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2025年9月19日

世界マネーはアジア太平洋へ──日本の不動産に何が起きる?

 

不動産サービス大手JLL(ジョーンズラングラサール)は、今後数年にわたり世界の投資家が日本・オーストラリア・韓国・シンガポールに注目し続けると指摘しています。背景には、中国・欧州の不動産需要の弱さと、アジア太平洋(APAC)主要国の投資環境の予見可能性があります。実際に2024年のAPAC商業用不動産投資額は前年比+23%の1,310億ドルへ拡大。日本ではホテル投資の活況が目立ちました。この記事では、一般の方向けに「海外マネーの流入が日本の不動産に与える影響」をわかりやすく解説します。
出典:Forbes JAPAN「JLL:日本・豪・韓・シンガポールは今後も有望投資先に

 

1|いま世界の投資家に起きていること(かんたん要約)

  • APACの商業用投資額は1,310億ドル(+23%)に増加。特に豪州・インド・日本・韓国・シンガポールが牽引。
  • シンガポールは+60%と突出(富裕層のファミリーオフィス増など)。
  • 日本は観光ブームでホテル投資が活発、2024年の投資額は360億ドル(+48%)。大型ホテルの取得契約も進行。
  • 豪州・韓国などではデータセンター(デジタル・物流系)への投資も拡大。ただし電力供給の制約が成長のネックに。

 

2|海外マネーの流入が、日本の不動産に与える影響

(1)ホテル・観光地の「地価・賃料の下支え」
訪日客が戻ると、ホテルの宿泊収益(RevPAR)が改善し、投資家は安定的な収益期待(NOI)を持ちやすくなります。結果として、ホテル用地や周辺商業の賃料・価格を下支えする方向に働きます。観光都市だけでなく、空港アクセスの良い湾岸・臨海部でも同様の効果が出やすいでしょう。

(2)都心・副都心での再開発の進行
オフィス・ホテル・商業を含む大規模再開発は海外資本の参加で資金調達が多様化し、計画が動きやすくなります。生活者にとっては、駅前の景観や動線、商業サービスの高度化という形で還元されますが、周辺の住宅価格・家賃に上昇圧力がかかる副作用も。

(3)データセンター・物流の進展と“電力”の壁
生成AIやクラウド普及でデータセンター用地の需要は強いものの、最大の制約は電力。電源接続・系統増強のハードルが高いエリアでは、計画の遅延やコスト上振れが発生しやすく、周辺の地価形成にも影響します。

 

3|一般の方が押さえるべき3つの視点

  1. 立地の普遍価値を見極める:駅距離・生活利便・災害リスク・景観規制。
    海外マネーの押し上げがあっても、最終的に価格を支えるのは日常的な暮らしの価値です。
  2. 価格“だけ”で判断しない:金利・固定資産税・管理修繕(または戸建の将来修繕)・保険まで含めた総保有コストで比較。
    ホテル・商業の活況で周辺が賑わっても、住居としての快適性が上がるとは限りません。
  3. 出口の想定:賃貸化・売却の可能性に備え、賃料レンジと成約事例を調査。
    インバウンドや再開発のテーマが外れた時でも、需要が残るかを考えましょう。

 

4|投資で意識したい「リスクの棚卸し」

  • 観光・為替・金利の三重リスク:訪日客の動向(地政学・為替)でホテル収益は揺れます。金利上昇は利回り(還元利回り)を押し上げ、価格を抑える方向に。
  • エネルギー制約(データセンター等):電源容量・接続時期の不確実性は工期・コスト・稼働率に直結。
  • 出口利回りの保守化:海外マネーの流入で取得競争が激しくなるほど、将来の売却時利回りは保守的に設定を。

 

5|チェックリスト(保存版)

  1. 立地:駅徒歩・生活導線(医療・教育・商業)・ハザードマップ。
  2. 総コスト:ローン金利の上振れ、固定資産税、管理修繕/将来修繕、保険、更新費。
  3. 市場データ:周辺の賃料・成約単価・在庫日数(買い出しやすさ・売りやすさ)。
  4. 運営・管理(マンション):長期修繕計画・積立金水準・管理組合の運営力。
    (戸建):外壁・屋根・設備の更新サイクルと概算費。
  5. 出口戦略:賃貸化・売却の想定価格帯/利回り、空室時の耐性(キャッシュリザーブ)。

 

まとめ:海外マネーの追い風に“乗る”より、“振り回されない”家選びを

海外投資家の資金は、日本のホテル・再開発・データセンターに追い風をもたらします。一方で、地価や価格が押し上げられ、生活者にとっては選択が難しい局面も。大切なのは、立地の普遍価値・総保有コスト・出口の想定という3点で「自分の暮らしにとって良い不動産か」を見極めること。数字に踊らされず、現地を歩き、長い目で判断しましょう。

 

記事の引用元:
Forbes JAPAN「不動産投資:JLL『日本・豪・韓・シンガポールは有望投資先』

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