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2025年10月3日

万博のあと、夢洲(ゆめしま)はどうなる?——大阪市の方針を踏まえた、不動産鑑定士のやさしい見解

 

大阪・関西万博の会場だった夢洲(大阪市此花区)の“その後”が少しずつ具体化しています。大阪市は、万博の理念を受け継いで「国際観光拠点」をめざす方針を示し、マスタープラン(Ver.1.0、Ver.2.0案)を公表。2025年度後半には開発事業者の募集を始める予定としています。
出典:大阪市「大阪・関西万博終了後の夢洲地区活用について」(2025/9/30)

 

1. 市の方針をとても簡単に言うと

万博が終わったあとも、夢洲は“未来を体験できる場所”として育てていきます。観光客だけでなく、住む人・働く人にとっても便利で魅力のある地区をつくる、という考え方です。ポイントは次のとおりです。

  • 「国際観光拠点」をめざす(まちづくり構想・基本方針を継続)
  • 第2期区域のマスタープランを整備(2025年4月:Ver.1.0、同年6月:Ver.2.0案)
  • 万博のレガシーを一部残す(大屋根リング、静けさの森、大阪ヘルスケアパビリオンなどは“活用”を前提に)
  • 民間提案を広く募集(2025年度後半に開発事業者募集を開始する予定)

 

2. 具体的にどんな“街”を想定?

マスタープランでは、次のような機能が重視されています。むずかしく言えば「ショーケース」と「スマートシティ」です。

  • 未来体験・ショーケース機能:大阪の強み(健康・医療など)や研究機関の成果を、来訪者がわかりやすく体験できる施設。
  • 最先端技術の実証の場:新しいモビリティ、デジタル・エネルギー、ロボット等の実験と運用。
  • スマートシティ基盤:都市データ(人流、交通、環境など)を集め、オープンにして、民間プロジェクトを生み出す仕組み。
  • レガシーの利活用:万博施設の一部を残し、街のにぎわい装置として活かす。

 

3. 不動産市場にはどう影響する?(不動産鑑定士の見解)

① 期待と価格の“先走り”に注意
大きな計画が発表されると、周辺の地価や物件価格が先に動きがちです。ただ、実際の価値を押し上げるのは「人が来る・働く・泊まる」という実需です。交通の便利さ(地下鉄中央線の延伸等の実稼働)、施設の開業時期、イベントの定着が確認できるかどうかが本当の分かれ目になります。

② 観光×医療・研究が生む“安定需要”の芽
観光だけに依存する街は景気に左右されやすいですが、医療・研究の集積が加わると、平日の通勤・ビジネス利用が増え、ホテル・オフィス・商業の稼働率が安定しやすくなります。これが地価や賃料の“底力”を作ります。

③ リスク要因もセットで見る
夢洲は埋立地で、高潮・地震・液状化など“海辺ならでは”のリスクがあります。インフラ(道路・橋・上下水・電力・通信)の増強、物流や通勤のアクセス、災害時の避難・復旧体制が重要です。ハザード・ライフライン・保険の3点は、購入前の必須チェックです。

④ レガシーの“使い方”で街の色が決まる
残す施設が「写真映えするモニュメント」で終わるのか、それともイベント・教育・ビジネスの場としてしっかり回るのかで、街の価値は大きく変わります。年間稼働日数・来場者・開催件数といった“数字のKPI”が積み上がると、投資家や金融の目線が安定してきます。

 

4. 住む・買う・投資する人へ(平易なチェックポイント)

住まい(分譲・賃貸)を考える場合

  • 通勤通学の時間:都心・梅田・本町・なんばまでの実測時間。ピーク時のバス・鉄道の本数も。
  • 生活のしやすさ:スーパー、病院、小学校、保育の有無。夜間や雨天の動線も見ましょう。
  • ハザード:高潮・津波・液状化のハザードマップ。マンションなら防潮・非常用電源の仕様も。
  • 管理と修繕:新築でも長期修繕計画・積立金の水準を確認。将来費用を月額換算で把握。

小口の不動産投資を検討する場合

  • テナントの“中身”:ホテルは平日稼働、オフィスはプレリース(事前賃貸)の状況、商業は周辺人口と観光の両にらみ。
  • 収支の耐性:金利が上がる、稼働が一時落ちる、修繕が増える——そんな時でも持てるか(NOI・DSCRの余裕)。
  • 出口の想定:将来、賃貸に回す・売却する際の相場。周辺の成約事例や在庫日数を確認。

 

5. 進捗を見極める“合図”(ここを追うと安心)

  • 交通インフラの節目:鉄道・道路の開通/増便/ダイヤ改正。
  • 民間投資の実着工:ホテル・研究所・オフィスの着工件数と開業日。
  • イベント稼働:年間来場者数、国際会議・展示会・スポーツの開催件数。
  • 雇用の数字:エリア内の就業者数、企業の集積(賃貸面積の純増)。

これらの数字が安定して積み上がるほど、不動産の「価値の土台」は固くなります。

 

6. まとめ:期待だけで判断せず、「暮らしやすさ」と「数字」で確かめる

夢洲は、万博の熱気を“街の力”に変えられるかが問われます。ワクワクする計画ほど、価格が先に動きがちですが、実際の暮らしやすさ・交通・雇用・イベントの積み上げが価値を支えます。住まいも投資も、現地を歩き、ハザードと日常動線を確認し、無理のない資金計画で判断しましょう。数字が整ってくれば、自然と市場の評価もついてきます。

 

出典:
大阪市「大阪・関西万博終了後の夢洲地区活用について」(2025/9/30)

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