京都府内でツキノワグマの目撃が増え、これまで生息域とされていなかった京都市内の住宅街や府南部でも通報が相次いでいます。京都市右京区ではバス停に注意喚起が掲示され、木津川市でも今年初めての目撃以降、通報が増加。対策マニュアルを急ぐ自治体も出ています。
出展:毎日新聞「クマ、京都の『空白地域』でも目撃情報 ノウハウなく、対策急務」(2025/10/30)
1. いま何が起きているの?(かんたん整理)
・京都府のクマ目撃は、今年4~10月で899件。昨年度(1909件)を下回るものの、前々年度より多いペース。
・住宅地近くでも目撃が増え、右京区・嵐山周辺、府南部の木津川市などでも通報。
・自治体は緊急銃猟の新ルール(2025年9月施行)や避難体制、職員マニュアルの整備を急いでいます。
2. 不動産鑑定士の見解:不動産への影響は「安全・管理・情報」次第で変わる
野生動物の出没は、暮らしの安全にかかわる重要な情報です。不動産の観点では、影響は「立地特性(緑地・里山・河川沿いの近接)」「管理水準」「情報開示と対策」で変わります。一時的な風評で価格が過度に落ちるよりも、具体的な対策と説明がある物件が選ばれやすくなります。
3. 住まい選び・売買・賃貸で「いまできること」
(A)買う/借りる前の現地チェック
- 立地:緑地・竹林・果樹・放置空地・河川敷の有無、通学路・公園の導線。
 - 痕跡・廃棄物:生ごみ置き場、果樹・コンポスト、外灯の有無。誘引要因(生ごみ・収穫残り)を観察。
 - 自治体の情報:目撃マップ/注意喚起/避難・連絡体制。「緊急時の広報」が整っているか。
 
(B)売主・オーナーの備え(安全と説明)
- 防護・管理:ごみの厳格管理(密閉/収集日朝出し)、センサーライト・カメラ、住宅周りの刈り払い、獣害対策フェンス(敷地条件に応じて)。
 - 共用部の運用(集合住宅):ごみ置き場の施錠・洗浄、掲示板での注意喚起、子どもの動線配慮(送り迎え・時間帯の周知)。
 - 情報の可視化:自治体通報窓口/地域安全メールの登録方法、管理組合の対応記録(日付・写真)を保管し、内見者に説明。
 
(C)賃貸の契約実務
- 共用規約:ごみ出しルール、深夜の外出やベランダ放置食材の禁止など、管理規約・使用細則を明文化。
 - 入居者ガイド:夜間の歩行ルート、子どもの下校時の同伴、屋外保管品(ペットフード等)の管理を冊子・多言語で整備。
 
4. 価格や賃料への影響は?
短期:ニュース直後は内見キャンセル・成約鈍化が起こり得ますが、対策の有無で回復度合いが変わります。
中期:里山・緑地近接のアメニティ価値と、野生動物リスクのバランスが問われます。街区の管理力(行政・管理組合・自治会の連携)が見えるエリアは、価格の底力が保たれやすいです。
鑑定の現場では、個別事情(誘引要因・発生頻度・対策の程度)を確認し、必要に応じて賃料・利回りにリスク調整を行います。単に「出没地域=一律に下げる」のではなく、物件ごとの安全管理で評価は分かれます。
5. 観光・宿泊・学校・高齢者施設でのポイント
- 宿泊・観光:夜間導線の照度確保、生ごみ管理・屋外飲食スペースの運用、スタッフ教育(通報手順)。
 - 学校・保育:集団下校・見守り、山沿いの校庭・遊歩道の「立入禁止」設定と掲示。
 - 高齢者施設:歩行訓練の時間帯・場所見直し、散歩コースの警戒エリア回避。
 
6. 保険と費用の考え方
住宅・施設の火災保険の特約(破損・汚損等)や、管理者賠償責任保険の適用範囲を確認しましょう。
対策費(照明・カメラ・フェンス・掲示・チラシ)は、軽微でも効果が出やすいものから順に——「ごみの密閉」「刈り払い」「照度確保」はコスパが高い対策です。
7. まとめ:数字(記録)と現地対応で、「不安」を「安心」に変える
野生動物の出没はゼロにできませんが、生活者が守られる運用は作れます。自治体・管理組合・地域が通報記録・掲示・見守りルートを整え、可視化された対策を示せば、不動産の魅力と価値は守れます。購入・賃貸の判断でも、現地確認+対策の有無を基準にすれば、過度な不安に振り回されずに済みます。
出展:
毎日新聞「クマ、京都の『空白地域』でも目撃情報 ノウハウなく、対策急務」(2025/10/30)

