不動産の売買を考えるとき、「土地の価値+建物の価値=不動産の価値」という単純な公式を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし実際には、「建付減価」といって、土地そのものの最適利用から見て建物が合っていない場合、単純加算にはならない場合があります。
つまり、土地と建物を合わせて評価したとき、その不動産が本来の市場価格を発揮できないケースがあるのです。こうした考え方は、固定資産税や相続税の評価とは異なり、不動産鑑定評価では重視されています。
今回は、不動産の専門家である不動産鑑定士として、建付減価の考え方と、これを売買の価格交渉に活かすメリットについてわかりやすくご紹介します。
なぜ「建付減価」が発生するのか
建付減価とは、その土地に最適な建物が建っていないため、本来の土地価値が十分に発揮できず、不動産全体の価値が下がってしまう現象です。
1. 土地のポテンシャルがフルに活かされていない
例えば、商業地なのに小規模な住居しか建っていない、あるいは住宅地なのに巨大な倉庫が建っていて利便性が活かしきれていない場合など。
こうしたケースでは土地の利用効率が低く、本来の市場価格ほど高く評価されません。
2. 市場性が劣るため売却が難しくなる
建付減価のある物件は、「取り壊して最適な建物を建て直すコスト」などを買い手が考慮するため、相場通りの価格では売りづらくなります。
結果的に、土地+建物の単純合計よりも安い評価額でしか買い手がつきにくい、というのが建付減価の実態です。
税務評価との違い:固定資産税・相続税はどうして別計算?
固定資産税や相続税の評価では、土地と建物をそれぞれ独立して評価するのが一般的。
- 土地の路線価(または固定資産税評価額)+ 建物の評価額
これらの税務評価は、税務目的のために定型的なルールで算出されるので、建付減価という概念は取り込まれにくいのです。
一方、実際の売買や市場価格を考える上では、「土地と建物を一体でどう利用できるか」が非常に重要。だからこそ、不動産鑑定評価では建付減価を含む多角的な視点で評価します。
不動産鑑定評価を活用すべき理由
実際に売買する場合、税務評価に基づいて価格を決定すると、現実の市場価格と乖離してトラブルになることがあります。
ここで注目したいのが不動産鑑定評価。
1. 土地と建物を一体で評価
不動産鑑定士は、土地の最適利用と建物の価値のバランスを総合的に判断します。
「建物が適切でないために土地の価値を十分に活かしていない」と判断される場合、建付減価を考慮して全体の評価額を調整します。
2. 売買の価格交渉での根拠資料
「建付減価があるので、この価格が妥当だ」といった客観的な説明ができると、買い手・売り手双方の納得を得やすくなります。
ただ感覚的に安い・高いと言い合うよりも、明確な数字とプロの視点がある方がスムーズに合意に至るでしょう。
3. トラブル回避や評価に関する法的信頼度
不動産鑑定士の鑑定評価書は、裁判所や税務当局でも公的資料としての信頼度が高いもの。
例えば遺産分割や共有物分割、事業用地の売却などで揉めそうなケースでも、建付減価を含めた公正な評価を示すことで、争いを回避できる可能性が高まります。
まとめ
不動産価格は、土地の価値に建物の価値を足して単純に決まるわけではありません。「建付減価」の概念は、土地と建物の組み合わせが最適でない場合、不動産全体の価値を下げる要因になるのです。
- 建物が土地のポテンシャルを引き出せていない場合、売買価格や評価額が想定よりも低くなる可能性
- 税務目的の評価(固定資産税・相続税)には建付減価の考慮はほとんどない
- 実際の売買で価格交渉するなら、不動産鑑定評価が有効
不動産を売買する際、「税務評価額と違う」といった疑問が出たときは、不動産鑑定士に依頼するのが得策。
専門的な視点から建付減価を含めた総合評価を行い、価格交渉や資産査定で大きな力を発揮するでしょう。
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