アデックスリサーチアンドコンサルティング株式会社|鑑定評価で不動産の問題を“解決”へと導く

2025年9月7日

「新築マンションの転売規制」や「投機的取引は好ましくない」というニュース、私たちの暮らしにどう関係する?――不動産鑑定士の見解

国土交通相が「実需に基づかない投機的取引は好ましくない」と発言し、東京都千代田区は新築マンションの短期転売(フリップ)を抑える要請を業界団体に出しました。背景には、首都圏の新築マンション価格が大きく上がり、東京23区の平均が1億3064万円(2025年上半期、前年同期比約2割上昇)という異例の水準に達していること、加えて賃貸家賃も上昇傾向にあることがあります(出典:日本経済新聞「マンション投機的取引、国交相『好ましくない』 千代田区は転売規制」2025年9月2日 / 不動産経済研究所データ)。

1. そもそも「投機的取引」って何?

住むためではなく短期間での値上がり益だけを狙って購入・転売する行為です。抽選で当選した新築住戸をすぐ転売する、名義変更などの方法で実質的に権利を売買する――こうした動きが増えると、入居したい実需層に住戸が回りにくくなり、価格の過度な上昇や在庫の偏在を招きやすくなります。行政のメッセージは、まずこの歪みを抑えたい、というものです。

2. これから何が変わるの?(予想される実務対応)

千代田区の要請は法的規制ではなく業界への働きかけですが、各社が次のような運用を強化する可能性があります。

  • 転売制限条項の明確化:引渡し後◯年以内の転売禁止、違約金や優先購入権の設定など。
  • 抽選・販売ルールの厳格化:一人複数当選の抑制、居住実態の確認、職住近接ニーズの優先販売など。
  • 名義変更・譲渡の原則禁止:契約から引渡しまでの“差益狙いの名義替え”を封じる運用。

国交省も、法務省の登記情報を使って海外在住者などの取得動向の分析を進めており、データに基づいた追加の政策判断があり得ます(出典:同記事)。

3. 一般の買い手・住み手はどう備える?

結論から言うと、実需で買う方には大きなデメリットは想定されず、むしろ「買いやすさの回復」につながる可能性があります。とはいえ、契約実務は少し変わるかもしれません。

  • 契約書の転売制限条項を確認:引渡し後の転売禁止期間、違約金、名義変更不可を明確に理解。
  • 資金計画は余裕を持って:短期売却での出口は原則想定せず、金利上振れ・入居後の出費(カーテン・家具・固定資産税など)も含め試算。
  • 中古も視野に比較:新築の上昇でリノベ済み中古のコストパフォーマンスが高まる局面。管理状態・修繕履歴の良い物件は選択肢になり得ます。

4. 投資・賃貸オーナーは何に注意?

短期転売の抑制は極端な価格形成の沈静化に寄与します。賃貸では家賃上昇の追い風もありますが、取得価格が上がり利回りは圧縮されがち。賃貸経営は次の点を重視してください。

  • 実需に支持される立地・間取り:駅距離・生活利便・在宅ワーク適性は空室率に直結。
  • シナリオ試算:賃料横ばい/金利上昇/修繕費増のケースでもキャッシュフローが持続するか。
  • 短期譲渡の税務:5年以内売却は短期譲渡課税で税率が重い点もお忘れなく(一般論)。

5. 「価格は下がるの?」よくある疑問に答えます

Q:投機を抑えたら価格は下がりますか?
A:投機の熱が冷めれば“過度な”上昇は鈍り得ます。ただし価格は供給(建設コスト・人手不足・用地難)と実需(所得・金利・家賃)のバランスで決まります。短期的に大きく下がると断言はできません。

Q:今は“買い時”ですか?
A:大切なのは「買える時より持てる時」。金利・収入の将来見通し、家族のライフプラン、住み替え余地、10年後の修繕・固定資産税まで含めた総保有コストで判断しましょう。新築に限らず、管理の良い中古・戸建も比較するのが賢明です。

6. 鑑定士からのアドバイス(チェックリスト)

  • 実需の強い立地:駅徒歩・生活利便・学区・災害リスク。周辺の成約事例と家賃相場も確認。
  • 管理力が価格を支える:新築でも長期修繕計画・積立金水準・管理組合の運営方針をチェック。
  • 契約の転売制限・抽選条件:将来の柔軟性に関わる条項は必ず事前確認。
  • 金利の感応度:0.5%刻みで返済額を試算し、家計が耐えられる範囲を把握。

出典:日本経済新聞「マンション投機的取引、国交相『好ましくない』 千代田区は転売規制」(2025年9月2日)。記事中の価格データは不動産経済研究所の公表値に基づくとされています。

投機の熱が冷めていく局面では、“住んで価値があるか”という原点に立ち返るほど、ミスマッチは減ります。数字に追われず、自分の暮らしに合う住まいを、冷静に・丁寧に選びましょう。

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