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2025年11月15日

「外国人の土地取得」ルール見直しの議論が本格化――取引はどう変わる?

 

自民党は、外国人に関する施策を横断的に検討する「外国人政策本部」の初会合を開き、外国人による土地取得の規制強化を論点に挙げました。土地法制のほか、在留資格の運用や国民健康保険の見直しなども議題に。政府の基本方針は2026年1月をめどにまとめ、同年の通常国会で関連法案を目指すとしています。
出展:日本経済新聞「自民党、外国人の土地取得の規制強化へ議論 高市総裁の直轄組織」(2025/11/11)

 

1. いま何が議論されている?(かんたん整理)

検討は3つの柱で進みます。

  • ① 出入国・在留管理の適正化:不法滞在や在留資格の運用を厳格化
  • ② 外国人制度の適正化:国保や運転免許切替などの制度運用を見直し
  • ③ 安全保障と土地法制土地取得ルールマンション取引の対策土地台帳での国籍把握の透明性向上 など

すでに重要施設周辺の利用調査を可能にする法律(重要土地法)はありますが、今回は取得段階のルールに踏み込み、手続きの明確化・透明化を進める可能性が高いと考えられます。

 

2. 不動産鑑定士の見解:市場への影響は「範囲・明確さ・スピード」で決まる

規制と聞くと「取引が止まるのでは?」という不安が出やすいですが、実際の影響は次の3点で大きく変わります。

  • 範囲:対象を「重要インフラ周辺」「防衛拠点周辺」などに限定するのか、それとも全国一律に広げるのか。限定的であれば、影響は局所的になります。
  • 明確さ要件・書類・審査期間が明確でオンライン化が進めば、予見可能性が上がり、実務への負荷は抑えられます。不明瞭だと、引渡しまでの期間が伸び、流動性ディスカウント(売りにくさの割引)が生じやすくなります。
  • スピード:審査・届出の処理が迅速であれば、資金計画やローン手当が崩れにくく、価格への悪影響は小さく済みます。

 

3. 売買の現場はどう変わりうる?(売主・買主・仲介の実務)

売主(個人・法人)

  • 該当エリア(重要施設周辺等)では、登記・境界・用途・資金ルートなどの書類一式を早めに準備。審査・確認に時間がかかる前提で、引渡し期限を現実的に設定。
  • 区分マンションでも、管理規約・使用細則・反社チェックなどの開示性が重視される見込み。

買主(日本籍・外国籍を問わず)

  • 本人確認・資金の出所(KYC/AML)資料を整備。ローン特約の期限と審査期間を事前に金融機関へ確認。
  • 該当エリアでは、利用計画(用途・事業内容)を明確に説明できるようにしておくと手続きがスムーズ。

仲介・管理会社

  • 多言語対応のKYCフローコンプライアンス体制を標準化。透明な手順を案内できる会社が選ばれやすくなります。

 

4. 価格(資産価値)への影響の考え方

規制が限定的・明確・迅速なら、市場全体の価格への影響は小さく、むしろ透明性向上で安定化する可能性があります。逆に、対象が広範で審査が長引くと、一部の高額物件・リゾート・インフラ周辺で流動性ディスカウントが発生しやすくなります。都心・ファミリー実需は、明確な運用が示されれば影響は限定的と見るのが妥当です。

 

5. いまできる備え(チェックリスト)

  • 対象エリアの確認:自治体や国の公開情報で、重要施設エリアや届出対象の地図・ガイドラインを確認。
  • 書類の早期整備:身分・登記・納税・資金の出所・用途説明書。境界確定・是正工事は前倒しで。
  • 契約条項の見直し:審査・届出を前提に、停止条件・期限条項・ローン特約を適切に設定。引渡しの余裕を確保。
  • 差別や誤解の回避:制度の目的は安全保障・秩序・透明性の確保。特定国籍の排除ではありません。公平で明確な手続きこそが市場の安心につながります。

 

6. まとめ:ルールの「明確化」は、準備をした人の味方になる

今回の動きは、土地取引の透明化と予見可能性を高める方向です。売買は、書類の整備・手続きの見える化・期限の余裕がポイント。明確なルールは、正しく備えるほど味方になります。落ち着いて情報を追い、できる準備から進めておけば、暮らしと資産を着実に守ることができます。

 

出展:
日本経済新聞「自民党、外国人の土地取得の規制強化へ議論 高市総裁の直轄組織」(2025/11/11)

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