これから急速に増える古いマンションに備えて、政府が関連法の一括改正案をまとめました。
ねらいは、建て替えや大規模改修(リノベ)を決めやすくすることと、費用面の負担を軽くすること。通常国会に提出される予定です。
なぜ今、見直すの?
国土交通省によると、築40年以上のマンションは2023年末時点で約137万戸。
2043年末には約464万戸(約3.4倍)に増える見通しです。住民の高齢化や空き家の増加で、話し合い(合意形成)や費用負担が難しくなることが心配されています。
改正案で「何が」変わる?(要点)
- 決め方(同意の割合)のハードルを下げる
・いま:建て替えは所有者の5分の4以上、取り壊しは全員の同意が必要。
・改正案:耐震性に問題があるなどのマンションでは、建て替え・取り壊しとも4分の3以上の同意で決められるように。 - 所在不明の所有者への配慮
連絡がつかず「反対」と扱われていた所在不明の所有者は、同意の人数を数える母数から外せるように。 - 税制での後押し
取り壊して敷地を売却する場合や、建物全体の大規模リノベ(一棟リノベ)を行う場合に、法人税・事業税などの一部が軽減・免除される仕組みを用意。 - 管理会社の透明性アップ
マンションの管理会社が、修繕・清掃などの仕事を自社やグループ会社に回す(発注する)ときは、事前に住民へ説明することを義務化。
暮らし側のメリットは?
- 合意形成が前に進みやすい:これまで話がまとまりにくかった建て替え・取り壊し・大規模改修が、決めやすくなります。
- 費用負担の軽減に期待:税制支援により、事業の採算が取りやすくなり、結果として各戸の負担圧縮が期待できます(具体額は個別計画で異なります)。
- 管理の見える化:自社発注の事前説明が義務化され、費用や品質への納得感が高まりやすくなります。
注意しておきたい点
- すべてのマンションが自動的に対象になるわけではありません。耐震性に問題があるなどの要件を満たすケースで、同意割合の緩和が適用されます。
- 税制の軽減・免除の使い方は、事業スキーム(売却か、一棟リノベか等)で異なります。管理組合は専門家(設計者・デベロッパー・税理士・不動産鑑定士など)と早めに相談を。
- 改正案は提出・成立後に施行されます。具体的な運用時期や細かな条件は、今後の決定を待つ必要があります。
いま住民としてできること
- 現状把握:耐震診断や修繕履歴、長期修繕計画、積立金の水準を確認。
- 課題の棚卸し:空き家の有無、所在不明の区分所有者、滞納など、合意形成のボトルネックを洗い出す。
- 将来像の共有:修繕で延命するのか、一棟リノベか、建て替えか――複数案のメリデメと費用感を比較し、アンケートや説明会で温度感を確認。
- 専門家の力を借りる:技術(耐震・設計)、事業性(資金計画・税制)、資産価値(不動産評価)の3点をセットで検討。
まとめ
法改正案は、老朽化マンションの「決められない/進まない」を解消するためのルール見直し+税制支援です。
大切なのは、自分たちのマンションの実情と将来像を住民同士で共有し、必要に応じて専門家と一緒に最適解を選ぶこと。法改正はその背中を押すツールになります。