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2025年10月28日

住宅ローン「50年」が広がる理由と気をつけたい点――月の返済は軽く、総額は重く。不動産鑑定士のやさしい見解

 

住宅価格と金利の上昇で、ローンの返済期間を35年→40年→50年へ伸ばす人が増えています。北海道では「フラット50」の申込が前年の4.4倍、地銀も最長50年のローンを拡大しています。月々の負担は下がりますが、支払い総額は増えるのがポイントです。
出展:Yahoo!ニュース(HBCニュース北海道)「若者に広がる住宅ローン50年 建築コスト増で総返済額より毎月の支払いを重視…」(2025/10/9)

 

1. なぜ「50年」が選ばれているの?

新築の建設費や土地代が上がり、金利もじわじわ上がっています。結果として、同じ家でも毎月の返済が重くなりました。返済期間を伸ばすと、月々の返済は軽くなります。そのため「まずは毎月の負担を抑えたい」という人が50年を選ぶ、という流れです。

記事によると、5000万円を借りるケースでは、フラット50はフラット35より月々約3万円安い一方、総支払いは1,000万円以上多くなるとの試算が示されています(ファイナンシャルプランナーのコメント)。

 

2. 50年ローンのメリット・デメリット

メリット

  • 月々の返済が下がり、家計のやりくりに余裕ができる
  • 物件選びの幅が広がる(立地・間取りで妥協しにくい)
  • 若いうちに家を持てる(長期で返す前提なら)

デメリット

  • 支払い総額は大きく増える(利息期間が長いほど増える)
  • 完済年齢が高くなり、定年後も返済が続く可能性がある
  • 途中の金利上昇・転職・育児・介護など、人生イベントのリスクにさらされる期間が長い

不動産鑑定士としては、「月々を下げる」=「総額が減る」ではないことをまず意識してほしいです。

 

3. 50年を選ぶ前に、ここを必ず確認(5つのチェック)

  1. 完済年齢:銀行は「完済は◯歳まで(例:82歳)」と上限を設けています。定年後の返済計画(年金・退職金・貯蓄・働き方)を具体的に描けるか確認しましょう。
  2. 金利タイプ:全期間固定/固定期間選択/変動のどれにするか。
    将来の金利上昇に備え、一部固定+一部変動の「ミックス」も検討価値があります。
  3. 繰上げ返済のルール:手数料、1回の最低額、固定期間中の扱いなど。
    家計に余裕が出た時に小刻み繰上げできると総利息を圧縮しやすくなります。
  4. 団信と保障:がん・就業不能・介護特約などの上乗せ。
    期間が長いほど、健康・収入のリスク管理が重要になります。
  5. 総保有コスト:ローンだけでなく、固定資産税・火災地震保険・管理費・修繕費・リフォーム費まで10~20年分の見積もりを。

 

4. 鑑定士の見解——無理なく「持てる計画」を作るコツ

(A)返済比率の上限を決める
家計の手取りに対して、住宅関連(ローン+固定資産税+管理修繕等)の合計が25~30%以内に収まる金額を基準にしましょう。さらに、金利が+0.5%・+1.0%上がったストレスでも耐えられるかを試算します。

(B)「月3万円安い」の使い道を決める
50年で下がった分を全額生活費に回さないのがコツ。教育費・緊急資金・NISA等の積立、または繰上げ返済用の口座を作り、自動的に貯まる仕組みを。

(C)出口(売る・貸す)の選択肢を用意
転勤・家族構成の変化などに備え、賃料相場・売買相場をメモしておくと、判断が速くなります。人気の立地・学区・駅距離を押さえると、出口の選択肢が増えます。

 

5. 35年は「終わり」?——代替案と使い分け

35年が終焉というより、選択肢が増えたと考えましょう。以下の使い分けが現実的です。

  • 35年固定やミックス:安定性重視。返済に余力があれば、早期繰上げで総利息を抑制。
  • 40年:月額を下げつつ、完済年齢のバランスが取りやすい。主流の落とし所になりつつあります。
  • 50年:月額最優先。繰上げ前提資産運用との併用など、ルールを決めて運用する方向け。

記事でも「投資に回すために期間を長くする」人が増えていると紹介されています。投資は悪くありませんが、ローン金利を上回る確度流動性リスク許容度を冷静に見て、無理のない配分にしましょう。

 

6. 物件選びの順番(価格より価値)

  1. 立地の普遍価値:駅距離、生活利便、学区、ハザード(洪水・液状化・土砂)。
  2. 建物の質:断熱・耐震・劣化状況、修繕履歴。新築でも長期修繕計画と積立水準を。
  3. 総コスト:購入後10~20年の費用合計(ローン+維持費+リフォーム)。

良い立地・良い管理の家は、住んでも売っても強い。期間を長くする前に「物件の中身」を吟味しましょう。

 

7. まとめ:50年は“道具”。家計と物件の質で「持てる」かを決めよう

50年ローンは、家計を助ける有効な道具です。一方で、総支払いは増え、リスク期間も長くなります。「月は軽く、総額は重く」という特性を理解し、ストレス試算・繰上げ計画・出口確保の3点を準備すれば、安心して住まいを選べます。数字に追われず、家族の暮らしやすさと家計の持続性を最優先に、賢い一歩を踏み出しましょう。

 

出展:
Yahoo!ニュース(HBCニュース北海道)「若者に広がる住宅ローン50年 建築コスト増で総返済額より毎月の支払いを重視…」(2025/10/9)

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