空き家を相続し売却をする場合、3年以内に売却することで税制優遇を受けられるようになります。
そのため、売却のタイミングが合うのであれば3年以内の売却を目指すべきです。
また、空き家を相続し売却する過程で様々な税金が発生することも知っておく必要があります。
この記事で空き家を相続し、売却に至るまでにかかる税金とおすすめの節税方法について解説します。
空き家を相続し売却した際にかかる税金の種類
空き家を相続すると「相続税」がかかり、相続登記のタイミングで「登録免許税」がかかります。
さらに不動産売買契約を締結する際には「印紙税」がかかり、売却によって利益を得ることができれば譲渡所得税も納税対象です。
この章ではこれらの税金について、詳しく解説します。
相続税
相続税は基礎控除を差し引いた取得金額が課税額となり、基礎控除は3,000万円+相続人×600万円です。
たとえば4人家族で配偶者と子ども2人が相続人の場合、4,800万円が相続課税額から控除されます。
そして、残った取得金額に対して以下の速算表に当てはめた額が課税されることになります。
法定相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | – |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
【参考サイト:No.4155 相続税の税率|国税庁】
登録免許税
空き家を相続することが確定すると相続登記をすることになり、これを登録免許税と呼びます。
登録免許税は固定資産税課税台帳に記載の課税額に対し0.4%を掛け合わせることで算出することができ、さらに司法書士への報酬が加算されます。
こうした登記は自分で実施することもできますが書類の不備や記載ミスがあると何度もやり直しすることになり、多くの工数がかかります。
また相続登記は令和6年4月1日より義務化され、相続を知った日から3年以内に登記しなければ10万円の過料対象となってしまいます。
そのため相続登記は司法書士に依頼するのがおすすめです。
【参考サイト:登記申請手続のご案内 (相続登記②/法定相続編) 法務省民事局】
印紙税
不動産売買などで使用する契約書には印紙を貼付することが義務付けられており、売買金額によって印紙の額は変動します。
印紙税はこの印紙を購入して契約書に貼付し、消印することで納税をみなされます。
万が一貼付し忘れた場合は3倍の額を追徴課税されるため、注意が必要です。
売買価格 | 印紙代 |
---|---|
10万円を超え50万円以下 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下 | 60,000円 |
5億円を超え10億円以下 | 160,000円 |
10億円を超え50億円以下 | 320,000円 |
50億円を超える | 480,000円 |
なお、印紙税は不動産売買契約書の原本を保有する人が支払うため、複写を保管する場合は免税となることも知っておくべきポイントです。
【参考サイト:不動産売買契約書の印紙税の軽減措置|国税庁】
譲渡所得税
譲渡所得税は不動産を売却して利益がでた際に発生する税金となっており、課税額は次の計算式で算出することができます。
売却価格-売却時の諸費用-購入価格-購入時の諸費用
たとえば購入価格1,000万円購入時の諸費用100万円の物件を800万円で売却した場合、利益が出ていませんので譲渡所得税はかかりません。
ただし購入価格が1,000万円だと証明できる書類がなければ800万円の5%が購入価格となるルールがあるため、660万円が課税額となってしまいます。
このことからも、不動産を相続する際には売買契約書や支払った諸費用の領収書も取得しておくことが大切といえます。
一方、税率は5年以内であれば39.63%で5年を超えると20.315%となることから、売却する期間が5年目付近の場合には注意が必要です。
相続取得してから3年以内に売却すると使える節税特例
相続で取得した不動産を売却して利益が出た場合、物件価格と取得価格によっては譲渡所得税が高額になってしまいます。
そのため売却したくてもできないこともあり、その結果活用されていない空き家が増えてしまうことになります。
そこで、国税庁からはこのような税金の支払いが原因で空き家を手放せないケースに対し、一定条件をクリアすることで譲渡所得税の課税額を減らすことができる特例が公開されています。
「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」と「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」はどちらも減税効果が大きいことから利用できるかどうかを必ずチェックすべきですが、どちらも「相続してから3年以内に売却する」という条件があります。
つまり、譲渡所得税が高額になることが判明した場合、なるべく3年以内に売却することがおすすめといえます。
この章では国税庁が公開している情報に基づき、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」と「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」について詳しく解説します。
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
この特例は相続財産に対して相続税を支払った上で相続し、さらにその物件を売却した際に受けられる特例です。
この特例を受けるためには相続開始日から3年以内に売却を完了させる必要があり、確定申告で「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」と「譲渡所得の内訳書」を提出することで利用できます。
そのため書類をすぐにだせるよう、準備しておくことも大切といえます。
【参考サイト:No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁】
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
通称「空き家特例」と呼ばれるこの特例は一定条件を満たす空き家を売却することで、譲渡所得税課税額から3,000万円を控除することができる制度です。
空き家は被相続人が1人で住んでいて相続開始から売却まで空き家の状態が維持されており、さらに建物は昭和56年5月31日以前でなければなりません。
また上記状家に加え以下の要件をクリアする必要があることから、全ての項目に該当しているか入念にチェックすることをおすすめします。
・相続開始日から3年以内に売却を完了させること
・売却金額が1億円以下であること
・配偶者や親族への売却ではないこと
・マンションではないこと
【参考サイト:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁】
まとめ
空き家を相続し有効活用しないまま放置しておくと経年劣化によって資産価値が下がってしまうことから、空き家のまま放置するのであれば売却することがおすすめです。
また、空き家の売却は相続してから3年以内に売却することで節税効果の高い特例を利用することができ、売却後の手残り額を増やすことができます。
そのため適用要件を満たした空き家と取引条件になっているかチェックし、利用できる特例を把握した上で空き家を売却することが重要といえます。