不動産の経済価値を客観的かつ専門的に評価する行為、またはその評価額のことを指します。公的な目的(相続税評価や裁判手続など)から、金融機関の融資審査、M&Aの評価、任意売買価格の算定など、さまざまな場面で利用されます。
不動産鑑定評価に関する国家資格を有する専門家。日本においては「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づき登録された者を指します。価格、賃料評価を行い、報告書の作成やコンサルティングなどを行うことができます。
国土交通省が告示している、不動産の鑑定評価を行う際の指針・ルールをまとめた基準。鑑定評価手法や価格の種類、鑑定評価の手順や報告書の作成方法などが規定されています。
不動産の再調達原価(再度同じものを建築または取得する場合にかかる費用)をもとに、減価修正を行いながら価格を求める評価手法。建物の場合は建築費や経年減価を考慮し、土地の場合は造成費用などを考慮します。
類似する不動産の実際の取引事例をもとに、評価対象不動産の価格を推定する手法。エリア、用途、規模、駅からの距離、築年数など、対象不動産に影響を与える要因を比較補正し、価格を求めます。
将来得られる収益(賃料収入など)を現在価値に割り引いて不動産価格を求める手法。投資用不動産の評価や、賃貸事業用不動産など収益物件の評価で特に多用されます。
通常の市場で、通常の取引条件下において成立すると想定される価格。市場原理に基づき、合理的かつ公平な条件で売買が行われる場合の価格を指します。
限定的な条件(例えば売買当事者が親子間や関連会社間など特定の相手に限定されているなど)で成立する価格。通常の市場取引とは異なる特殊な事情が価格に影響を与えるため、正常価格とは区別されます。
市場価値とは異なる、特定の条件に基づいて算定された価格。具体的には、投資採算性を重視している場合や、事業採算性、補償金算定など、評価の目的・条件が明確に限定された場合に用いられます。
国土交通省が毎年3月に公表する「公示地価」のことで、全国の標準地約26,000地点(※年によって増減あり)について評価された1平方メートルあたりの価格を指します。公共事業の用地取得や民間の売買などの指標として用いられ、不動産取引の透明化に寄与しています。
市町村が課税のために算定する不動産(土地・家屋)の評価額で、固定資産税や都市計画税の課税標準額となる。一般には公示地価の約70%を目安に設定されることが多いとされます。
国税庁が定める財産評価基本通達に基づき、不動産の相続税や贈与税の課税基準とするために算定される評価額。土地の場合は「路線価方式」か「倍率方式」によって評価する。
国税庁が毎年7月に公表する、道路に面する宅地の1平方メートル当たりの評価額。相続税や贈与税の算定に用いられます。公示地価や実勢価格よりも低めに設定されることが多い。
不動産鑑定評価基準に基づき、不動産鑑定士が評価した正常価格のうち、公的機関が公表する価格の総称。一般的には「公示地価」を指すことが多い。
対象不動産が市場で最大の収益もしくは最大の効用を生むための使い方・用途。鑑定評価の際には、その不動産がどのように使われると最も価値が高まるかを分析し、前提として評価する。
道路や公共施設の建設など、公共の利益のために土地を強制収用する場合の手続きや補償に関する法律。適正な補償金を算出するために不動産鑑定評価が行われるケースがある。
土地の合理的な利用を図る目的で制定された法律。大規模な土地取引の届出義務や、地価調査(都道府県による地価の調査)の根拠にもなっています。
都市計画区域の指定や、用途地域、地区計画等を定めることで、無秩序な開発を防ぎ、都市環境の整備改善を目的とする法律。不動産鑑定においては、土地の用途制限や開発の可能性などを評価する上で重要です。
建物の安全性や衛生面を確保するための基本的な法律。建物の構造・設備・用途ごとの基準、道路斜線制限や高さ制限、容積率・建ぺい率の具体的算定方法などを規定しています。
建築当初は合法だったが、その後の法改正や条例改正により、現行基準に適合しなくなった建物や土地の状態。再建築すると現行の法規制を受けるため、同規模・同用途で建て替えられない場合がある。
