東京ビッグサイトで、都市と地方の二つの拠点で暮らす「二地域居住」をテーマにしたフォーラムが初開催されました。全国の自治体や企業が、空き家の活用、就農支援、体験ツアーなどを紹介し、栃木県那須町は二地域居住者向けのアプリで特典や人数把握を進めている事例も紹介されています。
出展:朝日新聞デジタル「「二つの拠点で生活する魅力を」二地域居住フォーラム 東京で初開催」(2025/9/26)
1. いま何が起きている?(二地域居住の広がり)
テレワークの普及、物価・家賃の上昇、自然の近くで過ごしたいニーズの高まりで、「週の前半は都市、後半は地方」「平日は都市、週末は地方」といった二つの拠点で暮らす人が増えています。自治体は、空き家の改修支援や体験ツアー、デジタルツール(例:那須町のアプリ)で、“住民票を移さない住民”も含めた関係人口の見える化と受け入れ整備を進めています。
2. 不動産はどう変わる?(不動産鑑定士の見解)
地域の中古・賃貸の需要が底上げされます。特に、鉄道・高速ICからのアクセスがよい温泉地、スキー・海・高原などのレジャー資源があるエリアで、平屋・古民家・築古の戸建や、小さめの庭付き賃貸の引き合いが増えやすいです。
一方で、観光地の中心部では短期賃貸(民泊等)への転用が進み、近隣の家賃・価格が上がることも。暮らしの静けさとのバランスを取るため、自治体のルール(用途地域・民泊条例・ゴミ・騒音)の整備が重要になります。
空き家は流通促進で活用が進みますが、再建築可否・接道・上下水道・耐震など法規面のハードルが明暗を分けます。価格は「立地×インフラ×法規×建物状態」で決まるため、見た目より中身を重視しましょう。
3. 二地域居住のコストは?(家計の見える化)
「家が二つ」になると、費用は単純に増えます。次の合計で判断しましょう。
- 住居費:家賃/住宅ローン、固定資産税・都市計画税、管理費・修繕積立金(マンション)、将来修繕(戸建)。
 - 交通費・時間:新幹線・高速・ガソリン・レンタカー、移動時間。
 - 光熱・通信:二拠点分の基本料金、冷暖房費。通信もデュアルSIMやポケットWi-Fiの検討を。
 - 保険:火災・地震保険を二拠点で。水害・雪害のエリアは補償内容を確認。
 - 管理費用:郵便・宅配の転送、清掃・除雪・草刈りの外注、鍵管理。
 
一般的には、年間50~150万円程度の上乗せが発生しやすい印象です(距離・物件規模で大きく変わります)。“総コストで暮らしの満足が上回るか”が判断軸です。
4. 物件選びのポイント(都市×地方でチェックが違う)
都市側
- 通勤・保育・病院への時間。駅距離と混雑時間の実測。
 - 賃貸なら更新料、購入なら管理・修繕の健全性(議事録・長期修繕計画・積立金水準)。
 
地方側
- アクセス:最寄りIC・駅までの道路状況、冬季の除雪やチェーン規制。
 - インフラ:上水・下水・浄化槽、電気(太陽光・蓄電池の可否)。携帯電波。
 - ハザード:洪水・土砂・津波・雪。自治体のハザードマップ必見。
 - 法規:再建築可否(接道2m以上・42条道路)、セットバック、景観・農地転用・用途地域の制約。
 - 建物の健康:耐震・シロアリ・雨漏り・断熱。冬の暖かさ・夏の涼しさは電気代に直結。
 
5. 空き家の購入・改修で“損をしない”基本
- 再建築可否:これが価格と出口に直結。接道と用途を最優先で確認。
 - 改修費の目安:屋根・外壁・水回り・断熱で数百万円~。構造・シロアリがあるとさらに加算。
 - 助成金・減税:空き家改修、移住促進、断熱改修の補助を自治体と国で確認。
 - 管理の仕組み:遠隔地なら見回り・草刈り・雪かきの外注先を確保。
 
6. 二地域居住の税・手続き(ざっくり把握)
- 住民票は原則、生活の本拠に一つ。もう一方は別荘(セカンドハウス)扱いに。
 - 固定資産税は所有者に課税。都市計画税の有無や税額は自治体で異なります。
 - ふるさと納税・住民税の扱いは住民票のある自治体が基本。那須町のようにアプリ等で二拠点居住者の把握や特典を設ける例も(出展記事参照)。
 
7. どう始める?(失敗しにくい順番)
- 体験ツアー・短期滞在:季節を変えて複数回。平日・雨・雪の日も。
 - 賃貸で試す:1年住んでから購入すると、改修の要不要がはっきりします。
 - 購入・改修:助成制度と工務店の実績を確認。総コスト(購入・改修・維持)で判断。
 
8. まとめ:二地域居住は「豊かさ」×「手間」。数字と現地感覚の両方で決める
二地域居住は、自然や地域とのつながりを増やし、暮らしを豊かにします。一方で、コスト管理・移動・家の維持という“手間”も増えます。総コストと現地の生活のしやすさを同じ重さで比べれば、後悔は減ります。迷ったら、自治体の相談窓口や体験ツアー、無料の空き家相談(例:フォーラムや自治体窓口)を活用し、段階的に進めましょう。
出展:
朝日新聞デジタル「「二つの拠点で生活する魅力を」二地域居住フォーラム 東京で初開催」(2025/9/26)

