「うちは資産家ではないから大丈夫」と思っている方ほど、相続で大きなトラブルに巻き込まれるリスクがあります。実際、一般家庭においても相続財産の中心は「不動産」であり、その不動産が共有持分や再建築不可、底地といった訳あり物件である場合、手続きは一気に複雑化します。
 
女性セブンプラスの記事では「最強の遺言書」をつくる家族会議の重要性が指摘されています。しかし相続の現場に携わる立場から見ると、遺言書そのものの効力だけでは不十分であり、実際に「動かせる」資産設計ができているかどうかが最大のポイントです。
参照：女性セブンプラス｜【最強の遺言書】をつくる家族会議の開き方
 

◆ デジタル遺言書が変える相続の常識

2025年10月から「デジタル遺言書」の制度がスタートします。公正証書遺言を電子化し、PDFで保管・交付することが可能になり、リモートでの作成や電子署名も認められます。これにより、これまでハードルが高かった遺言書作成がより身近なものになります。
 
これは単なる利便性向上にとどまりません。遺言書の有無で、不動産相続のスムーズさは天と地ほど違うのです。特に、評価が難しい「再建築不可物件」や「底地」をどう扱うかは、遺言書の存在が明暗を分けます。制度の変化によって、これまで後回しにされてきた一般家庭でも「遺言書を残す」ことが当たり前になるでしょう。
 

◆ 家族会議の第一歩は「資産の見える化」

家族会議を開く際にやってはいけないのは、いきなり「誰がどの資産を取るか」という分け方の議論に入ることです。
まず必要なのは資産の全体像を正しく把握し、家族全員で共有することです。現金や株式だけでなく、不動産の市場価値、保険契約、さらには負債まで含めて「全体像」を把握することが前提になります。
 
例えば、相続財産に「再建築不可物件」が含まれる場合、固定資産税評価額を基準に分割を決めると大きな誤解を招きます。市場での売却価値は低く、均等分割が公平でなくなるのです。また、共有持分の不動産を評価額だけで分けると、実際には売れない資産を押し付けられることになり、不満の火種になります。
 
遺言書は「分け方」を決めるだけでなく、「なぜその分け方に至ったか」という説明責任を果たす必要があります。家族会議でこのプロセスを経ておくことが、将来の争いを防ぐための最大のポイントです。
 

◆ 訳あり不動産が「争族」を生む仕組み

相続不動産が売却困難な「訳あり物件」である場合、トラブルはさらに深刻化します。
相続人が「早く現金化したい」と考えても、再建築不可や借地権付きの底地はすぐに売却できず、話し合いが停滞します。一方で「自分が住み続けたい」と主張する相続人がいれば、代償金の算出を巡って不公平感が生まれます。
 
さらに時間が経つほど、空き家リスクや老朽化による資産価値の下落が進み、固定資産税などの負担が続きます。結果として「誰も得をしない遺産」が家族を争わせるという悪循環に陥るのです。
 

◆ 家族会議＋専門家で「実行可能な遺言書」に

「最強の遺言書」とは、法律的に有効であるだけでは足りません。資産の現実を踏まえ、実際に実行できる内容でなければ意味がありません。
 
ここで欠かせないのが専門家の存在です。司法書士や行政書士だけでなく、不動産鑑定士や訳あり不動産の専門会社を交えることで、初めて「机上の理想ではなく、実際に動かせる遺言書」が成立します。
 
株式会社SAでは、共有持分・底地・再建築不可といった複雑な不動産を扱ってきました。例えば、20年以上売却できなかった底地を整理し、数ヶ月で現金化に成功した事例や、相続人同士が対立していた共有名義の不動産をスピード解決した事例があります。こうした現場経験があるからこそ、机上のプランではなく「解決に至るシナリオ」を描くことができるのです。
 

◆ 相続を「争族」にしないために

これからの時代、相続はすべての家庭に降りかかる「共通課題」です。デジタル遺言書の制度化は、国がその現実を認め、円滑な承継を後押ししようとしている表れです。
 
しかし、制度が整っても、不動産の現実を無視すれば争いは避けられません。大切なのは、資産の見える化と公平な共有、そして不公平感を残さない設計です。共有持分の買取や再建築不可物件の売却など、具体的な出口戦略を持つことが未来の安心につながります。
 

◆ まとめ

「最強の遺言書」とは、単なる法的な文書ではありません。不動産を含めた資産を正しく評価し、家族が納得する形に整理したものこそ、本当に役立つ遺言書です。
 
相続を「争族」に変えないために。今こそ家族会議を開き、資産の全体像を共有し、専門家の力を借りながら「実行可能な遺言書」を準備していきましょう。
 

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