【出典】四国新聞「【独自】未登記建物2割超、課税漏れも/災害復旧妨げに、法務省調査」(2026年5月28日)
建物を建てたら登記をする。
不動産に関わる人からすると当たり前に聞こえますが、実際にはそうなっていません。
法務省の調査によると、全国約3610万棟の建物のうち、約800万棟が未登記でした。回答のなかった自治体分も含めると、未登記建物は1000万棟を超える可能性があるとされています。
つまり、日本の建物の5棟に1棟以上は、法務局上では存在が十分に把握されていない状態なのです。
未登記建物とは何か
未登記建物とは、建物が実際には存在しているにもかかわらず、法務局に建物登記がされていない状態を指します。
よくある例としては、
- 相続後に登記をしていない住宅
- 増築部分だけ未登記になっている建物
- 古い倉庫や車庫
- 農村部の離れや作業場
などがあります。
特に地方では、親から子へ引き継がれる過程で登記が行われず、そのまま何十年も放置されるケースが少なくありません。
不動産鑑定士の視点① 未登記は「所有者不明不動産」の入口
未登記の本当の問題は、建物そのものではありません。
誰のものか分からなくなることです。
登記がなければ、
- 相続人が把握できない
- 売却が進まない
- 解体ができない
- 再開発が進まない
という問題が発生します。
近年問題になっている「所有者不明土地」も、突き詰めれば同じ構造です。
不動産は存在していても、所有者が分からなければ社会の中で活用できません。
災害復旧の妨げになる理由
法務省が特に問題視しているのが災害時です。
地震や豪雨で建物が倒壊した場合、
- 撤去する
- 補償する
- 再建する
ためには、まず所有者を確認しなければなりません。
しかし未登記だと、その確認に時間がかかります。
東日本大震災や能登半島地震でも、所有者確認の遅れが復旧の妨げになった事例がありました。
不動産鑑定士の立場から見ると、未登記建物は単なる個人の問題ではなく、地域全体の復旧力にも関わる問題です。
不動産鑑定士の視点② 資産価値を下げる原因になる
未登記建物は資産価値にも影響します。
例えば売却時、
- 登記手続きが必要になる
- 相続関係を整理しなければならない
- 金融機関の融資が難しくなる
ことがあります。
買主にとっては余計な手間やリスクとなるため、結果的に売却価格が下がるケースもあります。
「登記していないだけだから問題ない」と考える人もいますが、資産として見ると決して小さな問題ではありません。
固定資産税の課税漏れも
今回の調査では、固定資産税の課税漏れの可能性も指摘されています。
自治体は現地調査などで把握していますが、未登記建物が増えると行政側の管理コストも上がります。
実際に、回答した自治体の7割以上が「支障がある」と答えています。
これは行政実務の現場でも、未登記建物が大きな課題になっていることを示しています。
まとめ|建物は建てた瞬間より「引き継ぐ時」に問題が起きる
今回の調査結果で見えてくるのは、未登記建物の問題は建築時ではなく、相続時に発生することが多いという事実です。
親が建てた家をそのまま使っている。
相続手続きが面倒だから後回しにしている。
こうした小さな先送りが、将来の売却や相続、災害復旧を難しくします。
不動産鑑定士として強く感じるのは、
不動産は「持つこと」よりも「引き継ぐこと」の方が難しい
ということです。
未登記のまま放置されている建物がある場合は、資産価値を守るためにも早めの確認と整理をおすすめします。
【出典】
四国新聞(2026年5月28日)
「【独自】未登記建物2割超、課税漏れも/災害復旧妨げに、法務省調査」
https://www.shikoku-np.co.jp/national/main/20260528000871

