【出典】読売新聞「外国人の帰化要件を厳格化、在留期間は倍の10年以上に…納税の確認期間も1年分から5年分に」(2026年3月27日)
法務省は、日本国籍を取得する「帰化」の審査について、2026年4月から運用を厳格化する方針を示しました。
在留期間は従来の5年以上から、原則10年以上へ。さらに、納税状況の確認は直近1年分から5年分へ、社会保険料の納付状況も直近1年分から2年分へと広がります。
一見すると、これは国籍や在留に関する制度の話であり、不動産とは距離があるように見えます。
しかし不動産鑑定士の立場から見ると、この見直しは住宅市場、とくに都市部の賃貸・購入需要にじわじわ影響する可能性があります。
帰化要件の厳格化は「居住の長期化」を前提にした制度変更
今回の見直しで重要なのは、帰化の前提として「日本で長く安定して暮らしていること」が、より強く求められるようになった点です。
在留10年以上、複数年にわたる納税と社会保険料の確認という条件は、単に日本に住んでいるだけでは足りず、継続的に働き、納税し、生活基盤を築いていることを見ようとする内容です。
これは裏を返せば、外国人の日本での居住が、より「短期滞在」ではなく「中長期の生活設計」に寄っていく可能性を示しています。
不動産鑑定士の視点① 賃貸市場では「安定入居者」の評価が高まる
不動産市場でまず影響が出やすいのは賃貸住宅です。
貸主が重視するのは、家賃をきちんと払い、長く住む入居者かどうかです。
帰化や永住を視野に入れる層は、住民税や社会保険料の支払い履歴が重要になるため、結果として生活基盤を崩しにくい入居者層になりやすい面があります。
そのため、都市部では今後、外国人入居者の中でも「短期滞在層」と「定着志向層」の差がよりはっきりしていく可能性があります。
不動産鑑定士の視点② 住宅購入は「投資」より「定住」に近づく
住宅購入にも間接的な影響があります。
これまで、外国人による不動産取得は「投資」や「資産保全」の文脈で語られることが多くありました。
しかし、帰化や永住を見据える層にとって住宅は、値上がり益を狙う商品というより、生活の拠点としての意味を持ちやすくなります。
不動産鑑定士として見ると、こうした需要は価格を一気に押し上げるというより、実需として市場を下支えする力になりやすいのが特徴です。
ただし、都心マンション高騰の主因とまでは言えない
ここで注意したいのは、帰化要件の厳格化だけで不動産市場が大きく変わるわけではないという点です。
都心部の住宅価格や賃料を動かしている主な要因は、
- 建築費の上昇
- 用地不足
- 都心部への人口集中
- 再開発によるエリア価値の上昇
などです。
今回の制度変更は、それらの大きな流れの中で、外国人需要の「質」を少し変える要素と見るのが妥当です。
不動産鑑定士の視点③ これからは「誰が買うか」より「どう住むか」が重要
不動産市場では、「外国人が買うかどうか」だけが注目されがちです。
しかし本当に重要なのは、その人が日本でどのように暮らし、どれだけ地域に定着するかです。
短期の売買や投機であれば価格を揺らしやすい。
一方で、長期居住を前提とした実需は、地域の賃貸市場や住宅需要を安定させます。
今回の見直しは、この「定着」の条件をより厳しくするものです。
市場に与える影響は急激ではありませんが、じわじわ効いてくるタイプの制度変更といえます。
まとめ
帰化要件の厳格化は、国籍制度の話であると同時に、日本で暮らす外国人に対して「より長く、安定して、社会に根を張ること」を求めるメッセージでもあります。
不動産市場の視点で見れば、これは外国人需要を減らすというより、短期的な流動需要から、中長期の定住需要へと重心を移す動きとして捉えるべきでしょう。
不動産価格は制度だけでは動きません。
しかし、制度が「どんな人が残る市場か」を変えることはあります。
今回の見直しは、その入口にあたる動きと見るのが自然です。
【出典】
読売新聞
「外国人の帰化要件を厳格化、在留期間は倍の10年以上に…納税の確認期間も1年分から5年分に」
https://www.yomiuri.co.jp/national/20260327-GYT1T00188/

