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2025年8月20日

首都圏マンション7月:平均1億円超・発売+34.1%・契約率68%──不動産鑑定士が読む「価格と吸収のねじれ」


 

価格は上振れ、しかし吸収はやや鈍い。
不動産経済研究所の7月統計では、首都圏の新築分譲マンション発売は2,006戸(前年同月比+34.1%)、平均価格は1億0075万円(+28.4%)。東京23区は1,045戸(+71.6%)、平均1億3532万円(+24.4%)。一方、初月契約率は68.0%と好不調の目安「70%」を下回りました。鑑定実務の視点で、価格形成・吸収・リスクプレミアムの読み替えを整理します。

 

  • 平均価格1億円超の背景(ミックス効果とコスト要因)
  • 契約率68%が示す吸収力の実相と在庫リスク
  • 東京23区の高額帯増加が評価キャッシュフローに与える影響
  • 投資・開発・金融の各当事者が今すぐ見直すべき指標
  • DCF・出口利回り・価格感応度の実務チェックリスト

 

■ 目次

 

1. データの骨子:供給・価格・吸収

 

  • 発売戸数:首都圏2,006戸(+34.1%)、3カ月ぶり増。
  • 平均価格:首都圏1億0075万円(+28.4%)、3カ月連続上昇、1億円超は3月以来。
  • 東京23区:発売1,045戸(+71.6%)、平均1億3532万円(+24.4%)。高価格帯の構成比が上昇。
  • 初月契約率:首都圏68.0%(前月より改善も70%に未達)。
  • 8月発売見込み:1,000戸程度(季節要因で低水準見通し)。

 

2. 価格上振れの正体:「高額帯ミックス」+「コスト要因」

 

平均価格の上昇は、必ずしも「同質住戸の値上げ」のみを意味しません。今月は高額帯の発売比率上昇(ミックス効果)と、建設コスト高の転嫁が重層的に作用したと読むのが妥当です。東京23区での平均1.35億円は、都心立地・規模・共用仕様・ZEH/M・省エネ等級の積み上げによる基礎単価の上振れが背景にあります。

 

3. 契約率68%の含意:吸収は平常域下限、在庫の質に差

 

契約率70%は「好不調の目安」。今月68%という数字は、価格の見かけ上の強さに対し、吸収は平常域の下限にあることを示唆します。特に都心でも駅勢圏・学区・プランの適合度で歩留まり差が拡大。高額帯の一次取得層の価格許容度には天井感があり、共働き富裕層・買い替え・法人名義・インバウンド就労者等へのターゲット精緻化がカギです。

 

4. 評価実務:DCF・出口前提の見直しポイント

 

◆ トップライン(賃料・分譲単価)

  • 平均の上昇=ミックス効果が含まれるため、同質比準の価格仮定を個別に再推定。
  • 23区内でも駅徒歩・学区・子育て支援・商業近接で賃料・価格の弾力が異なる。

 

◆ 吸収・在庫(リーシング仮定)

  • 初月契約率68%を踏まえ、販売期間・在庫月数の保守化を検討。
  • 高額帯は反響→内見→成約の歩留まりKPIを反映し、キャンセル率感応度も付す。

 

◆ コスト・金利感応度

  • 建設費は高止まり前提。資材・人工・省エネ仕様の上振れ余地を残す。
  • 金利の上振れは一次取得層の実需に直撃。価格弾力のストレスケースを明記。

 

◆ 出口(還元・売却)

  • 平均価格の上昇に対し、実需の裾野が広がっているかを検証。広がりが限定的なら出口利回りは保守化
  • 投資レジでは家具家電・多言語対応等の運営能力が空室期間を短縮し、還元利回り低下の根拠になりうる。

 

5. 当事者別アクション(開発・投資家・金融・自治体)

 

◆ デベロッパー

  • ミックス戦略:高額帯比率に依存せず、40~70㎡台の機能的プランを厚くして歩留まり改善。
  • 価格施策:階層別・方位別のメリハリ価格で一次取得層の可処分を取り込む。

 

◆ 個人投資家・ファンド

  • 都心コアは供給パイプラインと学区・保育のハード指標で目利き。賃料成長率は過度に強気にしない。
  • 短中期賃貸の活用余地と運営コスト増のバランスをCFに織込む。

 

◆ 金融機関

  • 一次取得層向けはDSR(返済負担率)を精緻管理。高額帯は販売期間・在庫の感応度分析を条件化。

 

◆ 自治体

  • 子育て・教育・交通施策が価格と吸収に直結。生活インフラの定量指標を開示して市場の目線合わせを促す。

 

6. Q&A(よくある質問)

 

◆ Q1:平均が上がった=全体的に値上げと見てよい?

A:必ずしもそうではありません。今月は高額帯の発売比率上昇(ミックス効果)の寄与が大きく、同質住戸の価格は案件によりバラツキがあります。

 

◆ Q2:契約率68%は弱いのか?

A:目安の「70%」を僅かに下回り、平常域の下限と評価します。価格帯・立地・プラン適合度で差が拡大しています。

 

◆ Q3:評価では何を一番見直すべき?

A:販売・賃貸の歩留まり出口利回りです。価格上振れに対し、需要裾野の広がりをエビデンスで確認し、CFと割引率に反映します。

 



 

まとめ:価格と吸収の「ねじれ」を前提に設計する

 

平均価格は1億円超へ、供給も回復。しかし契約率は68%。この「ねじれ」を直視し、ミックス効果を剥いだ同質比準、在庫・販売期間の保守化、出口前提の現実化を図ることが、今期の評価・投資・融資の共通解です。

 

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