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2025年9月6日

マンション高すぎ…それでも都心に住みたい人が「狭小(コンパクト)戸建て」を選ぶ理由―不動産鑑定士がやさしく解説

首都圏の新築マンションは、今年上半期の平均価格が約8,958万円、東京23区に限ると約1億3,064万円まで上がりました。こうした中で、23区内では土地30~50㎡・3階建ての「狭小(コンパクト)戸建て」がじわりと人気です。価格帯はおおむね5,000~6,000万円。総額を半分近くに抑えつつ、延べ床(家の中の合計の広さ)は新築マンションと同等かそれ以上を確保しやすいのが魅力です。
ここでは、不動産鑑定士の立場から、メリット・注意点・見極め方を一般の方向けに分かりやすくまとめます。

1. なぜ同じ都心で「半額近く」に見えるのか

マンション価格が跳ね上がった最大の要因は、土地・建築費・人件費のトリプル高。マンションは駅至近の好立地かつ共用部が充実するほどコストが乗ります。
一方、コンパクト戸建ては「土地を小さく・建物を縦に積む」設計で総額を抑えます。開発側が、変形地や旗竿地を含めて細かく区割りし、設計や施工、販売まで一体運営することで中間コストを削減――この仕組みが、都心・駅近でも“手が届く価格”を実現している背景です。

ポイントは、**土地は小さくても、延べ床で75~90㎡前後を確保できることが多い**点。マンションが価格上昇に合わせて専有面積を小さくする傾向があるのに対し、戸建ては階段や収納の工夫で“使える面積”を引き出しやすいのです。

2. コンパクト戸建ての「暮らしの実力」

– **職住近接×駅近**:共働き世帯や子育て世帯にとって“移動時間の短縮”は大きな価値。
– **上下階の音ストレスが小さい**:階下への配慮が要らないのは戸建ての強み。ペット可も選択肢が広がります。
– **管理費・修繕積立が固定でかからない**:マンションの毎月の固定費がないぶん、家計設計はシンプルに(ただし後述の“自分で修繕積立”は必須)。
– **間取りの自由度**:ワークスペースや趣味部屋など、階ごとに用途を分けやすい。リモートワークとの相性が良いです。

体感としては、「住戸の中に3つのゾーン(1・2・3階)を持てる」イメージ。生活リズムの異なる家族でも空間を縦に分けやすく、暮らしの衝突が減ります。

3. デメリットも正直に―“階段”“収納”“将来”

– **階段の上り下り**:3階建ては将来の体力低下に備えた動線計画(主寝室の階、洗濯動線、将来の手すり設置など)の検討が重要。
– **収納量**:モノが多い家庭は、造作収納や小屋裏・床下の活用を前提に。
– **日当たり・風通し**:隣棟距離が詰まる立地では、窓の位置・天井高・吹き抜け等の工夫が暮らし心地を左右。
– **自主管理の重み**:外壁・屋根・給湯器・エアコンなどの更新は自己判断・自己負担。マンションの“管理会社お任せ”に慣れている方は意識の切り替えが必要です。
– **再販(売却)時の裾野**:旗竿地・間口が極端に狭い・駐車不可などは、次の買い手が限定されがち。将来の出口も視野に入れましょう。

4. 鑑定士の「見るポイント」―ここを押さえれば失敗が減る

**(1) 接道と権利関係**
前面道路が建築基準法の道路(幅員4m以上)か、私道なら通行・掘削承諾や持分はどうか。セットバック(道路後退)が必要なら“有効宅地”がどれだけ残るかを確認。**ここが弱いと資産価値を傷めます。**

**(2) 法規と容積の消化**
建ぺい率・容積率、準(防)火地域の仕様、日影・斜線制限で「本当に欲しい延べ床」が取れているか。階段で“食われる”面積を最小化できているか(**有効床**の確保)が設計の腕の見せどころです。

**(3) 採光・通風の設計**
窓の高さや位置、吹き抜け、ハイサイドライト、階段室の使い方で“明るさと抜け”は大きく変わります。現地は**昼と夕方に2回**見学し、前面の抜け・隣棟の高さ・音を体感してください。

**(4) 生活動線と将来対応**
洗濯動線(洗う→干す→畳む・しまう)、ベビーカーや自転車の出し入れ、ゴミ置き場、来客動線。将来は主寝室を下階に移せるか、手すり設置の余白はあるかも確認。

**(5) 地盤・ハザード・性能**
地盤調査や液状化、浸水想定。耐震等級・断熱等級・窓性能(Low-E/樹脂サッシ)など“見えない性能”は暮らしの質と電気代に直結します。

**(6) 駐車と前面道路**
マイカー派なら駐車のしやすさ(車種、間口、道路幅)は将来の資産性にも影響。カースペースの有無で買い手層が変わります。

5. マンションと比べる時の“総コスト”の考え方

マンションは管理費・修繕積立金・駐車場代などの固定費がかかる一方、大規模修繕は専門家主導で計画的に進みがち。
コンパクト戸建ては毎月の固定費が抑えられる代わりに、**外壁・屋根・設備更新のために自分で積み立てる**必要があります。目安として、延べ床80㎡台なら**月1~2万円程度**を“将来のメンテ費”として家計に織り込むと安心です。
購入時も、登記・火災地震保険・外構・カーテン照明・引っ越し・家具家電などの**諸費用まで含めた総額**で比較しましょう。

6. こんな人に向いています

– 都心・駅近のタイムパフォーマンスを最優先したい共働き世帯
– 上下階の音やペット可など、暮らしの自由度を重視したい人
– リモートワーク用の書斎や趣味部屋が欲しい人
– 将来の出口(賃貸化・売却)まで見据え、**立地×設計の“普遍価値”**を押さえて選べる人

7. まとめ――「小さな土地×賢い設計」は、都心で“背伸びしない家”の有力解

マンション高騰の時代に、**総額を抑えつつ延べ床を確保**できるコンパクト戸建ては合理的な選択肢です。ただし、価値を左右するのは**立地(駅距離・前面道路・周辺環境)と設計(有効床・採光・動線)**。
購入前の現地確認と図面読み、将来のメンテ費の見込み、そして“出口”の見立て――この3点をおさえれば、**都心で無理なく暮らす「ちょうどいい家」**に出会えるはずです。
迷ったら、接道・法規・ハザード・市場性を横断的にチェックできる専門家(不動産鑑定士・建築士・宅建士)に早めに相談しましょう。
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