不動産を相続するとき、土地や建物を複数の相続人で共有するケースは少なくありません。このとき、「共有持分」はどのように扱われるのか、気になる方は多いでしょう。例えば、「親が持っていた不動産の一部を相続したい」「兄弟で共有している物件の相続をどうするのか」など、さまざまな疑問が生じるかもしれません。
本記事では、共有名義の不動産に関する相続の基本や、共有持分だけ相続することは可能なのか、その具体的な手続きや注意点を初心者の方でも理解できるように丁寧に解説します。専門用語は極力わかりやすくし、ポイントを押さえてまとめました。ぜひ最後まで読んで、相続トラブルを未然に防ぎ、円滑な手続きを進める参考にしてください。
そもそも「共有持分」とは?
まず、共有持分についておさらいしましょう。共有持分とは、ひとつの不動産を複数人が所有しているときに、各所有者が持っている権利の割合を指します。たとえば、相続や共同購入によって、一つの土地や建物を「Aさん50%、Bさん30%、Cさん20%」のように分けて所有している状況です。
このような共有名義の不動産は、単独名義と比べて意思決定や売買の際に手続きが複雑になることが少なくありません。なぜなら、共有者全員の合意を得なければならない場面が多いからです。相続で共有状態になった場合も、誰がどのくらいの割合を相続するのか、具体的にどう扱うのかを明確にしておかないと、将来的なトラブルの原因になりかねません。
共有持分だけ相続することは可能?
結論からいうと、「不動産を丸ごと相続する」のではなく、「不動産の共有持分だけ」を相続することは原則的に可能です。相続は法律上、「被相続人(亡くなった人)の財産を相続人が承継する」制度であり、亡くなった人が所有していた共有持分についても、立派な財産の一部として扱われます。
ただし、共有持分を相続する場合には以下のような点を理解しておかなければなりません。
1. 法定相続分に応じた割合となる
相続が開始すると、相続人は民法で定められた「法定相続分」に基づいて遺産を分けることが基本です。遺言がある場合は、その遺言内容に従うことが優先されますが、遺言がない場合や遺言に別段の指示がない場合は、法定相続分に応じて分割します。例えば、配偶者と子どもが相続人であるケースだと、配偶者2分の1、子ども2分の1(子どもが2人なら1人あたり4分の1)というように分割するのが原則です。
2. 他の相続人と共有状態となりやすい
特定の不動産だけを単独で相続したい場合でも、他の相続人との話し合い(遺産分割協議)が必要となります。もし折り合いがつかない場合、結果的に「Aさん持分何分のいくつ、Bさん何分のいくつ……」という共有状態になりがちです。
この共有状態は後々の売却や建て替えなどの際に意思決定が難しくなるため、相続の段階でしっかり調整しておくことが重要です。
3. 「共有持分を相続しても使いにくい」という点に注意
不動産の共有持分だけを相続しても、そのままでは単独で自由に使うことが難しい場合が多いです。例えば土地の共有持分を持っているからといって、その土地全体を自由に賃貸に出せるわけではありません。共有者全員の合意が必要となるケースが多く、思いどおりに進まないこともあります。
具体的な相続手続きの流れ
不動産の共有持分を相続するとき、どのような流れで手続きするのでしょうか。ここでは、大まかなステップを整理してみます。
1. 相続人と相続財産の確定
まずは、誰が相続人になるのか(法定相続人の確定)と、どんな財産が遺産として存在するのかを調べることが最初のステップです。戸籍謄本や除籍謄本などを取り寄せて相続人の範囲を確定し、不動産登記簿や預貯金通帳などから財産をリストアップしていきます。
2. 遺産分割協議
相続人全員でどの財産を誰がどの程度相続するか、話し合いで決めます。この段階で「土地や建物の共有持分は誰が引き継ぐか」を明確にします。
もし、法定相続分の通りに分けても良いですし、話し合いで別の割合を決めることも可能です。ただし、相続人全員の合意が条件となります。また、遺言書が存在する場合は、その遺言内容が優先されます。
3. 遺産分割協議書の作成
話し合いの結果が決まったら、内容を遺産分割協議書という形で書面化します。これは相続手続きで最も重要な書類の一つです。
相続人全員の署名・実印が必要となりますので、不備のないように十分気をつけましょう。後々の登記申請や銀行手続きの際に提示することになります。
4. 相続登記の申請
不動産の名義変更には相続登記が欠かせません。法務局で手続きを行い、登記簿に新しい所有者や共有持分を反映させます。
相続登記には以下のような書類が必要です:
- 被相続人の戸籍謄本、住民票除票など
- 相続人の戸籍謄本、住民票
- 遺産分割協議書
- 固定資産税評価証明書
- 登記原因証明情報(遺産分割協議書が該当)
- 相続人の印鑑証明書
なお、法改正によって相続登記は将来的に義務化(2024年4月から)される見込みとなっています。早めに手続きを済ませることで、不要なトラブルを回避できます。
