不動産鑑定士は将来性があるのか、AIで仕事はなくなるのか――こうした疑問に対し、資格スクールの解説記事が、現状と今後の見通しを整理しています。要点は、鑑定士は独占業務を持つ国家資格で、相続や再開発などで需要は続く、一方で業務の一部はテクノロジーで効率化され、説明・助言・合意形成といった人の役割がより重要になる、というものです。
出展:アガルート「不動産鑑定士の将来性は?なくなる?今後の需要や現状について解説」(2025/05/21)
1. 記事が伝えている主なポイント
・登録鑑定士は約8,700人と母数が小さい(不動産の数に対し専門家が多くはない)。
・景気や人口動態で民間の案件が減る局面もあるが、鑑定士は鑑定評価書の作成など独占業務を担い、公的案件(地価公示等)もあり需要は底堅い。
・今後は相続・再開発・企業の不動産開示が伸びやすい。コンサルティング需要も広がる。
・AIで定型作業は効率化されるが、判断の根拠説明・対立の調整・最有効使用の提案は人の仕事として残る。
・都市部では案件量が安定。独立やダブルライセンス(税理士・宅建士・会計士等)で提供価値を広げやすい。
2. 不動産鑑定士は何をしてくれる?(依頼者の立場から)
不動産の価値は、場所・法規制・建物の状態・周辺の取引・将来の使い方で変わります。鑑定士は、これらを整理して「適正な価格・賃料」を意見書(鑑定評価書)として提示します。依頼の典型は次のとおりです。
- 相続・贈与・財産分与:家族間の合意形成や税務対応で、第三者の価格意見が役立ちます。
- 再開発・建替え・立退き:権利者間の調整や補償ベースの明確化に。
- 企業の会計・M&A:保有不動産の時価把握、のれん配分、減損テスト等。
- 賃料トラブル:更新・改定での妥当賃料の算定(居住・事業用)。
- 裁判・調停:裁判所提出用の根拠資料(鑑定評価書)。
つまり「価格でもめないため」「意思決定を早めるため」の共通言語を作るのが鑑定士の役割です。
3. 鑑定士の将来性はどこに?(市場の変化とセットで考える)
相続の増加:高齢化で相続は確実に増えます。現金より不動産が多い家庭では、公平な価格の提示と売る/貸す/用地を活かすの比較提案が求められます。
再開発・レジリエンス:都市は再編が続き、遊休地は活用されます。価格だけでなく、最有効使用(HBU)の提案や事業収支の評価が増えます。
企業の不動産戦略:金利・会計・ESG対応で、売却・REIT・セール&リースバック等の選択が増え、客観評価のニーズが続きます。
インバウンド・ホテル・物流:多用途の比較が必要で、賃料・稼働・キャップレートの前提を第三者が点検する場面が増えます。
4. AIで仕事はなくなる?——結論は「置き換わる部分」と「残る中身」
AIは、資料収集、データ整形、事例検索など定型作業を高速化します。一方で、不動産は「同じものが二つとない」ため、法規の解釈・地域の慣行・将来計画・災害リスクなどを踏まえた最終判断、そして利害の違う人に納得してもらう説明は、人の仕事として重要性が増します。
AIの出力=結論ではなく、根拠の設計と説明に鑑定士の価値が残る、が実務の感覚です。
5. 個人の方が鑑定士を上手に使うコツ
- 「目的」を明確に(相続分配/売却価格の妥当性/賃料改定の根拠など)。
- 前提資料を整える(登記簿・図面・固定資産税通知・過去の修繕・賃貸条件)。
- 複数の選択肢(売る・貸す・活用)で比較表を作ってもらうと意思決定が速くなります。
- 税理士・弁護士・仲介と連携できる鑑定士を選ぶと、手戻りが減ります。
6. これから鑑定士を目指す人へ(端的に)
・都市部は案件数が安定。公的評価+民間(相続・再開発・企業)の両輪を持つと強い。
・独立は、顧客に近い提案(評価+助言)、スピード、説明力が武器に。
・ダブルライセンス(税理士・宅建士・会計士等)は、相続・会計・取引の接点で価値を上げる。
7. まとめ
不動産鑑定士の将来性は、相続や再開発などの構造要因で底堅いと考えられます。AIで定型作業は速くなりますが、その分、判断の設計・根拠の説明・合意形成という人の仕事が前に出ます。依頼者にとっては、鑑定士は単に「価格を出す人」ではなく、もめごとを減らし、意思決定を前に進める伴走者です。目的をはっきりさせて、資料を整え、比較の視点を持って相談すれば、費用以上の価値を引き出せます。
出展:
アガルート「不動産鑑定士の将来性は?なくなる?今後の需要や現状について解説」(2025/05/21)