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2025年12月12日

「50年ローン」で家を買う前に――月の負担は軽く、総額は重く。物件選びと借り方の“現実解”

 

20代のマイホーム購入で「最長50年ローン」を選ぶ人が増えています。月々の負担を抑えられる一方で、50年後の資産価値が読みにくいことや、働き方の自由度が下がる懸念も指摘されています。番組では賛否が紹介されました。ここでは不動産鑑定士の立場から、数字と現場の感覚で「使い方」をやさしく整理します。
出展:テレビ朝日ニュース「超長期の住宅ローン、若者に拡大 35年vs50年のメリット・デメリット

 

1. まず結論:50年は“道具”。正しく使えば助け、誤ると重荷

月々を下げて現金余力を作るという意味で、50年は有効な選択肢です。ただし、総返済額は大きく増え、完済年齢も上がるのが基本。さらに、物件の価値は「年数」よりも立地×建物の性能・管理×周辺需要で決まります。つまり、ローンの長さだけでなく、何を買うか・どう返すかの設計が重要です。

 

2. メリット(上手に使えば強い)

  • 月の返済を抑えられる:家計のキャッシュフローが安定。若い時期の「可処分所得」を確保。
  • 繰上げ返済はいつでもできる:50→短縮は可能、35→延長は困難。期限の利益を持つのは合理的。
  • 選択肢が広がる:35年だと届かない立地・規模に手が届く場面も(ただし“身の丈”は要確認)。

 

3. デメリット(見落としがちな現実)

  • 総返済額が増える:同金利なら期間が長いほど利息総額は大きくなる。
  • 完済年齢が高くなる:定年後も返済が続く設計は、収入変動に弱い。老後キャッシュフローの別枠管理が必要。
  • 自由度の低下:大きな借入は転職・移住・起業の選択に影響。売却・賃貸の出口が取りやすい物件かが鍵。
  • 物件の寿命・修繕リスク:マンションは30~40年で水回り・配管・大規模修繕の波。戸建ても外壁・屋根の更新が必要。

 

4. 金利・総額・自由度――3つの「ストレス試算」を

  • 金利ストレス:金利+0.5%/+1.0%時の毎月返済を試算。返済+税・管理修繕等の合計が手取りの25~30%に収まるか。
  • 総額ストレス:10~20年の総保有コスト=ローン(利息含む)+固定資産税+火災地震保険+管理費・修繕積立金(または将来修繕)+更新・リフォーム費。
  • ライフイベントストレス:出産・介護・転職・単身赴任を想定し、一時的に賃貸に回す/売却する選択肢が取れる立地・間取りか。

 

5. 物件選びの「勝ち筋」――50年で持つなら、ここだけは外さない

長く持つほど、立地の普遍価値建物の実力が効いてきます。

  • 立地:駅徒歩・乗換利便・生活インフラ(スーパー・病院・学校)・雇用集積。人口減下でも需要が残る場所。
  • 安全:ハザード(洪水・土砂・液状化)と避難動線。災害リスクは価格の耐性に直結。
  • 建物性能:断熱・窓仕様・耐震・インスペクション。マンションは修繕積立金の水準・長期修繕計画の健全性。
  • 出口力:賃貸需要・売買事例・在庫日数(流動性)。貸しても売ってもよい間取り・面積か。

 

6. 借り方の工夫(失敗を減らす小技)

  • ミックス金利:変動+固定の組み合わせで金利リスクを分散。
  • 自動繰上げ用の別口座:毎月の“月2万円”などを先取りで積み上げ、年1回の元金カットに充当。
  • 借換えの損益分岐:諸費用(事務・保証・登記)を3~5年で回収できる利率差かを数字で判断。
  • 団信と保障:がん・就業不能・介護の上乗せを検討。長期ほど「もしも」に備える価値が高い。

 

7. 投資視点の注意点(20代でも“プロの目線”で)

  • 利回りの勘違いに注意:節約できた家賃=利回りではありません。資本コスト(金利)・維持費・減価を差し引いた実質で考える。
  • レバレッジは両刃の剣:価格が下がる局面での売却制約・追い金を想定。LTV(借入比率)は控えめに。
  • 二極化リスク:都心・駅近・管理良好は底堅く、周辺は選別が強まる。出口データ(成約事例・空室率)を必ず確認。

 

8. こんな人は50年ローンに向く/向かない

向く人
・立地重視で長期保有を前提、繰上げ返済を仕組み化できる人。
・職種・収入が安定、保険・備えを重視する人。
・「住んでも貸しても良い」物件を選べる人。

向かない人
・転職・移住・起業など生活の可動性を最優先する人。
・地方・周辺部で需要が弱い立地を選びがちな人(出口が弱い)。
・家計を可視化せず、積立や繰上げの仕組みを作れない人。

 

9. まとめ:50年は“保険付き”の選択肢。物件の質と出口、数字のルールがあれば怖くない

50年ローンは、キャッシュフローを守る保険として使えます。大切なのは、良い立地・良い管理の物件を選び、金利・総額・ライフイベントのストレス試算を行い、繰上げ返済と出口戦略のルールを先に決めること。これができれば、長期ローンは味方になります。数字と現地の両目で、賢い一歩を踏み出しましょう。

 

出展:
テレビ朝日ニュース「超長期の住宅ローン、若者に拡大 35年vs50年のメリット・デメリット

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