親から相続した実家や、兄弟姉妹で共同出資した土地・建物など、複数名義で所有する共有不動産は、ちょっとした意見の食い違いが大きなトラブルに発展しやすいもの。そんな中でもスムーズに管理・売却・賃貸を進めたいのであれば、早めに共有契約(共有協定)を結んでルールを文書化することが大きな助けになります。本記事では、不動産鑑定士・宅地建物取引士の観点から、共有契約のメリットや具体的な作成ポイントを解説し、家族間の揉め事を回避する方法を紹介します。
なぜ共有契約が必要なのか
共有不動産でよくあるトラブルとして、下記のようなケースが挙げられます。
1. 修繕費用や税金の負担でもめる
固定資産税や大規模修繕費をどのように分担するのか、「住んでいる人が多く払うべき」「利用していないから払いたくない」といった対立が起こりがちです。
2. 売却・賃貸の意向が合わない
売却を望む人と、思い入れが強く手放したくない人、賃貸に出したい人など、意見の食い違いを調整するのは容易ではありません。
3. 他の共有者に勝手に持分を売却される
法律上、共有者は自分の持分だけを第三者に売る権利があります。これが一方的に行われると、新たな共有者が加わり、さらなるトラブルに発展するケースも。
共有契約(共有協定)で防げるトラブル
共有契約とは、共有者同士で不動産の管理・運用・処分のルールを定めた文書です。これをきちんと作成することで、多くのトラブルを事前に回避できます。
1. 管理費や税金の負担割合を明確化
「持分割合に応じて負担する」「利用頻度が高い人は多めに負担」など、具体的なルールを協定に盛り込むことで、日常的なコスト負担の不公平感を解消します。
2. 売却時の意思決定プロセスを規定
共有物を売るときには、全員の合意が必要となりますが、共有契約で「過半数の同意があれば売却可能」「反対者には持分の優先買い取りを提案する」といった手順を前もって定めておくと、スムーズに結論を出せます。
3. 持分の処分に関する事前ルール
一部共有者が自分の持分を第三者に勝手に売ってしまうことを防ぐため、「他の共有者へ優先交渉権を与える」「事前に書面で通知しなければならない」などの条項を盛り込めます。
共有契約の主な項目
実際に共有契約を作成する際、どのような項目を盛り込めばよいのでしょうか。以下に具体的な例を挙げます。
1. 目的・趣旨
「この契約は、共有物件の管理・運用・処分に関するルールを定め、共有者間のトラブルを防ぐためのもの」という旨を明確に記載します。
2. 各共有者の持分と権利義務
共有者ごとの持分割合や役割分担(管理担当、財務担当など)を決めます。誰が税金や保険の納付を行うかも明記すると良いでしょう。
3. 費用負担・収益分配の方法
固定資産税や修繕費、賃貸収入の分配を持分に応じて行うのか、利用頻度や管理労務を加味して行うのかなどを細かく決めます。契約書に計算式や分配のタイミングを入れておくと後から混乱しません。
4. 処分・売却・持分譲渡の手順
「売却を行う際は共有者の何割の同意を必要とするか」「持分譲渡を希望する者はまず他の共有者に声をかける」など、意思決定のルールを規定します。万が一のトラブル発生時に備えて、調停や仲裁の利用なども盛り込むことがおすすめです。
実践例:共有契約でトラブルを回避したケース
ある兄弟姉妹4人が相続で実家を共有した例では、最初に共有契約を作成し、以下のルールを設定しました。
- 家の管理は近隣に住む長男が担当し、費用は持分割合で負担
- 家を売却する場合、全員の3分の2の同意をもって実行可能
- 持分を外部に売る際は、他の共有者が優先的に買い取る権利を持つ
結果として、「自分は住んでいないから費用負担を減らしたい」「いずれ売りたい」という意見の対立を抑えながら、定期的に情報共有と調整が行われ、トラブルなく相続税の申告と管理ができたそうです。
手続きと専門家の利用
共有契約の作成やトラブルの防止には、以下の点も考慮するとより安心です。
1. 弁護士のチェック
法的拘束力を確実にするため、契約書は弁護士の確認を受けると良いでしょう。違法性や不当な条項がないかを専門家が判断してくれます。
2. 不動産鑑定士の評価
価格設定や費用分担の根拠に、不動産鑑定士の客観的評価があると、共有者同士で「そんなに高い(安い)とは思わなかった」という感情的対立を抑えやすいです。
3. 共有物分割請求の回避
契約で取り決めたルールを破られた場合や重大な対立が生じた場合、共有物分割請求に発展する可能性があります。裁判で競売になると相場より大幅に安く売れ、全員が損する恐れが高いことを共有者全員で理解しておく必要があります。
まとめ
家族間の揉め事が起きやすい共有不動産の管理や売却には、共有契約という「ルールブック」が大きな威力を発揮します。特に以下の要点を守れば、トラブルを大幅に減らし、公平かつ効率的な不動産活用が期待できるでしょう。
- 誰が何をどのように負担し、利益をどう分配するかを明文化
- 売却や持分譲渡などの意思決定は必要な賛成割合や手続きを明確化
- 不動産鑑定士の評価や弁護士の確認で、契約の公正性と法的実効性を高める
- 全員が納得できる状態を作るため、作成時はしっかり話し合い、専門家を交える
- 後から文句や対立が出ないよう、調印した契約書を全共有者が保管
「家族間だから大丈夫」「口頭で合意すればいい」と考えていると、時間が経つほど意見の相違が表面化し、取り返しのつかないトラブルに発展しやすいのが不動産共有の現実。共有契約であらかじめルールを定め、トラブルを未然に防ぎながら大切な資産を守りましょう。
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