「脱サラして国家資格を取りたい」「手に職をつけて、安定した人生を築きたい」──そんな想いで不動産鑑定士を目指す20代の社会人の方が増えています。
不動産鑑定士は、国家資格の中でも特に専門性が高く、不動産の価値を公正に判断できる数少ない職種です。
しかし、資格を取るだけで食べていける時代ではありません。
ここでは、現役の不動産鑑定士としての立場から、これから鑑定士を目指す方に向けて「資格取得後のリアル」と「将来の可能性」について率直にお話しします。
① 資格はゴールではなく、スタートライン
不動産鑑定士の試験は難関で、合格率は数%。取得までに数年かかることも珍しくありません。
だからこそ、「資格を取れば安泰」「これで一生食べていける」という錯覚に陥ってしまう人もいます。
しかし、実際の仕事は資格を取ってからが本番です。資格は「信用される入り口」であって、「仕事が舞い込む保証」ではありません。
資格だけでは仕事は発生しない
企業や弁護士・税理士などから評価依頼があるのは、信頼と実績があるからこそ。
「資格を持っている」だけでは、依頼先から選ばれる理由にはなりません。
むしろ、資格者が多い中でどう選ばれるかが、これからのキャリアの分かれ道になります。
② 営業力・対人力が、資格者の差を生む
不動産鑑定士は、机に向かって数字を出すだけの職業ではありません。
実際の業務では、依頼者(地主・事業者・弁護士・税理士など)や関係当事者とのやりとりが不可欠です。
1. ヒアリング力が評価の精度を左右する
現地調査や面談で、依頼者の意図を正しく理解し、価格に反映すべき要因を拾い上げることが重要。
・何を重視しているのか?
・将来どのような使い方を想定しているのか?
こうした情報を引き出すには、対話力と相手の立場を理解する姿勢が不可欠です。
2. 信頼される人柄が次の依頼につながる
評価額そのものが客観的であっても、報告書の説明や調整局面での立ち回りが求められる場面は多々あります。
「この人なら依頼して安心」と思われるような、誠実さと柔軟さが評価されるのが、不動産鑑定士という仕事です。
③ 国家資格の将来性は「制度」よりも「個人の努力」で決まる
不動産鑑定士は、不動産に関する数少ない国家資格のひとつ。
行政の評価業務(地価公示、固定資産評価など)や、相続・訴訟・M&A・担保評価などで高い専門性が求められています。
ただし、「制度があるから食べていける」という保証はどこにもありません。
1. 業界の将来は「個々の鑑定士」にかかっている
制度に守られるよりも、どれだけ広い視野で価値を提供できるかが活躍の鍵。
・不動産投資のアドバイザーとして活躍
・相続や遺産分割でのトラブル解決をサポート
・Z世代の住宅選びや災害リスク評価のコンサルティング
これらすべては、鑑定士自身の挑戦と学び続ける姿勢によって可能になります。
2. 自分で道を切り開ける人にこそ価値ある資格
不動産鑑定士は、行政案件・企業評価・個人の不動産相談まで活躍の場が多岐にわたります。
「資格を取ったら人生が変わる」ではなく、「資格を活かして何をするか」で、キャリアの充実度が大きく変わります。
まとめ
脱サラして不動産鑑定士を目指すことは、人生の大きなチャレンジです。
- 資格を取ること自体が目的ではなく、その後の実務力と人間力が成否を分ける
- 営業力・対話力が評価の精度と依頼者満足を左右する
- 制度の安定よりも、個々の努力が業界の未来と自分の未来を切り拓く
これから資格取得を目指す皆さんには、学ぶ覚悟と同時に「その先にどんな自分を描くか」という視点を持っていただきたいと思います。
不動産鑑定士は、努力する人には無限の可能性を与えてくれる資格です。
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