8月の首都圏新築マンションは、発売戸数が前年同月比+79%の1,301戸と大幅増。一方で平均価格は1億0325万円と2カ月連続の1億円超、初月契約率は65%で“好調ライン”70%を下回りました。数字が示すのは「供給は戻りつつも、価格負担感で実需は慎重」という構図。一般消費者向けに、今の市場をやさしく解説します。
出典:日本経済新聞「首都圏マンション発売、8月79%増 平均価格2カ月連続1億円超え」(2025年9月18日 16:10)
1|いま何が起きている?(データの要点)
- 発売戸数:首都圏1,301戸(+79%)。東京23区は690戸で2倍、東京都下2.6倍。神奈川+59%、千葉+95%、埼玉は▲21%。
- 価格:首都圏平均1億0325万円(+8%)。東京23区平均は1億3810万円(▲1%)と高値維持。
- 売れ行き:初月契約率65%(目安の70%を下回る)。「一次取得(はじめて買う層)はギリギリまで検討」との現場感。
- 背景:大型物件の発売や、春の来場者が多く売り出しが8月にシフトした影響。23区外は建設コスト高を価格に転嫁。
2|不動産鑑定士の読み解き:キーワードは「供給戻り × 価格負担感」
- 供給は戻り基調:発売が増えたのはポジティブ。ただし一時的な前倒し・後ずれ要因もあり、持続性は今後のデータ確認が必要。
- 価格の天井感:平均1億円超は“買える人は買う”市場。23区は微減でも高値圏、郊外はコスト高でじり高。値下がり期待一辺倒は禁物ですが、強い上昇モメンタムも鈍化。
- 契約率65%:実需(特に一次取得)は金利・家計・将来不安で慎重。人気立地や間取りは売れるが、価格に敏感な層の選別が進行。
3|「新築だけ」を見ない。比較すべき3つの軸
- 新築 vs. 良質中古(リノベ含む):同予算で広さ・立地・管理状態はどう変わるか。築浅中古は価格調整余地や実物確認の安心感も。
- マンション vs. コンパクト戸建:月々の管理費・修繕積立と、戸建の自己修繕積立を総コストで比較(10年・20年軸)。
- 立地の普遍価値:駅距離・生活利便・学区・災害リスク・管理力(長期修繕計画・積立水準)。価格より“暮らしやすさ”を点数化。
4|いま買う人の「落ち着くチェックリスト」
- 返済感応度:金利を0.5%刻みで上振れ試算(毎月いくら増?ボーナスなしでも回る?)。
- 総保有コスト:購入時諸費用+家具家電+固定資産税+管理修繕(or 戸建の将来修繕)まで見える化。
- 生活動線:在宅ワーク、保育・学童、医療・買物導線。時間コスト(タイパ)を“円換算”で比較。
- 出口戦略:賃貸に回す・売却する可能性と、その時の相場・賃料のレンジを事前に調べておく。
- モデルルームの落とし穴:眺望・日照・遮音・室外機置場・収納寸法は実物(現地・階数・方位)で確認。
5|「売り手の提案」を鵜呑みにしない、でも活用する
- 価格交渉ばかりでなく、仕様ダウン・オプション見直し、入居時期・手付金の柔軟化など総合条件で相談。
- 周辺の成約・賃料実例(レインズ、ポータル)を営業担当に提示し、根拠あるディスカッションに。
6|よくある質問(簡潔に)
Q. 価格は下がりますか?
A. 直近は高値維持×選別。供給戻りで過熱は和らぎやすい一方、建設コスト高と実需の強い立地は底堅いです。
Q. “買い時”ですか?
A. 「買える時」より“持てる時”が大切。金利・家計・10年コストで無理がないなら前向きに。迷うなら良質中古や戸建も含めて3案比較を。
7|まとめ:数字に惑わされず、“暮らしの点数”で選ぶ
発売が増えても、価格負担感で実需は慎重——いまは「広く比較し、総コストと生活価値で決める」時期です。モデルルームの熱気より、家計と暮らしに合うかを冷静に。迷ったら、立地・管理・市場性を横断的にチェックできる専門家(不動産鑑定士・建築士・宅建士)に早めに相談しましょう。
記事の引用元:
日本経済新聞「首都圏マンション発売、8月79%増 平均価格2カ月連続1億円超え」(2025年9月18日 16:10)