不動産投資商品「みんなで大家さん」で、成田シリーズに限らず合計27商品まで配当遅れが広がっていると報じられました。成田の一部は3か月連続の遅配。他商品でも9月分が支払われず、弁護士への相談は少なくとも1000人にのぼるとのことです。
出典:読売新聞オンライン「不動産投資『みんなで大家さん』、計27商品で配当遅れ…弁護士に相談1000人超」(2025/10/02)
1. 何が起きているの?(ニュースの要点をやさしく)
出資者に定期的に配当(分配)を行う仕組みの不動産投資商品で、配当の遅れ(遅配)が連鎖しています。事業者はメールで「成田以外の商品でも遅延せざるを得なくなった」と説明。成田シリーズは年7%の想定利回りで資金を集め、空港周辺の大規模開発(土木工事)を予定していましたが、工期の延期が3回あったとされています。出資金の返金を求める提訴が相次ぎ、被害対策弁護団も組成されました。
この商品は不動産特定共同事業法に基づくスキームで、賃料収入や将来の売却益から配当原資を賄う設計です。開発の遅れやテナント付け(リーシング)の遅延、資金繰りが悪化すると、配当が止まりやすいのが特徴です。
2. 不動産鑑定士の見解:なぜ遅配が連鎖しやすいの?
① キャッシュフローが“前広”に立ち上がらない
開発型・再開発型の商品は、竣工・テナント入居・賃料発生まで時間がかかります。想定より工期が延びたり、コストが上がったり、賃料が立ち上がらないと、配当原資が不足しやすくなります。
② 想定利回り7%の“裏付け”が崩れると脆い
利回りは、予定どおり賃料が入る/予定どおり売却できることが前提。ひとつでも遅れれば、キャッシュフローは簡単に崩れます。さらに複数商品を同じグループが運用している場合、資金繰りの不具合が横断的に波及することがあります。
③ 説明と合意の不足は「二次被害」を招く
計画変更や遅延が起きた時、迅速で具体的な説明・代替スケジュール・資金繰り計画が示されないと、出資者の不安が拡大し、解約・提訴が増えて資金難が深まる悪循環が生まれます。
3. すでに出資している人へ:いますぐできる5つの行動
- 書類を整理:契約書・目論見書・重要事項説明・配当通知・メール等の原本/データを保全。計画変更時の手続きや解約条項、分配遅延時の取り扱いを読み直しましょう。
- 資金の流れを確認:事業者に資金使途・分配原資・口座の流れ(フロー図)と、最新の工事・リーシング・売却スケジュール、資金繰り計画を書面で求めます。
- 関連当事者取引の有無:グループ内での賃貸・売買・費用負担がないか、外部監査や第三者評価の資料を請求。透明性が重要です。
- 相談窓口に連絡:弁護士会の相談/消費生活センターなど公的窓口に早めに相談。記録(日時・担当・回答)を残しましょう。
- 追加の入金は慎重に:配当遅延中は、根拠資料を確認するまで追加入金・再投資を控えるのが基本です。
4. これから不動産小口商品を検討する人へ:広告の利回りより“中身”を見る
次のポイントを“最低限のフィルター”にしてください。
- テナントの質と内定:プリリース(事前賃貸)の有無/賃貸借期間/解約条項。開発段階なら賃料想定の根拠。
- 分配準備金と資金管理:分別管理・信託・エスクロー等、原資がどう守られているか。
- 情報開示の頻度と内容:四半期報告/運用レポート/監査の有無。遅れた時の説明ルール。
- スポンサーの実績:過去案件の稼働・売却・遅延の有無。行政処分歴・係争の有無。
- 解約・譲渡条件:早期解約が不可/困難な商品は珍しくありません。出口の柔軟性を確認。
鑑定士から一言:表面利回りはきれいでも、キャッシュは嘘をつきません。収入(賃料・売却)と支出(建設・金利・販管・税)の見通しが、現実的かどうかを確かめてください。
5. 市場全体への影響:透明性の高い案件が“選ばれる”時代へ
遅配・訴訟が増えると、同種の投資商品の信用が揺らぎ、資金は情報開示が充実した案件に集まりやすくなります。スポンサーは、第三者評価・監査・開示の徹底で投資家の信頼を回復する必要があります。投資家側も、資料請求→疑問点の書面回答→第三者の意見という手順を習慣化すると、リスクはぐっと下がります。
6. まとめ:焦って判断しない。記録を残し、事実で動く
配当の遅れは不安ですが、焦って換金性の低い別商品に乗り換えるのは禁物です。まずは契約と数字を確認し、書面で質問し、専門家に相談しましょう。良い不動産投資は、きれいな数字より、透明なプロセスから生まれます。自分の資産は、自分の目で守る。その姿勢がいちばんの防御になります。
出展:
読売新聞オンライン「不動産投資『みんなで大家さん』、計27商品で配当遅れ…弁護士に相談1000人超」(2025/10/02)