法的要件を満たさず、原則として建物の再建築ができない不動産。一般的には接道義務を満たさない、共有地を通らないと道路に出られないなどの理由がある。
建築基準法上、建物を建築する際には、原則として幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならないという義務。不動産の評価では接道の有無や種類が重要な要因となる。
不動産鑑定で対象不動産の地域分析を行う際に設定される地域的範囲。
不動産の所在地に関わる交通の便や周辺施設の状況。駅やバス停からの距離、商業施設への近さ、学校区、安全性などが評価に影響します。
都市計画法に基づき、土地の利用目的を制限する区域区分。住宅専用地域から商業地域、工業地域まで合計12種類(※2023年現在)があり、それぞれ建築物の用途や建ぺい率・容積率が異なる。
敷地面積に対する建築面積(建物を真上から見た面積)の割合を指します。用途地域などにより上限が決められており、違反すると違法建築となる。
敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合。都市計画法や建築基準法により、用途地域ごとに上限が定められています。
鑑定評価の過程で行う調査・分析手法。
収益還元法で算出した不動産の価格。将来のキャッシュフローや賃料水準を予測し、それを現在価値に割り引くことで求められる。投資判断の重要指標となる。
不動産の年間純収益(NOI)を不動産価格で割った利回りのこと。投資用不動産の収益性の目安として用いられます。低いほど価格が高い、つまり需要が高いことを示す。
収益還元法の一種。将来発生するキャッシュフロー(賃料収入や諸経費差引後の利益)と、最終年度の売却価格を割り引いて合計することで不動産価格を求める。投資分析で一般的に用いられる。
不動産鑑定評価基準において、複数の評価手法から得た価格に大きな乖離がある場合、なぜその差が出るのかを検証し、合理的に調整する考え方。過度に乖離している場合は再度検証を行い、評価の妥当性を追求します。
鑑定評価で用いた各手法(原価法・取引事例比較法・収益還元法など)から導かれた複数の試算価格を検討し、最終的に鑑定評価額を決定するプロセス。不動産の特性や市場の実態を考慮してウェイト付けを行う。
不動産には所有権のほか、賃借権・地上権・抵当権・先取特権など様々な権利が設定される可能性があります。これら権利関係が複雑なほど、取引や評価に影響を与えます。
土地や建物の賃貸借関係を規定する法律。借主(テナント)保護のために強い規定があり、契約終了時の正当事由や更新料などが問題となる場合が多い。
他人の土地を借りて、自己の建物を所有するための権利。借地借家法により借地人が強く保護されるため、地主が土地を自由に処分しにくくなる。
土地の所有権と分離して、借地人が有する借地権の市場価値。土地の所有権価格から、借地権割合をもとに算定する場合が多い。
借地権が設定された土地の所有権部分を指す。借地人の権利が強いため、底地として売買する場合は通常の所有権に比べて価格が下がる。
賃借権の譲渡や増改築に際し、地主や大家の承諾を得るために必要となる書面。
借地や借家などで契約時に支払われる一時金で、敷金や礼金とは性格が異なる。返還されないケースが多く、事実上は「権利を得るための対価」となる。
権利金を複数年で安分して賃貸人が収入計上することなどを指す。建物や設備に関しては減価償却費として計上される。
投資用不動産の各テナントの賃料情報や契約条件、契約期間などを一覧にまとめた表。収益還元法での分析資料として重要です。
不動産の収益力を示す指標で、総収入(賃料収入など)から運営費(管理費、修繕費、固定資産税など)を差し引いたもの。融資返済や税引前のキャッシュフローとは異なる。
NOIから借入金の返済や法人税などを控除した、最終的に投資家が自由に使用できるキャッシュフロー。投資判断やDCF法での割引計算において重要。
テナントからの賃料収入を得る目的で所有・運用されるビルやマンションの総称。オフィスビル、商業ビル、賃貸マンションなどが該当する。
アパートやマンションなど、複数戸が集まってひとつの建物を形成する住宅形態。一棟売り物件や区分所有マンションなどで不動産投資の対象となる場合が多い。
