【出典】吹田市「大規模共同住宅の建築等における保育所等の用地確保について」(2026年3月12日)
マンションが建てば、街は豊かになる。
そう思われがちです。
しかし、吹田市の制度はその前提を静かに崩します。
「住宅を増やすなら、保育所の土地も確保しなければならない」
一定規模以上の住宅開発に対して、保育施設用地の確保を義務付ける。
これは単なる行政ルールではなく、不動産の本質を示しています。
何が義務付けられているのか
吹田市では、以下の条件を満たす住宅開発に対して、保育所等の用地確保が求められます。
- 開発住宅数200戸以上
- または1ヘクタール以上の住宅開発
戸数に応じて、必要な施設規模も決まります。
- 200戸以上:定員80人規模の保育所など
- 400戸以上:定員100人規模
- 600戸以上:定員120人規模
つまり、
住宅を増やすほど、生活インフラの責任も増える
という構造です。
不動産鑑定士の視点① 住宅は単体では価値を持たない
不動産は「立地」で決まると言われます。
しかし正確には、
「生活できるかどうか」で決まる
のです。
保育所が足りない。
学校が足りない。
医療が追いつかない。
この状態では、いくら新築マンションが建っても、
長期的な価値は維持できません。
不動産鑑定士の視点② 開発は「利益」ではなく「負担」も生む
開発事業者の視点では、この制度はコストです。
- 土地を住宅として使えない
- 収益面積が減る
- 事業採算が圧迫される
つまり、
住宅開発は「建てれば儲かる」ビジネスではない
という現実がここにあります。
行政は、開発によって発生する社会コストを、事業者に内部化させているのです。
なぜこうした制度が増えているのか
背景は明確です。
- 共働き世帯の増加
- 保育需要の拡大
- 都市部の人口集中
住宅だけが増え、インフラが追いつかない。
この歪みを修正するための制度です。
言い換えれば、
「住む人」を受け入れる責任を、開発に持たせている
ということです。
不動産鑑定士の視点③ これからの不動産は「環境込み」で評価される
今後の不動産価値は、建物そのものではなく、
- 子育て環境
- 教育環境
- 生活インフラ
を含めて評価される流れが強まります。
つまり、
「便利な場所」ではなく「持続できる場所」が価値になる
という変化です。
まとめ|住宅は増やせるが、暮らしは設計しないと成立しない
マンションは建てようと思えば建てられます。
しかし、
暮らしは建てるだけでは成立しません。
子どもを預ける場所、通う場所、支える場所。
それらが揃って初めて、街は機能します。
今回の制度が示しているのは、
不動産は「空間」ではなく「関係」で成り立っている
という事実です。
住宅を増やすほど、責任も増える。
そこを無視した開発は、必ずどこかで歪みとして表に出ます。
【出典】
吹田市公式サイト
「大規模共同住宅の建築等における保育所等の用地確保について」
https://www.city.suita.osaka.jp/kosodate/1020164/1018254/1041889.html

