企業が保有・取得する不動産には、財務リスクや運用上のリスクが潜んでいます。特に、不動産投資や事業用地の取得を検討する際に欠かせないのが「不動産デューデリジェンス」です。
このプロセスをしっかり行うことで、後から思わぬ損失を被るリスクを減らし、投資判断や事業戦略に活かすことが可能になります。
ここでは、不動産の専門家である不動産鑑定士の立場から、不動産デューデリジェンスの重要性と、法人の財務担当者や不動産運用を行う法人にとって相談するメリットをわかりやすくご紹介します。
不動産デューデリジェンスとは?
不動産デューデリジェンス(DD)は、不動産の価値やリスクを総合的に洗い出すための調査プロセスです。
- 物理的リスク:耐震性能、建物構造、劣化状況など
- 法的リスク:権利関係、用途制限、法令違反の有無
- 市場リスク:賃貸需要、周辺相場、将来の再開発計画
- 財務リスク:投資利回り、担保評価、融資条件
これらの要素を客観的かつ正確に評価しておくことで、不動産投資や事業展開の意思決定をより確実に行えるのです。
不動産鑑定士に相談するメリット
デューデリジェンスは、法務や税務など多方面の専門家の協力が必要ですが、その中でも不動産鑑定士が果たす役割は非常に重要です。以下に、法人の皆様が不動産鑑定士へ相談することで得られる具体的なメリットを紹介します。
1. 客観的・公的信用力の高い評価を得られる
不動産鑑定士は、不動産鑑定評価基準という公的ルールに基づき、透明性と客観性の高い価格評価を行います。
結果として、社内承認や取締役会などへの説明、監査法人や金融機関への報告資料としても説得力が増すのが特長です。
2. 投資利回りの分析やリスク評価が可能
不動産運用を行う法人にとって、収益性は最大の関心事です。
不動産鑑定士は、市場動向や賃料相場、周辺取引事例などを踏まえて収益還元法を適用し、将来キャッシュフローを数値化します。
「この投資物件が本当に割に合うのか?」「どんなリスクを抱えているか?」といった疑問を客観的なデータで解消できるのです。
3. 法的リスクや利用制限を含む実態把握
用途地域や建築基準法の制限、地上権・借地権などの権利関係は、不動産のバリューや流動性を大きく左右します。
不動産鑑定士は、こうした法的側面にも配慮し、「どの程度自由に使えるか」「転用や再開発が可能か」など、経営戦略上重要なポイントを調査・評価します。
4. デューデリジェンス結果の活用でディールを有利に
投資ファンドや他社とのM&A、共同事業においても、不動産の正確な評価書があれば交渉材料として強みを発揮。
「なぜこの価格」かを客観的データで示せるため、合意形成がスムーズになり、より良い条件で契約を結びやすくなります。
不動産デューデリジェンスを成功させるコツ
不動産鑑定士と連携してデューデリジェンスを行う際、以下のポイントを押さえておくとスムーズです。
1. 目的と範囲を明確にする
「購入前のリスク把握が目的か?」「担保評価として必要か?」「M&Aの一環で時価評価を知りたいのか?」など、鑑定評価の目的と期待する成果を最初にはっきりさせましょう。
そうすることで、必要な調査項目や報告書の内容が具体的になります。
2. 情報共有とスケジュール調整
不動産鑑定士が正確な評価を行うには、契約書や登記簿謄本、建物図面、賃貸借契約などの情報が必要です。
社内の関連部署と協力して、迅速に資料を提供するとともに、現地調査やヒアリングなどのスケジュール調整を円滑に行いましょう。
3. 評価結果の有効活用
報告書を受け取ったら、財務担当者や経営企画は、投資判断やリスクマネジメントに評価内容を活かします。
不動産鑑定士にも気軽に質問・要望を伝え、交渉資料や社内プレゼンに使える形での説明を受けると効果的です。
まとめ
不動産デューデリジェンスは、企業が不動産を取得・運用する際のリスク把握と価値評価に欠かせないプロセスです。
・不動産鑑定士は、費用性・収益性・市場性などを総合的に分析し、公的ルールに基づく客観的評価を行う
・財務リスクやコンプライアンス上の問題を大幅に軽減し、ディールを有利に進めるための根拠資料となる
・事前に目的と必要情報を整理し、報告書を活用して意思決定や交渉力アップにつなげよう
法人の財務担当や不動産を活用して収益を上げている企業にとって、不動産鑑定士との連携は大きな安心と利益をもたらします。ぜひ専門家のサポートを受けながら、リスクを最小限に、投資と事業展開を成功させてください。
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