2025年5月15日更新
スイス南部のアルプス山脈で、氷河の一部が崩れ落ち、大規模な土石流が発生するというニュースがありました。世界各地で進む温暖化が原因の一つと考えられています。近年は「気候移住」という言葉も登場するほど、地球規模で異常気象や環境変化に対応する動きが顕在化しています。
日本においても、豪雨や土砂災害の被害が年々深刻化している現状があります。従来の防災体制では想定しきれないほどの集中豪雨や台風などが発生するケースも少なくありません。こうした時代において、家や土地を選ぶ際には、これまで常識とされてきた条件だけではなく、ハザードマップや地図、地形を徹底的に確認し、家族が安心して暮らせるエリアなのかを慎重に検討する必要があります。
特に、これからマイホームの購入を本格的に検討し始める40代夫婦層にとっては、子どもの成長を支える住まい選びは非常に重大な決断です。ここでは、不動産の専門家である不動産鑑定士の視点から、気候変動リスクを踏まえた住まい選びのポイントを分かりやすく解説します。
アルプス氷河崩落から見る地球温暖化の影響
スイス南部のアルプス山脈で氷河の一部が大規模に崩落し、大量の雪や氷、岩石が急激に下流に流れ込む土石流が発生しました。幸いにも死傷者は報告されていないとのことですが、現地では住民の避難やインフラ維持に多大な影響が出ています。
一般的に氷河の融解・崩落は、地球温暖化が進むほどリスクが高まるとされます。雪や氷が融ければ、山肌がむき出しになり、大規模な土砂崩れや土石流に繋がる恐れが高まるのです。こうした海外の事例は、日本での山岳エリアや豪雨災害にも通じる問題として注目を集めています。
気候変動が促す「気候移住」の時代
世界各地で極端な干ばつや豪雨、ハリケーン被害が相次ぐなか、環境変化が進んでいる地域では「気候移住」という現象が見られます。これは、気候変動による被害やリスクが大きくなった地域から、より安全な地域へ移り住む動きのことを指します。海面上昇が深刻な国や地域をはじめ、台風やハリケーンの常襲地帯などでは深刻な問題となっています。
日本でも、台風の進路や集中豪雨の傾向が変化しており、これまで「災害が少ない」と思われていた地域で大規模災害が発生するケースも増えています。結果として、災害リスクの低いエリアへの移住やマイホーム購入を考える人も少なくありません。
日本における豪雨・土砂災害の現状
日本では「線状降水帯」と呼ばれる、雨雲が一定地域に長時間停滞する気象現象が頻発し、大雨被害が拡大する傾向にあります。記録的短時間大雨情報が発表される機会も増え、土砂崩れや河川の氾濫などによる被害がニュースでも大きく取り上げられています。
過去の経験では治水対策や避難体制が十分だった地域でも、想定を上回る降雨量には対応しきれず、水害や土砂災害が発生することがあります。つまり、「これまで大丈夫だった地域=これからも安全」という図式は成り立ちにくくなっているのが現実です。
不動産鑑定士が考える「災害リスクを考慮した住まい選び」
これまでの常識を覆す気候変動を踏まえると、不動産を選ぶ際には従来以上に災害リスクを細かくチェックすることが大切です。不動産鑑定士としては、家の耐震性や資産価値だけでなく、土地と建物が置かれる「環境」や「地形」に注目することを提案しています。
1. ハザードマップの活用
自治体や国土交通省のホームページなどでは、洪水や土砂災害、津波などのリスクが地図上に色分けされているハザードマップが公開されています。物件探しの初期段階からこれらの地図を確認し、自分が検討しているエリアがどのような災害リスクを抱えているのかを把握することが重要です。
2. 地形・地盤の確認
日本は山が多く、平野が少ない国です。山裾や谷間、川沿いの低地などは土砂災害や洪水リスクが高くなる場合があります。公的機関が発行する地形図や地盤情報、古地図などを参照して、かつて沼地や川だった場所を埋め立てた地盤の弱い地域を避けることも大切です。
3. 購入費用以外のコスト・負担を考慮する
災害リスクの高いエリアは、地価が比較的安いケースも少なくありませんが、被災後の修繕費や引っ越しなど、大規模災害が発生した際のリスクコストを試算しておく必要があります。保険料の違いも大きいので、火災保険・地震保険・水災補償なども含めた総合的な検討が必要です。
40代夫婦が考えるべき「これからの家選び」のポイント
これからマイホーム購入を検討し始める40代夫婦層にとっては、老後や子どもの成長も見据えた住まいが理想でしょう。災害リスクだけでなく、通勤・通学の利便性、子育て環境、地域コミュニティの良さなど、考慮すべき要素は多岐にわたります。ただし、第一に家族の安全と安心を最優先に考えることをおすすめします。
ライフステージに合った住宅ローン・プラン
住宅ローンを組む際には、収入や支出の見通し、災害保険料、補修費用など、将来想定される出費を含めて検討してください。金利だけを重視して物件を決めるのではなく、十分な生活防衛資金を確保しながら快適に暮らせるかどうかが重要です。
子育て世代なら地域環境の情報収集を徹底
保育園や学校、病院、公園など、子どもが日常生活を送るうえで必要な施設が充実していることは大きなメリットです。一方で、その地域での災害リスクや避難場所の整備状況、地域コミュニティの防災意識なども注視し、安全性と利便性を両立できる環境を選びましょう。
まとめ
スイスのアルプス氷河崩落に象徴されるように、地球温暖化は既存の地形や気候に大きな影響を及ぼし、世界中で「気候移住」という動きが起き始めています。日本でも、豪雨や土砂災害といった想定を超える自然災害が相次ぎ、住まいの選択基準も従来の常識からアップデートしなければならない時代と言えるでしょう。
特に40代夫婦が住宅を購入する際には、家族の将来を見据えて、ハザードマップや地盤情報を十分に確認し、可能な限り災害リスクを低減できる地域を検討することを強くおすすめします。不動産鑑定士としては、こうした長期的かつ安全重視の視点が、安心できる暮らしと資産価値の保全につながると考えます。ぜひ、ご家族が笑顔で過ごせる住まいを選ぶために、防災情報の収集や専門家への相談を積極的に行ってみてください。
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