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2025年10月19日

外国人の「経営・管理ビザ」が厳格化——資本金3,000万円・日本語要件で、不動産市場はどう変わる?

 

法務省は、日本で起業する外国人向けの「経営・管理」ビザの要件を引き上げます。資本金は従来の500万円以上から3,000万円以上へ、さらに常勤1名以上の雇用日本語能力(申請者か常勤者のいずれか)経営経験3年以上または修士相当の学位などが求められます。公認会計士・税理士による事業計画の確認も必要で、実態の乏しい業務委託型の事業は認めない方針です。施行は10月16日、既存在留者には3年間の更新猶予が設けられます。
出展:日本経済新聞「外国人『経営ビザ』の要件、資本金3,000万円以上に 日本語能力も設定」(2025/10/10)

 

1. 何がどう変わるの?(制度のポイントを簡単に)

・資本金:500万円 → 3,000万円へ引き上げ(6倍)
・雇用:常勤1名以上の雇用を義務化
・日本語:申請者か常勤職員のいずれかに一定の日本語能力
・経歴:3年以上の経営・管理経験または修士相当の学位
・事業計画:公認会計士・税理士の確認が必須
・実態のない事業:不可(バーチャルオフィス頼み等は厳格に)
・経過措置:既存の経営ビザは3年の更新猶予

 

2. 不動産市場にはどう影響する?(不動産鑑定士の見解)

(1)「質」が上がり、「量」は選別へ
小規模・短期の“形式的な起業”は減り、実体のあるオフィス・店舗需要が中心になります。結果として、件数(量)は減っても、一件あたりの賃借ニーズは質・安定度が上がる可能性があります。

(2)小型オフィス・コワーキングの再編
登記だけのバーチャルオフィスは通りにくくなります。個室・有人受付・会議室・郵便受取など、実態が証明できる施設が選ばれます。小型区画(10~30坪)の専用区画や、サービスオフィス(家具付き・短期契約)の需要は引き続き見込まれます。

(3)リーシング(貸し出し)の実務が変わる
オーナー・PM(管理会社)は、事業計画書・本人確認・就労/在留資格の確認をより厳密に求める傾向に。英日バイリンガル対応、申込~契約の透明性を整える物件は成約率が上がります。

(4)住宅賃貸は「長期・安定」志向が強まる
初期資本が大きい起業家は、住まいも長期安定入居の傾向。海外家財保険・緊急連絡先・保証会社の国籍対応など、受け入れ体制が整う物件が選ばれやすくなります。

(5)地域差:都心とビジネス拠点が優位
司法・会計・VC・金融機関へのアクセスが良い都心(霞が関・丸の内・日本橋・渋谷・六本木など)や、国際系スタートアップ拠点のあるエリアに需要が集まりやすくなります。

 

3. 借りる側(ビザ申請者・スタートアップ)への実務アドバイス

(A)物件選びと契約
用途地域・使用方法:オフィス可か、軽作業の可否、開発や販売の内容が建物ルールに適合するかを確認。
入居審査の書類を先回り:法人登記/定款案/事業計画(会計士・税理士の確認済)/雇用契約予定/在留資格状況。
初期費用と保証:保証会社の利用可否、敷金の水準(目安:賃料6~12か月)、連帯保証の要否。
英日対応:社内に日本語対応できる人材を置くか、外部の通訳・行政書士と契約しておく。

(B)“実態の証明”を意識
常勤雇用(1名以上)と業務実体:在宅100%・委託中心は通りにくい。
オフィスの実在性:私書箱・バーチャルのみは不可。内装・什器・在席体制で稼働実態を示す。

 

4. 貸す側(オーナー・PM)への実務アドバイス

(A)受け入れの“型”を作る
・必要書類リスト(会社・ビザ・会計士の確認書)を多言語で用意。
英文ひな型契約/重要事項の平易な解説資料を整備。
賃料の国際送金やインボイスの発行要件に対応。

(B)与信管理と共用ルール
短期解約違約金・原状回復のルールを明確に。
・共用部の使用、看板表示、来客数の上限、深夜作業の取り扱いを事前に説明。
小区画化(10~30坪)やサービスオフィスへの転換余地を検討。

 

5. この先の「2つのシナリオ」

シナリオA:厳格化で件数が減り、質が向上
小規模・短期のテナントは減り、長期・信用力のあるテナントが中心に。都心オフィスの空室率改善に寄与。

シナリオB:既存在留の更新(3年猶予)で“山”が来る
更新時に要件を満たせない企業の退去・縮小が発生。下位グレードの小型オフィスで空室が出やすい一方、サービスオフィスや住居転用で吸収される可能性。

 

6. 住まい(賃貸・分譲)への波及

短期・小規模の借り手は減る一方、資本力と日本語対応を備えた層の住まい需要は安定するでしょう。ファミリー物件・長期賃貸学校や国際医療へのアクセスが良いエリアは引き続き堅調です。

 

7. まとめ:量から質へ。実態と透明性が「借りやすさ・貸しやすさ」を決める

今回の改正は、実体のある起業・雇用へのシフトを促すものです。借りる側は、書類と実態を整え、英日両対応で準備を。貸す側は、標準化された受け入れフロー小型区画・サービスオフィスのメニューで機会を取り込みましょう。市場は“量より質”に向かいます。丁寧な与信・明確な契約・わかりやすい説明が、双方のリスクを小さくし、長く続く関係を生みます。

 

出展:
日本経済新聞「外国人『経営ビザ』の要件、資本金3,000万円以上に 日本語能力も設定」(2025/10/10)

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