. デューデリジェンスにおけるリスク検証
M&Aのデューデリジェンス(DD)では、財務・法務・税務など多面的な分析が行われますが、不動産に関してはさらに法的規制、耐震性能、環境リスクなどの要素を深堀りする必要があります。
不動産鑑定士は、現地調査や周辺取引の分析を通じて、潜在的なリスクを洗い出し、将来的な修繕コストや資産価値下落リスクを可視化します。
3. 含み益・含み損の明確化
対象企業が保有する不動産に含み益(時価が帳簿価格を上回る状態)がある場合、正確な算定ができていないと取引価格が不当に低くなりかねません。
また、含み損(時価が帳簿価格を下回る状態)についても早期に把握しておくことで、買収後のリスクや追加コストを見誤らずに済むのです。
不動産鑑定士が関与する具体的なメリット
不動産鑑定士をM&Aのデューデリジェンスに組み込むことで、さまざまなメリットが期待できます。以下では主なポイントを挙げます。
1. 交渉材料の強化
公的資格者による評価書は、買い手・売り手ともに取引条件の交渉を進めるうえで、強力な根拠となります。
「不動産資産にこれだけの価値がある」「特定の要因で将来の価値が下がる可能性がある」といった主張を、客観的データに基づいて行えるため、相互理解を深めやすくなります。
2. 資金調達や金融機関との連携
買収資金の調達に際して金融機関からの融資を受ける場合、担保不動産の評価が必要となるケースがあります。不動産鑑定評価書は、融資審査の材料として信用度が高く、スムーズな資金調達に寄与します。
3. 買収後のリスクマネジメント
M&A成立後の統合プロセス(PMI)でも、不動産の有効活用や売却戦略などが課題となることがあります。
不動産鑑定士の視点を取り入れ、早期に将来の再開発や賃貸計画を検討しておくと、買収後の資産運用を最適化しやすくなります。
まとめ
M&Aにおいて、不動産の価値を適正に評価し、デューデリジェンスを強化することは、成功と失敗を分ける大きな要因となり得ます。
・実勢価格に基づき、バランスシートとの乖離を補正する
・デューデリジェンスでリスク要因や含み益・含み損を明確化
・公的資格者の評価書で交渉力と金融機関からの信用度を高める
経営者や公認会計士など、M&Aに関わるすべてのステークホルダーが不動産鑑定士を活用することで、取引の安全性と将来的なリターンを確保しやすくなるでしょう。大規模なM&Aから中小企業の事業承継に至るまで、不動産鑑定評価が果たす役割は極めて大きいのです。
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