兄弟や親族同士で不動産を相続・共有している場合、「賃貸に出して収益を得たい」という希望がありながらも、意見の対立や意思決定の難しさから一歩が踏み出せないケースは少なくありません。しかし、共有名義でも上手に協議し、トラブルを回避しながら賃貸運用を成功させる方法は存在します。本記事では、不動産鑑定士・宅地建物取引士としての知見を活かし、共有名義物件で安心して賃貸収入を得るためのポイントを解説します。共有者全員がメリットを享受できるよう、ぜひ参考にしてください。
共有名義の賃貸運用が難しいとされる理由
まず、なぜ共有名義の不動産を賃貸に出すのが難しいといわれるのでしょうか。その理由を整理してみます。
- 意見調整が必要:賃貸契約の締結、家賃設定、修繕計画など、重要な意思決定ごとに共有者全員の同意が求められる
- 責任の所在が曖昧:管理費や税金負担、トラブル対応など、どこまで誰が責任を負うのかが不明瞭
- 分配ルールの不透明さ:賃貸収入を各共有者に分配するときの計算方式やタイミングで揉める可能性
こうした課題を放置すると、賃貸運用どころか共有者同士の関係が悪化し、物件の資産価値が損なわれる結果にもつながります。
トラブルを回避しながら賃貸収入を得るための5つのポイント
共有名義でも安心して賃貸運用を行うには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。以下では、実務的に効果が高い5つの対策を紹介します。
1. 共有契約(共有協定)を結ぶ
最初に行うべきは、共有者同士での協定書(共有契約)の作成です。賃貸に出す際のルールを明確にし、トラブルを未然に防ぐための「共有者間の約束ごと」を書面化します。
- 各共有者の持分割合と賃料分配方法
- 修繕費や固定資産税の負担割合
- 管理業務の担当者および責任範囲
- 将来的に売却を検討する場合の手続き
これらを明確に規定しておけば、「私は全然使っていないのに、なぜ負担しなければならないの?」という対立を最小限に抑えられます。必要に応じて、弁護士や不動産鑑定士のアドバイスを受けながら作成すると安心です。
2. 管理会社を活用してプロに任せる
共有名義の物件を賃貸運用する際には、管理会社の選定が大きなカギを握ります。特に、以下のようなメリットが得られます。
- 集金代行・クレーム対応:入居者からの家賃やトラブルへの対応を専門家に任せられる
- 修繕やメンテナンスの手配:緊急時にも迅速に対応してもらえる
- 契約更新や退去手続きのサポート:法律に基づいた適切な処理が期待できる
管理会社を通すことで、共有者が直接入居者とのやりとりを行う必要が減り、意思決定の手間を軽減できます。ただし、管理会社の費用やサービス内容を共有者全員で理解し、承諾しておくことが重要です。
3. 不動産鑑定士の評価を参考に賃料設定
賃貸物件の家賃を設定するとき、近隣相場を基準にするのは一般的ですが、共有名義特有のリスクを踏まえた家賃設定が必要になる場合もあります。例えば、築年数や設備の老朽化状況、周辺の賃貸需要だけでなく、修繕計画や管理費用などを総合的に考慮しないと、収益が想定よりも低下する可能性があります。
そこで、不動産鑑定士の適正家賃評価や調査結果を参考にすると、家賃の設定や収支シミュレーションをより正確に行えます。また、共有者同士が「高すぎる・安すぎる」と揉めるリスクを減らす効果もあります。
4. 持分譲渡のルールをあらかじめ定める
共有名義のまま賃貸に出していても、将来的には誰かが持分を売却したいと考えるかもしれません。第三者への持分譲渡が行われると、新たな共有者が増え、合意形成がさらに難しくなるリスクがあります。
そのため、あらかじめ「持分を他人に売却したい場合には、まず他の共有者に優先的に買い取る権利を与える」などの優先交渉権を取り決めておくと、予期しないトラブルを防げるでしょう。
5. 定期的なミーティングでコミュニケーションを図る
共有名義での賃貸運用は、時間とともに状況が変わることが多いです。定期的に共有者同士がミーティングを行い、下記のような情報共有や意見交換をする習慣をつけると、問題の早期発見と解決がしやすくなります。
- 収支報告(家賃収入、管理費、修繕費など)
- 修繕計画やリフォームの提案
- 今後の運営方針(家賃の改定や売却検討など)
オンライン会議を活用するなど、物理的な距離に左右されずコミュニケーションを図る工夫も有効です。
賃貸収入を巡る税金と注意点
共有名義で賃貸収入を得る場合、税務面でもいくつか注意点があります。特に、家賃収入が発生すると、所得税や住民税、さらには個人事業税(条件により)などの納税義務が発生することがあります。以下では、押さえておきたいポイントを説明します。
1. 収入の按分方法
共有名義の不動産から得た賃料は、持分割合に応じて各共有者の収益となるのが一般的です。たとえば、土地や建物を1/2ずつ共有している場合、それぞれが家賃収入の半分を所得として申告する必要があります。
ただし、共有契約で特別な取り決めをしている場合や、誰かが管理・運営業務を多く担っている場合は、別の分配ルールを設定することも可能です。ただし、税務署への説明が必要になるので、安易な変更は避け、専門家に相談してください。
2. 経費の配分
賃貸経営では、不動産取得税や固定資産税、管理費、修繕費など様々な経費が発生します。これらも基本的には持分割合で負担するか、管理・運営の実態に合わせて負担割合を設定します。
費用負担の根拠や計算方法を明確にしておかないと、後から「自分はあまり使っていないのに費用が多い」という不満が出る原因になります。
3. 申告漏れや税率誤りに注意
共有者ごとに申告を行うため、各自が正しい所得金額を把握していないと申告漏れや誤りが生じやすくなります。結果として、追徴課税や延滞税が発生するリスクも。
とくに、他の収入(給与所得や事業所得など)がある方は、賃貸収入を合算した際に所得税の税率が上昇する場合があるため、事前にシミュレーションをしておきましょう。
まとめ
共有名義でも賃貸収入を得る方法はあるものの、意思決定の難しさや負担配分をめぐるトラブルなど、クリアすべきハードルは少なくありません。以下の5つのポイントを押さえれば、トラブルを回避しながら安定的な家賃収入を目指せます。
- 共有契約を結び、役割や賃料分配・費用負担ルールを明確にする
- 管理会社の活用で専門的対応を任せ、共有者の負担を減らす
- 不動産鑑定士の評価を参考に、適正家賃や修繕計画を立てる
- 持分譲渡の優先交渉権など、将来的なリスク回避策をルール化する
- 定期的なミーティングで情報共有し、早期に問題を発見・解決する
さらに、税務面の正確な申告と費用負担の明確化が欠かせません。専門家(弁護士・税理士・不動産鑑定士など)との連携を早めに行うことで、共有者全員が納得したうえで賃貸収入を得られる体制を整えましょう。共有名義でも正しい準備と協力体制があれば、安定的な不動産収益を享受することは十分に可能です。
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