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2025年10月31日

全宅連「不動産市況DI」から読み解くいまの市況――上がる“価格”と鈍る“勢い”、地域差が拡大(不動産鑑定士のやさしい見解)

 

公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)・不動産総合研究所が、2025年10月時点の市況感をまとめた「不動産価格と不動産取引に関する調査報告書(第39回 不動産市況DI調査)」を公表しました。現場の宅建業者が感じる「いま(10月)」と「3か月後(来年1月)」の見通しを、DI(ディフュージョン・インデックス)で示したものです。
出展:全宅連「不動産価格と不動産取引に関する調査報告書 ~第39回 不動産市況DI調査~

 

1. DI(ディフュージョン・インデックス)の見方

上昇・横ばい・下落の回答を指数化し、+100(全員が上昇)~-100(全員が下落)で表す指標です。0よりプラス=上向き0よりマイナス=下向きの体感を意味します。

 

2. 主要結果(かんたん要約)

  • 土地価格(全国):10月の現状DIは+11.5と「上昇の実感」。3か月後は+4.1へ鈍化の予想。
  • 地域差が拡大
    近畿:現状+20.6(強い)→見通し+1.5(一服予想)
    関東+10.2+8.6(上昇は続くが鈍化)
    中部+14.0+8.0
    中国・四国+10.0+13.3(むしろ強含み)
    北海道・東北・甲信越+6.2-2.1(弱含み)
    九州・沖縄+5.0-10.0(下押し予想)
  • 中古・新築の住宅売買:価格DIは総じてプラス域にあるが、取引件数DIは弱め(伸び悩み)。
  • 中古マンション:価格DIはプラス継続、件数は横ばい~やや弱め。在庫と価格のせめぎ合い。
  • 賃貸住宅:賃料DIはプラス空室率DIは改善(マイナス方向)の傾向で、需給はタイト
  • 事業用賃貸(オフィス・店舗等):賃料・成約件数は地域でまちまち。空室率DIは改善方向(空室が減る方向)にある地域も。

結論価格はまだ上向きだが、勢いはやや鈍化。地域・用途の二極化が進んでいます。

 

3. 不動産鑑定士の見解:市況の「体温」は高いが、微熱に下がりつつある

DIがプラス=“上昇している物件の割合が多い”ことを示します。ただし、先行きのプラス幅が縮む地域が目立ち、足元の成約件数DIも力強さに欠けます。価格は強いが、動きは重たくなりつつある——これが今回の読みどころです。背景には、建設コスト高・金利上昇・家計負担などの制約があります。

 

4. これからどう動く?(立場別アドバイス)

買い手(マイホーム)

  • 価格のモメンタムは弱まりつつも下がり切ってはいない金利の上振れ(+0.5%・+1.0%)を想定し、返済比率が手取りの25~30%内に収まるかを再試算。
  • 中古は性能と履歴(インスペクション・修繕履歴・耐震)で選別。数字と書類で不安を潰せる物件は交渉も進みやすい。
  • 地域差が大きい。近畿・関東=強い/北海道・東北・甲信越・九州=足元は慎重という見方を参考に、現地の成約事例を重視。

売り手(住み替え・資産売却)

  • 価格はまだプラス圏。ただし引き合いは選別気味。適正価格の設定と初動の見せ方(資料整備)で時間を短縮。
  • 売却前の軽微な不具合の是正(雨漏り・設備)と情報の可視化は値引きを抑える効果が高い。
  • 金利上昇前に条件がまとまると安心。買い替えは先売り・先確保の順序を検討。

賃貸オーナー

  • 居住用は賃料強含み×空室改善。ただし、省エネ・遮音・ネットなどの小さな投資が成約スピードを左右。
  • 事業用は立地と用途で差。小区画化・共用改善・フリーレントの設計で稼働を高める。
  • 修繕費・更新費の上振れに備え、修繕積立の見直しを。省エネ改修は中長期のNOI改善に有効。

 

5. 地域の“生の声”から見えること

  • 北海道:「新築5,000万円超が普通で『買いたくても買えない』人が多い」「北広島は球場(エスコン)効果で上昇」
  • 東京:「港区でもバブル感」「外国人の都心ファミリーマンション購入が価格押し上げ要因」
  • 石川:「賃貸は復興事業者で底上げ、中古は再建需要」「土地は公費解体後の売却希望が増」
  • 静岡:「売買の二極化が顕著、賃貸は戸建て志向へ訴求が好調」

全国一律ではなく、“地場要因”が市況を左右していることがわかります。購入も売却も、まずは足元の成約事例を必ず確認しましょう。

 

6. まとめ:価格はまだ強い。でも勢いは鈍化。焦らず、家計と現地で判断を

今回のDIは、「価格は上向きだが、伸びは緩やかに」というメッセージです。地域差・用途差が大きいので、全国ニュースより自分の街のデータ家計の持続性を優先。金利ストレス試算と、性能・履歴で選ぶ視点が、後悔しない不動産選びの近道になります。

 

出展:
公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会/不動産総合研究所「不動産価格と不動産取引に関する調査報告書(第39回 不動産市況DI調査)」(調査期間:2025/10/7~10/21、n=182)

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