アデックスリサーチアンドコンサルティング株式会社|鑑定評価で不動産の問題を“解決”へと導く

2025年6月30日

共有持分の分割請求とは?共有不動産をスムーズに単独化する法的手続と実務ポイント

 

 

「共有名義が足かせで売却も活用も進まない」
相続や離婚、投資スキームの解消などで発生した共有持分は、権利関係が複雑なため売却価格の低下意思決定の停滞を招きがちです。本稿では、共有者の一人が裁判所経由で単独所有化を実現できる共有物分割請求の法的枠組み、協議・調停・審判・訴訟の流れ、鑑定評価による分割方法の選択基準を、不動産鑑定士の視点から5,000字超で徹底解説します。

 

■ この記事でわかること

  • 共有持分と共有物分割請求の基礎知識
  • 現物分割・代金分割・換価分割のメリット/デメリット
  • 家庭裁判所での調停・審判・訴訟フロー
  • 鑑定評価・競売評価の実務ポイント
  • 税務・登記・二次トラブルを防ぐチェックリスト

 

 

1. 共有持分の分割請求とは

1-1. 民法で定める共有物分割の権利

民法256条は「共有者はいつでも共有物の分割を請求できる」と規定し、共有関係を永続的に強制しない退出自由を保障しています。

 

1-2. よくある発生原因

  • 相続で兄弟姉妹が1/3ずつ共有
  • 離婚後もローン残債があるため持分のみ譲渡
  • 投資家複数名で購入した収益物件の解散

共有が解消されないと賃貸・売却・担保設定で全員の同意が必要となり、機動性が大きく損なわれます。

 

1-3. 関連キーワード

「現物分割」「代金分割」「換価分割」「共有物分割訴訟」「調停前置主義」「不動産鑑定評価」「競売」「持分買取」「片持分売却」「持分放棄」など。

 

2. 分割方法の種類と選択基準

2-1. 現物分割

土地を筆割り、建物を区分所有化するなど物理的に分ける方法。測量・開発行為が必要でコスト高ですが、持分比率=取得面積が明確で税務計算が容易。

 

2-2. 代金分割(価格賠償)

一人が物件を丸ごと取得し、他共有者に持分相当額+損失補填金を支払う方式。資金調達力がある共有者がいる場合に有効です。

 

2-3. 換価分割

物件を第三者へ売却し、売却金を持分割合で分配。価格最大化と手続簡略化のバランスが良く、近年増加傾向。

 

2-4. 選択の目安

条件 最適手法
接道2面・整形地 現物分割
代表者が資金調達可能 代金分割
利害が対立・関係悪化 換価分割(任意売却→競売)

 

3. 調停・審判・訴訟の手続フロー

3-1. 共有物分割調停

家庭裁判所に申し立てて調停委員が仲裁。合意率は約60%。不動産鑑定士による評価書が着地点を示す指標になります。

 

3-2. 審判(非訟)

調停不成立の場合、同裁判所が審判で分割方法を決定。審判に不服があれば2週間以内に訴訟へ移行。

 

3-3. 訴訟・競売

地裁民事部で争い、最終的に競売による換価分割が命じられる例が多い。競売落札価格は市場価格の7〜8割程度となるため、任意売却での和解が望ましいです。

 

4. 鑑定評価と価格決定の実務

 

裁判所は鑑定人を選任し、原価法・取引事例比較法・収益還元法を総合して正常価格を判定。任意売却では不動産会社査定に加え鑑定評価書を用いると説得力が飛躍的に高まります。

 

鑑定評価費用(目安)

  • 居住用土地建物:25万〜40万円
  • 収益物件(マンション一棟):60万〜120万円

 

5. ケーススタディ

 

Case:3人兄弟が1/3ずつ共有する都内宅地(200㎡)

 

項目 A兄(自宅) B弟(県外) C妹(県外)
意向 住み続けたい 現金化希望 現金化希望
資金力 住宅ローン可能
鑑定評価額 9,000万円(45万円/㎡)

 

シミュレーション

  • 代金分割を採用:A兄が物件取得、B・Cへ各3,000万円支払い。
  • 住宅ローン+自己資金1,000万円で資金調達。
  • 相続税評価の見直しで将来税負担を1,200万円圧縮。

 

結果:家庭裁判所調停で3カ月以内に合意成立、登記完了まで5カ月。

 

6. 共有者・利害関係人別チェックリスト

 

| 立場 | 要確認ポイント |
|——|—————-|
| 取得希望者 | 資金調達プラン・譲渡税・登録免許税 |
| 売却希望者 | 任意売却 vs 競売の手取比較 |
| 相続人 | 二次相続・代償分割・特別受益 |
| 住宅ローン銀行 | 抵当権抹消条件・融資審査 |
| 管理会社 | 共有者変更届・賃借人通知 |

 

7. FAQ(よくある質問)

 

Q1. 共有者が行方不明でも分割できますか?

可能です。家庭裁判所が不在共有者のために不在者財産管理人を選任し、手続きを進めることができます。

 

Q2. 競売より任意売却が有利なのはなぜ?

競売は最低売却価格が保守的に設定され、落札価格が市場価格の7〜8割にとどまる傾向があるため、共有者全体の手取が減少します。

 

Q3. 調停に鑑定評価書は必須ですか?

必須ではありませんが、価格根拠が明確になるため合意形成を大きく前進させます。費用対効果を考慮し取得することを推奨します。

 

8. まとめ

 

共有持分の分割請求は法的権利であり、協議・調停・審判・訴訟いずれのルートでも鑑定評価による客観価格が合意の鍵となります。任意売却や代金分割など複数シナリオを早期に検討し、専門家と連携して時間・コスト・税務リスクを最小化しましょう。

 



 

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