読売新聞は、期限付きで土地を借りて建てる定期借地権付きマンションの供給が増え、2025年は首都圏で過去最多クラス(年間約1,500戸)になる可能性があると伝えています。価格高騰が続く中、購入者・土地所有者・デベロッパーの「三方よし」で注目が高まっています。
出展:読売新聞オンライン「価格上昇止まらぬ首都圏マンション、三方よしの『定期借地権付き』人気高まる…供給数過去最多か」(2025/10/19)
1. 「定期借地権付きマンション」とは?
土地は借地(賃借権)で、建物だけを所有する仕組みです。契約で定めた借地期間(たとえば70年)が終わると、原則として更地返還が必要で、土地は地主に戻ります。土地を「買わない」ぶん、価格を抑えやすいのが最大の特徴です。
記事では、笹塚駅徒歩4分の「パークタワー渋谷笹塚」(借地70年・659戸)が紹介され、70㎡台3LDKが約1.6億円で、近隣の同水準物件より約2割安とされています(借地料は月2千円程度/記事記載)。第1期230戸は即日完売でした。
2. なぜ人気?—「三方よし」の理由
- 買い手(一次取得・学区重視など):
土地を買わない分、購入総額を抑えやすい。駅近・大規模の選択肢が広がる。 - 地主(企業・学校法人・個人など):
土地を手放さずに活用し、地代収入や将来の選択肢を確保。譲渡益課税の発生を避ける意図も。 - デベロッパー:
都心での土地取得コストを抑え、供給機会を増やせる。売却以外の提案ができる。
3. メリットとデメリット(要点)
メリット
- 分譲より価格が抑えめ(エリア次第で1~2割程度下がる例)。
- 駅近・再開発エリアなど、立地の選択肢が拡がる。
- 固定資産税・都市計画税は建物分のみ(土地は地主が負担)。
デメリット
- 借地期間終了(残存年数が少なくなる)につれ、売却のしやすさが落ちやすい。
- 更地返還・原状回復の取り決め(費用の考え方)に注意。
- 借地料の改定条件や、名義変更承諾料などの取り決めに留意。
- 住宅ローンは期間や商品が制約される場合あり(金融機関の審査基準次第)。
4. 買う前に必ず確認する10項目(短時間で失敗を減らす)
- 借地期間:満了日/残存年数。残30年を切ると融資・流通性が厳しくなる傾向。
- 借地料:金額・支払頻度・改定方式(公租公課スライド・物価連動・近傍比準など)と改定時期。
- 承諾・名義変更:売却・賃貸時の地主承諾の要否、承諾料の有無・算定方法。
- 中途解約:自己都合の解約可否、違約・精算の定め。
- 満了時の扱い:更地返還・原状回復の範囲、建物買取請求不可が原則であることの確認。
- 将来費用:修繕積立金の水準と、満了期を見据えた特別積立(解体原資等)の考え方。
- 管理・修繕:長期修繕計画、機械式駐車場の将来、管理会社・管理人の体制。
- ローン:借入期間の上限、フラット利用可否、団信・担保評価の扱いを金融機関で要確認。
- 税・控除:住宅ローン減税は建物部分のみが対象。固定資産税は建物のみ負担。
- 規約・特則:管理規約にある借地特則(地代滞納時の扱い等)を精読。
5. 向いている人・向いていない人(目安)
向いている人
- 学区・通勤など立地優先で、長く(20~30年以上)住む前提。
- 「居住の質」を優先し、売却益を強く期待しない一次取得層。
- 将来の費用(修繕・解体関連の備え)を計画的に積み立てできる人。
向いていない人
- 短~中期での売却益狙い(出口で残存年数が効いてくる)。
- 借地契約の細かい管理(地代改定・承諾手続き)が負担に感じる人。
6. 「本当に安い?」—総コストで比べましょう
購入価格が2割安くても、地代+管理費+修繕積立金+固定資産税(建物)+ローンの合計で判断しましょう。さらに、借地改定時の上振れや、将来の解体・原状回復の積立まで含めて家計に無理がないかがポイントです。
7. 資産性の捉え方(不動産鑑定士の見解)
定借の資産性は、(A)立地力 × (B)管理・修繕の健全性 × (C)契約条件(残存年数・改定方式)の掛け算で決まります。駅距離・生活利便・学区など普遍価値が強いほど価格は粘り、残存年数が十分ある期間は流通も比較的スムーズです。逆に、残20~30年を切るあたりからは、融資・需要ともに慎重になり、価格の弾力性が大きくなります。
8. まとめ:定借は「立地重視・長く住む」人に合理的。契約と将来費用を数字で確認を
定期借地権付きマンションは、土地価格が高い都心で立地の良い住まいを手の届く価格で選べる有力な選択肢です。ただし、契約の読み込みと将来費用の見通しは分譲以上に重要です。地代・改定条項・残存年数・原状回復・修繕計画・ローン条件を事前に数字で確かめ、“総コストで無理がないか”を家計に合わせて判断しましょう。これができれば、定借は「三方よし」を生活者のメリットに変える住まいになります。
出展:
読売新聞オンライン「価格上昇止まらぬ首都圏マンション、三方よしの『定期借地権付き』人気高まる…供給数過去最多か」(2025/10/19)

