ロイターのインタビューで、本田悦朗・京大客員教授(元内閣官房参与)は、日本経済は回復途上で不安定な局面にあるとして、日銀は追加利上げに慎重であるべきと述べました。一方で、利上げのタイミング自体は「近づいている」ともしています。為替(円安・ドル高)については、当面1ドル=155円超に急進する可能性は低いとの見方を示しました。
出展:ロイター「インタビュー:日銀の追加利上げ慎重に、高市氏は『緩和派』=本田元内閣官房参与」(2025/10/10)
1. いまのポイントをかんたんに
・日銀はすぐの追加利上げには慎重だが、景気の“需給ギャップ”改善で利上げの時期は近づいている。
・円安は水準とスピードが重要。極端に進む公算は小さいが、状況次第で為替介入や利上げが再び選択肢になる。
・市場では「12月または来年1月」の利上げ観測も残る。
2. 住宅ローンはどう考える?(変動・固定の考え方)
追加利上げが慎重姿勢でも、金利が下がる局面に戻ったわけではありません。今後も小刻みに上がる可能性は念頭に置きましょう。
- 変動型:当面の支払いは抑えられますが、将来の上振れリスクは残ります。+0.5%・+1.0%のストレスで毎月返済が家計の25~30%内に収まるか試算を。
- 固定型・一部固定:月額は上がりますが、家計の見通しが立つ安心があります。10年以上住むなら、全期間固定やミックスも検討価値が高いです。
- 借換え:諸費用(事務・保証・登記)を回収できるかが鍵。3~5年でペイできる条件かを数字で判断しましょう。
3. 不動産価格と家賃は?(金利・円安の効き方)
金利は価格に、円安はコストに効きます。
- 売買価格:金利が上がると、買い手の返済能力が下がり、価格は上がりにくく/下がりやすくなります。ただし駅近・管理良好など「普遍価値」が強い物件は粘りやすいです。
- 家賃:賃貸は雇用と所得がカギ。金利上昇局面でも、雇用が堅調なら家賃は下がりづらい一方、割高な新築は空室調整(賃料や入居条件の見直し)が入りやすくなります。
- 建設・リフォーム費:円安は輸入資材や設備の価格を押し上げます。新築価格や大規模修繕費が高止まりしやすい点は要注意です。
4. 投資用不動産:利回り(キャップレート)と為替の見方
利上げ局面では、出口利回り(売却時の想定利回り)はやや保守的に置くのが安全です。円安はホテル・物流に追い風でも、運営コスト(人件費・原材料)を押し上げるので、NOI(純収益)計画は保守的な前提にしましょう。負債は固定・変動のミックスで耐性を上げ、LTVは控えめに、DSCRは1.2~1.3倍以上を目安に。
5. これから数か月の「2つのシナリオ」
シナリオA:年内または年明けに小幅の利上げ
・変動金利はじわり上昇。
・新築の売れ行きは選別が進み、良質中古へのシフトが強まる。
・投資では、テナントの解約通知・フリーレント・内装負担などをCFに確実に織り込み。
シナリオB:利上げいったん見送り(慎重姿勢継続)
・住宅ローン金利の上振れは一服。ただし下がりにくい。
・価格の下支え要因は続くが、新規供給や建設コスト高で横ばい~小幅調整の物件も。
・投資では、過度なレバレッジを避けつつESG・省エネ改修など「価値維持」に資金を回す。
6. いまやっておく点検(家計・物件・契約)
- 家計:金利ストレス(+0.5%/+1.0%)で返済比率を再試算。ボーナス返済が重すぎないか。
- 物件:普遍価値(駅距離・生活利便・学区・災害リスク・管理力)を再確認。大規模修繕の時期と費用感も。
- 契約:借入条件(固定/変動の割合、金利見直しのタイミング、繰上返済の手数料、団信の範囲)。
7. まとめ:結論を急がず、「持てる計画」で備えましょう
今は利上げのタイミングを探る局面です。結論を急がず、家計が無理なく持てる金利水準でローンを組み、物件は立地と管理の確かさで選びましょう。投資は保守的なCF(現金収支)をベースに、出口利回りを高めに置く。これだけで、将来のブレに強い不動産選び・運用ができます。
出展:
ロイター「インタビュー:日銀の追加利上げ慎重に、高市氏は『緩和派』=本田元内閣官房参与」(2025/10/10)

