読売新聞の社説は、地価の上昇が全国に広がる一方、東京都心では1億円超のマンションが常態化し、過熱に注意が必要だと指摘しています。
出典:読売新聞オンライン「基準地価上昇 都内の「億ション」常態化した」(2025/09/29)
1. 何が起きているの?(数字をやさしく整理)
国土交通省の基準地価(7月1日時点)は、全国平均で+1.5%でした。住宅地は+1.0%、商業地は+2.8%。上昇は4年連続で、伸びは約30年ぶりの高めです。
ところが都心は勢いが強すぎます。東京23区の住宅地は+8.3%。新築マンションの平均価格は今年上半期で1億3064万円、中古でも1億円台が続きました。まさに「高嶺の花」という水準です。
2. なぜ上がっているの?(主な理由)
理由は複合的です。
- 地価の上昇:都心の土地に買いが集まる。
- 建設コストの高止まり:資材と人件費が上がった。
- ホテルなど商業の回復:訪日客の増加で商業地が強い。
- 投資マネーの流入:富裕層・海外投資家の購入、転売(フリップ)も一部で発生。
一方で、地方でも上昇が定着しつつあります。たとえば北海道千歳市では半導体工場の効果で商業地が大きく伸びました。地方の雇用や投資が地価を押し上げる例です。
3. 何が心配?(過熱への警戒ポイント)
都心のマンションが高すぎると、次の心配が出ます。
- 暮らしへの負担:住宅ローンの返済が重くなり、家計を圧迫。
- 住み替えの難しさ:都心は富裕層しか住めない、という不満が増える。
- 市場の歪み:居住しない保有や短期転売が増えると、実需(住む人)に家が回りにくい。
国交省は登記情報などを使い、投機的取引の実態調査を進めています。行き過ぎた動きには、抑制策の検討や監視強化が必要です。
4. これから家を買う人へ(判断のコツ)
焦って買う必要はありません。次の順番で考えましょう。
- 「買える時」より「持てる時」:金利が0.5〜1.0%上がる想定で、返済が続けられるかを試算。
- 総コストで比較:購入価格だけでなく、固定資産税・管理費・修繕積立金(または戸建の将来修繕)・保険・更新・リフォーム費まで入れて10〜20年の合計で判断。
- 新築だけでなく中古も見る:築浅の良質中古や、駅徒歩が1〜2ランク外でも管理が良い物件は、費用対効果が高いことがあります。
- ハザードと立地の普遍価値:駅距離、生活利便、学校、病院、災害リスク。これは価格より大切です。
5. すでに所有している人へ(売るか、持つか)
「高いから今すぐ売る」のではなく、家計の余力と生活の満足度で考えてください。売却を検討するなら、周辺の成約事例を確認し、過度なリフォームは避け、現実的な価格を設定しましょう。持ち続けるなら、長期修繕計画や設備更新の時期を把握し、計画的に資金を準備してください。
6. 投資用で考える人へ(レバレッジのかけ過ぎに注意)
賃料の伸びは無限ではありません。金利・空室・修繕費が上振れしても耐えられるかを確認しましょう。出口利回り(売却時の想定利回り)はやや保守的に。人気立地でも、インセンティブ(賃貸条件のサービス)や修繕費が増えると、実質の利益は薄くなります。
7. まとめ:数字に振り回されず、暮らしと家計で決める
地価が上がるのは経済回復の表れでもあります。ただ、都心の価格は一部で加熱ぎみです。私たちができることは、「立地の価値」「総コスト」「将来の余力」という基本を守ること。家は「上がるから買う」「下がるから待つ」ではなく、暮らしに合うか、無理なく持てるかで決めましょう。数字より、あなたの生活が基準です。
出典:
読売新聞オンライン「基準地価上昇 都内の「億ション」常態化した」(2025/09/29)