マンションなど区分所有建物について、その専有部分の所有や共用部分の管理などを定めた法律。管理組合や管理規約の制定などを義務づけています。
専有部分: 個々が所有権を持つ部分
共用部分: 廊下、エレベーター、外壁など共有管理する部分
マンション区分所有では毎月、管理組合に支払う管理費と、将来的な大規模修繕に備えて積み立てる修繕積立金が必要。これらの金額設定や実施状況が不動産価値に影響する。
管理費: 共用部の維持管理費や管理会社委託費
修繕積立金: 建物の老朽化対策、設備交換などの費用
不動産の価値向上や設備の改修を行うこと。
リノベーション: 大規模な間取り変更や設備一新など付加価値の向上を伴う改修
リフォーム: 原状回復的な修繕や設備交換が中心
不動産がどの程度、自由かつスムーズに売買・賃貸できるかを示す概念。立地条件、権利関係、物件状態、資金調達のしやすさなどが影響する。
実際に支払能力を伴って、不動産を購入または賃借しようとする需要。地域の景気動向、人口動態、金利水準などで変動します。
取引事例比較法の一種で、実際の売買が行われた事例(実例)から価格を推定する方法。公示価格や仲介事例、成約事例などを詳細に補正して求める。
賃貸事例比較法。賃貸物件の賃料事例をもとに、評価対象不動産の賃料(適正賃料)を算定する。個々の事例を構造や築年数、駅距離などで補正し、最終的に合理的な賃料を導き出す。
鑑定評価基準上の「特定価格」の一種で、特殊な目的のために評価される価格。文化財等の一般的に市場性を有しない不動産について、その利用現況等を前提とした不動産の経済価値を適正に表示する価格。
法務局が管理する土地・建物の登記情報。所有者の情報や面積、構造、地目などが記載されており、不動産の権利状態を確認するために必須。
法務局で管理される土地の位置関係や地番を示す図面。必ずしも現況と一致していない場合があるため、実際の境界確認には測量図や現地確認が必要。
土地の境界や面積を正確に測量した結果が反映された図面。境界確定や分筆などを行う場合に不可欠であり、不動産売買や評価でも重要な資料となる。
土地や建物の正面側(道路側)の幅を「間口」、奥行方向の長さを「奥行」と呼ぶ。商業地では間口が広いほど視認性・集客力が上がり、住宅地でも日当たりや駐車スペースの確保に影響する。
道路幅が4m未満の場合、道路中心線から2mを確保するために建物を後退させること。都市計画や建築基準法で定められた義務。
建築基準法や自治体条例で定められた、建物による隣接地の採光・日照を確保するための規制。高さや形状に影響し、不動産の開発可能性や価値に大きく関わる。
火災の延焼を防止する目的で指定された区域。建築物の構造や外壁材料、屋根材などに制限が課される。建築コストが上がることも多いが、防災上のメリットもある。
良好な景観を保護・形成するための法律。建物の高さや外観、広告物などに規制をかけることで景観を守る。条例で厳格化している自治体も多い。
同一地域内の土地所有者が協議して、独自の建築ルール(高さ・外観・用途など)を定める制度。法規制よりも厳しい場合がある。
「公共用地の先行取得に関する法律」の略称。自治体などの公共団体が、道路や公園などの公共事業に必要な用地を優先的に買い取ることができる制度。
不動産を含む資産の運用・管理を行い、最適な運用益を得るための戦略的業務。不動産に特化した場合は、不動産投資信託(REIT)などのファンドでの運用計画策定も含む。
不動産の運営管理業務全般を指す。テナントの募集や契約管理、設備メンテナンス、クレーム対応など、不動産の収益力を安定させるのが主な目的。
不動産の購入や投資の際に、法的リスクや物件の収益性、構造的問題などを総合的に調査・分析すること。専門家(弁護士、不動産鑑定士、建築士、会計士)がチームを組んで実施する場合が多い。
土壌汚染やアスベスト問題、地下水汚染など環境面のリスクを調査・評価すること。不動産評価においては修繕コストや除去コストを見積もる必要がある場合がある。
同じ不動産に対して、税務上・行政上・市場上など複数の評価が存在することを指す。一つの不動産に「公示地価」「固定資産税評価額」「相続税評価額」「実勢価格(実際の取引価格)」などがある。
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