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2025年11月25日

登記に「国籍」記載を義務化へ――目的は実態の見える化。私たちの売買・価格に何が起きる?(不動産鑑定士のやさしい見解)

登記に「国籍」記載を義務化へ――目的は実態の見える化。私たちの売買・価格に何が起きる?(不動産鑑定士のやさしい見解)

 

政府は、不動産登記に所有者の国籍を記入する仕組みを検討しています。外国人の不動産取得の実態を把握しやすくし、適切な市場づくりにつなげるのが狙いです。国交省が進めた調査の速報値では、2025年上期の東京都内の新築マンションで「住所が海外」の取得者比率が3.0%、また「取得の住所を問わず、1年以内に転売」した比率は8.5%とされています。政府は今後も調査を継続し、不動産協会も引渡し前の転売禁止などの指針作りを進めています。
出展:読売新聞オンライン「不動産登記で国籍記入を義務化へ、外国人のマンション取得で価格高騰…適正化へ国交省が実態把握」(2025/11/21)

 

1. 何が変わるの?(かんたんに)

いまの登記簿には、所有者の「氏名・住所」は載りますが「国籍」はありません。今回の見直しでは、登記時に国籍も記入する方向で法令改正を検討中。これにより、住所が日本の外国人の取得も含めて、公的な統計が取りやすくなります。

目的はあくまで実態の可視化(透明性の向上)であり、差別や排除を意図するものではありません。市場の情報が明確になるほど、予見可能性が高まり、取引の安心につながります。

 

2. 不動産鑑定士の見解:価格・取引はどう動く?

(A)価格の“直ちに下落”は考えにくい
足元の数字(住所が海外の取得3%、1年以内の転売8.5%)だけを見ると、海外住所の買い手は全体の一部です。登記の記載項目が増えても、市場全体の価格に即時に大きな影響が出る可能性は低いと見ています。

(B)透明性の向上で“過度な不安”は和らぐ
海外資金の影響がどの程度なのか、数字で議論できるようになることは健全です。実態に合わせたルール(例:引渡し前の転売禁止など)が整えば、投機の加熱を抑え、実需が買いやすくなる効果が期待できます。

(C)事務手続きの明確化が重要
登記申請書の項目追加や本人確認(KYC/AML)が少し厳格化しても、要件・書類・審査期間が明確であれば、取引の遅延やコスト増は最小化できます。逆に不明瞭だと、引渡しまでの時間が伸び、流動性ディスカウント(売りにくさ分の割引)につながりかねません。

 

3. 売買・賃貸の現場はどう変わる?(実務のポイント)

売主(住み替え・資産売却)

  • 登記・本人確認・資金の出所など、エビデンス一式を早めに整理。引渡し期日は余裕を持って設計すると安心。
  • 価格だけでなく、修繕履歴・性能報告など“見える価値”の資料をそろえると、交渉が前へ進みます。

買主(日本籍・外国籍を問わず)

  • ローンの期限条項・審査期間を確認。登記手続きの書類が増えても、早めの準備でリスクは抑えられます。
  • 新築は転売制限(引渡し前の転売禁止など)が付く可能性。契約条項を事前にチェック。

賃貸オーナー

  • 入居審査や本人確認は、多言語対応・標準化の整備が鍵。透明で公平なルールを運用する会社が選ばれやすくなります。

 

4. よくある質問(Q&A)

Q. 登記に国籍が載ると、プライバシーが心配…
A. 具体的な「公開範囲」や「閲覧方法」は制度設計次第です。多くの場合、本人情報保護と調査の両立がはかられます。公表され次第、確認しましょう。

Q. 外国人が買えなくなるの?
A. 本件は実態把握(透明化)が目的。差別的な排除ではありません。明確な手続きが整えば、むしろ予見可能性が上がります。

Q. 価格は下がる?買い時は?
A. 直ちに広範な下落につながる材料ではありません。金利・供給・家計とあわせて判断を。購入は「返済比率(手取りの25~30%)」「10~20年の総コスト(税・管理修繕・金利)」で無理がないかが先です。

 

5. まとめ:ルールが明確になるほど、取引はしやすくなる

登記に国籍を記すのは、市場の見える化を進める一手です。数字で実態が分かれば、過度な不安や憶測を抑え、必要な対策(短期転売の抑制など)も焦点化できます。売る人は資料整備、買う人は返済計画、オーナーは公平な運用を心がければ、制度の変化は味方になります。落ち着いて情報を追い、できる準備から進めましょう。

 

出展:
読売新聞オンライン「不動産登記で国籍記入を義務化へ、外国人のマンション取得で価格高騰…適正化へ国交省が実態把握」(2025/11/21)

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