相続が発生したとき、遺産に多額の借金や管理負担の大きい不動産が含まれる場合、「相続放棄」という選択肢を検討する方は少なくありません。しかし、実際には共有名義になっている不動産をただ手放すのは、本来得られたはずの利益や節税の可能性を逃してしまうおそれがあります。親族や兄弟姉妹との共有であるために煩雑な印象を抱きがちですが、正しい知識と対策を講じれば節税をしながら資産を守ることが可能です。本記事では、不動産鑑定士・宅地建物取引士の観点から「相続放棄がもったいない」具体的な理由と、共有不動産で損しないための節税術を解説します。
共有名義の不動産を相続放棄してしまうリスク
相続放棄そのものは、マイナスの遺産を避けたり、管理が難しい不動産から解放されたりするメリットがあります。一方で、以下のようなリスクやデメリットが大きいことも見逃せません。
1. 本来得られるはずの資産を丸ごと手放す
相続放棄を選んでしまうと、その遺産に対する権利を完全に失います。もし共有名義の不動産に潜在的な資産価値があれば、後から「手放さなければよかった」と後悔するかもしれません。なかには、賃貸に出せば十分な収益が見込める物件も存在します。
2. 共有者との関係悪化
相続放棄をすることで、他の共有者に管理や費用負担がのしかかる結果となり、親族間のトラブルが引き起こされるケースもあります。特に親や祖父母の思い出が詰まった不動産の場合、感情的に大きなしこりを残すことも。
3. 税務面でのメリットを失う
不動産を保有しているからこそ活用できる特例や控除が数多く存在します。小規模宅地等の特例や借家建付地など、相続税の評価額を大幅に下げる仕組みもあるため、安易に放棄することで多くの節税メリットを捨ててしまう可能性があります。
共有不動産の相続で活用できる代表的な節税策
次に、共有状態の不動産を相続した際に使える節税策をいくつか見てみましょう。上手に活用すれば、大幅に相続税や譲渡所得税の負担を減らすことができます。
1. 小規模宅地等の特例
被相続人が居住していた宅地や事業用宅地を相続する場合、条件を満たせば最大80%の評価減が適用される特例です。共有名義でも、相続人が実際に居住を継続するなどの要件を満たせば適用される可能性があります。節税効果が極めて高いので、相続放棄をする前に必ずチェックしましょう。
2. 借家建付地としての評価減
もし相続した不動産を賃貸に出している場合は、借家建付地としての評価減を受けられる可能性があります。借地人(賃貸借契約の借主)がいれば、所有者が自由に利用できる権利が制限されると考えられ、評価額が下がる仕組みです。共有名義でも適用されるケースがあり、相続税の負担を抑える効果が期待できます。
3. 不動産鑑定士の評価で共有持分の評価減
共有不動産は「単独では処分しづらい」という理由で評価額が下がる傾向があり、実務では不動産鑑定士が個別の事情を踏まえて評価を行うことが多いです。客観的な評価を提示することで、税務署ともスムーズに交渉しやすくなります。
共有名義を活かすor解消する?失敗しない選択肢
相続のタイミングで、共有名義を維持するか解消するかは大きな分かれ道となります。それぞれのメリット・デメリットを踏まえた選択が不可欠です。
1. 共有契約でルールを明確化して維持する
兄弟姉妹などで「思い出のある物件だから残しておきたい」という意向がある場合、共有契約を結んで管理費や修繕費の負担、売却時のルールなどを明文化すると良いでしょう。明確な取り決めがあれば、税金負担や収益分配でのトラブルを最小化できます。
2. 他の共有者に買い取ってもらい単独所有へ
不動産を実際に活用したい人がほかの共有者の持分を買い取る形で、単独所有に移行するのも一つの手です。単独所有に近ければ、意思決定が早くなり、賃貸や売却などの活用がしやすくなります。ただし、買い取り価格をめぐる対立を防ぐために不動産鑑定士の評価を用いると安心です。
3. 早期売却で収益を確保
相続後にすぐ売却し、売却益を分配する形もあります。不要な共有状態を作らず、税制特例の適用や譲渡所得税の優遇などを考慮しながら売却すれば、各相続人が現金を得てスムーズに財産を分割できる可能性が高いです。
トラブルなく節税するための実務ステップ
共有名義の不動産を相続し、損をしないためには、以下のような実務ステップを踏むのがおすすめです。
1. 相続発生前のコミュニケーション
親が健在であれば、生前贈与や遺言書を活用し、そもそも不要な共有を避ける道を探れます。また、家族間で「将来の相続はどうするか」など早めに話し合い、財産を把握しておきましょう。
2. 不動産鑑定士・税理士のアドバイス
相続税と不動産評価の知識は複雑です。不動産鑑定士に適正な評価を依頼し、税理士と連携して相続税・譲渡所得税のシミュレーションを行うことで、節税策を検討しやすくなります。
3. 共有契約または持分統合の検討
共有名義を維持するなら、共有契約を結び、管理や費用負担、売却時の手続きなどをルール化します。解消するならば、持分買い取りなどで単独化しておくと後々の節税や売却がスムーズです。
まとめ
「相続放棄したほうが楽なのでは?」と考える方も多いかもしれませんが、共有名義の不動産を正しく活用すれば、思わぬ節税や収益獲得のチャンスが隠れています。大切なのは、
- 相続発生前から生前贈与や遺言書で不要な共有を極力回避
- 不動産鑑定士・税理士のサポートを受け、相続税や譲渡所得税の優遇措置をフル活用
- 共有者同士で協定を結び、管理や売却のルールを明確化
- 持分買い取りや早期売却などの方法で資産を最大限に活かす
相続放棄する前に、本当に手放す価値がないのか、節税策が存在しないのかを再確認してください。意外と大きな資産価値や税メリットを見落としているかもしれません。
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