共有持分を相続したあとに考えられる問題点
共有持分を相続しても、「使い勝手が悪い」「意見が合わない」などの問題がしばしば起こります。ここでは、代表的なトラブル事例と対策を見てみましょう。
1. 売却の際の意思決定の難しさ
共有物件を丸ごと売却したいときでも、共有者全員の同意が必要です。誰か一人でも反対すれば売却できない場合があります。また、共有者によっては「相場より高く売りたい」「今は売り時ではない」といった意見の相違も考えられ、調整に時間がかかることがあります。
2. 修繕費用や維持管理費用の負担
建物のリフォームや補修、あるいは土地の管理費・税金など、さまざまな費用負担が発生します。これらの費用を誰がどの程度負担するかは、共有持分の割合だけでは決めきれないこともあります。実際の使用状況や各共有者の経済状況によって紛争が起こりがちです。
3. 使用方法の制限
共有持分を持っているだけでは、自分の好きなタイミングで土地や建物を勝手に改築・改装できません。重要な変更には共有者全員の合意が必要となるため、素早く決断できずにチャンスを逃す可能性も。賃貸収入を得ようとしても、反対する共有者がいれば先に進めないケースがあります。
相続した共有持分を円滑に扱うポイント
共有持分を相続した後、スムーズに運用・管理するためには、いくつかの工夫が必要です。トラブルを避けるためにも、以下のポイントを押さえましょう。
1. 遺産分割の段階で単独所有を目指す
可能であれば、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)の段階で、「この土地は長男が全部取得する」「代わりに預貯金は次男が多めに相続する」といった調整をして単独所有にしておく方法があります。共有状態を避けられるなら、それが一番トラブルを減らす近道といえるでしょう。
2. 共有者同士のルールを明文化する
やむを得ず共有となる場合は、後々の管理や費用負担について書面でルール化しておくと安心です。例えば、「修繕が必要になったら見積もりを取って共有者で折半する」「賃貸する場合は全員の合意が必要」など、具体的な運用方針を合意書として残しておきましょう。
3. 共有持分の売却や譲渡を視野に入れる
実際に共有となった場合、「使いにくい」「トラブルが多い」と判断したときは、共有持分を他の共有者に買い取ってもらうか、第三者へ売却するという選択肢もあります。ただし、第三者に売却すると、今度は知らない他人が共有者になる可能性があるため、さらに関係が複雑になるケースも。
一方、他の共有者が買い取ってくれるのであれば、その不動産は単独所有化できて管理しやすくなります。お互いにメリットがあるかどうか、よく話し合ってみましょう。
相続時にありがちなQ&A
共有持分を相続する際によく寄せられる疑問を、いくつかまとめてみました。
Q1:共有持分だけを放棄することはできる?
A:相続放棄は基本的に「一部の財産だけを放棄する」ことはできず、すべての相続財産を含めて放棄することになります。もし「この不動産の共有持分だけを放棄したい」という場合は、相続を受け取ったうえで、他の共有者に譲渡したり贈与する方法を検討してください。
Q2:相続登記をしないままでいるとどうなる?
A:相続登記をしなくても直ちに罰則があるわけではありませんでしたが、2024年4月以降は罰則が導入されます。さらに、名義が被相続人のままだと売却や担保設定などがスムーズにできず、将来的に相続人が増えることでトラブルも増大する可能性があります。早めに登記することが大切です。
Q3:共有持分を相続したくない場合は?
A:その不動産だけを相続しない方法(部分的な相続放棄)は原則できません。どうしても不要であれば、遺産分割協議の段階で他の相続人に譲ってもらうか、いったん相続した後に共有者へ譲渡・売却するなどの手続きが必要になります。
まとめ
不動産の共有持分は、相続が始まった段階で自動的に発生することも多く、複数人で共有名義となると、その後の管理や売却、活用で多くのハードルが生まれる可能性があります。
しかし、相続手続きの早い段階で「単独所有を目指す」「共有のルールを明確化する」などの対策をとれば、後々のトラブルを大きく減らせます。大切なのは、相続人同士の話し合いと専門家への相談です。遺産分割協議では、自分だけでなく他の相続人にとってもメリットを考慮した提案をするのが円満解決への近道となります。
もし、不動産の相続で共有持分だけ相続することになった、あるいは共有状態の不動産をどう扱うか困っている方は、早めに司法書士や不動産鑑定士、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。適切なアドバイスを受けることで、リスクを最小限に抑えながら、最適な相続・活用方法を見つけられるでしょう。
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