「木造戸建住宅は築20数年で価値がなくなる」とよく言われてきました。しかし、近年の建築学会などの研究では、適切な維持管理を行えば建物の寿命は大幅に延ばせることがわかっています。
実際、建物のみの鑑定評価依頼が増えているのは、「築年数が一定を超えたから価値ゼロ」という旧来の考え方が変わりつつある証拠です。今回は、不動産の専門家である不動産鑑定士の立場から、この新たな価値観について解説します。
木造戸建の価値は本当にゼロ?
かつては、「築22年ほどで木造住宅は資産価値がなくなる」と言われていました。
しかしこれは、一般的な税務上の耐用年数や旧来の評価指標に基づくもので、実際の耐久性やメンテナンス状態を十分に考慮していないケースが多いのです。
現実には、躯体(構造部分)をしっかりと維持管理していれば、築年数が経過していても十分に市場価値を保てる可能性があります。
1. 新築志向からメンテナンス重視へ
日本では、スクラップアンドビルドと呼ばれる、建物を壊して新築に建て替える文化が長く続いてきました。
しかし、高齢化社会や環境問題への配慮、住宅費用の高騰などから、既存の建物を手入れしながら長く使う動きが注目されています。
「古いから価値がない」と一律に判断するのではなく、「手入れ次第でまだまだ使える」という発想が広がりつつあります。
2. 建物のみの鑑定評価が増えている理由
近年、建物のみを対象とした不動産鑑定評価の依頼が増加中です。
- リノベーションやリフォームを前提とした投資判断
- 耐震補強や補修履歴を含む建物状況調査
- 不動産売買や担保評価で、土地とは切り離して建物の価値を把握したい
こうした要望に応えるため、建物の現況や耐用年数、修繕計画などを細かくチェックする鑑定が必要とされているのです。
メンテナンスをしながら長く住むメリット
木造戸建て住宅はコンクリート造や鉄骨造に比べると耐久性が低いというイメージを持たれがちですが、定期的な点検・補修・リフォームを行うことで、次のようなメリットが得られます。
1. コストの削減
新築を建てるには多額の費用がかかります。しかし、部分的な補修や設備更新を繰り返すことで、建替えよりも低コストで長期間家を使い続けることができます。
2. 愛着と文化の継承
日本各地には、築100年以上の古民家が現役で使われている例もあります。
定期的なメンテナンスを行うことで、次世代に受け継がれる家として愛着や地域文化を維持できるのは大きな魅力です。
不動産鑑定士が示す「建物価値」の見極め方
「築年数が古い建物でも価値が残る可能性がある」とわかっていても、どれくらいの価値があるのかを判断するのは簡単ではありません。そこで不動産鑑定士が活躍します。
1. 現地調査で建物の劣化度合いをチェック
鑑定士は実際に建物をチェックし、屋根・外壁・床下などの劣化状態や修繕履歴を確認します。
これによって、どの程度の補修で延命可能かや、耐震補強の必要性などが評価に反映されます。
2. 将来の維持費用も考慮
建物を長く使う場合、維持管理コスト(リフォーム費用や設備更新費用など)も見逃せません。
そうした長期的な費用を考慮したうえで資産価値を算定するのが、不動産鑑定士の評価の特徴です。
まとめ
従来、築年数だけで「価値ゼロ」とされた木造戸建住宅も、適切なメンテナンスさえ行えば十分に価値を維持し、次世代へ受け継いでいくことが可能です。
・スクラップアンドビルドが当たり前ではなく、リフォームやリノベで長く使う選択肢が増えた
・建物のみの鑑定評価を通じて、実際の劣化状況やメンテ計画をふまえた資産価値を客観的に把握
・手入れをしながら住み続けるという価値観が、持続可能な住まいや家族の歴史を紡ぐきっかけになる
大切な家をどうするか悩んだときは、ぜひ不動産鑑定士に相談してみましょう。築古物件もメンテ次第で資産価値を長く保てる可能性があることを、改めて確認できるはずです。
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