相続や共同購入によって複数人で所有することになった不動産のなかには、誰も住む予定がないまま放置されているケースが少なくありません。共有者同士の意見調整が難航して「売却もできない、住む人もいない」という状況が続けば、固定資産税や維持管理費がかさむばかりで財産価値が下がってしまいます。しかし、共有不動産でも工夫次第で賃貸収入を得ながら節税につなげることは可能です。本記事では、不動産鑑定士・宅地建物取引士の立場から、誰も住まない共有名義物件を賃貸活用して収益化するための最新ノウハウと節税のポイントを解説します。
共有不動産を賃貸に出すメリットとデメリット
まずは、共有不動産を賃貸に出す際のメリット・デメリットを整理しましょう。
メリット
- 家賃収入が得られる:空き家のまま放置するより、資産を活かしてキャッシュフローを創出できる
- 固定資産税や管理費の負担がカバーできる:賃貸収入で諸費用をまかなえれば、共有者の出費負担が軽減する
- 老朽化防止:実際に人が住むことで建物が適切に維持され、空き家よりも管理状態が良好になりやすい
デメリット
- 共有者全員の合意が必要:家賃設定やリフォーム内容、入居者選定などで意見の不一致が発生しがち
- 収益分配・税務計算が複雑:持分割合での分配や必要経費の配分など、トラブルの火種になりやすい
- 管理責任が増える:共有者の誰が賃貸管理を主導するかで揉める場合も
最新ノウハウ:賃貸活用の具体的な方法
共有名義の不動産でも、以下のような方法を取り入れることで賃貸収入を確保しやすくなります。
1. 管理会社への一括委託
共有者それぞれがバラバラに管理を行うのではなく、管理会社へ一括委託する形が望ましいです。家賃の回収やクレーム対応、退去手続きなどをプロに任せることで、共有者同士の負担と対立を減らせます。
また、管理会社が中立の立場で収支を報告すれば、賃貸収入の分配に関しても透明性が高まります。
2. シェアハウスや民泊などの新形態も検討
近年は、シェアハウスや民泊(Airbnbなど)が流行しています。立地や建物の状況によっては、通常の賃貸よりも高い家賃収入が期待できるケースも。ただし、消防法や旅館業法、自治体の条例などの法的制限が厳しいため、事前調査が欠かせません。
共有名義の場合、より多くの書類や合意が必要になることを考慮し、弁護士や不動産鑑定士など専門家のアドバイスを受けると安心です。
3. マイナス要素の排除:リフォーム・クリーニング
空き家状態が長く続いた物件は、老朽化や衛生状態の悪化が進んでいる場合があります。入居者を確保するために、最低限のリフォームやクリーニングは行いましょう。共有者同士で費用負担をどう分担するかを決めたら、プロの業者に依頼し、賃貸市場で競争力のある物件に仕上げることが大切です。
節税の視点:賃貸活用で抑えておきたいポイント
賃貸運用を行うことで、不動産所得が発生します。一方で、経費計上の余地が増えるため、適切に手続きすれば節税につなげることも可能です。
1. 不動産所得の申告と経費の配分
共有名義物件の家賃収入は、通常、持分割合に応じて各共有者の収入とみなされます。経費(修繕費、管理費、減価償却費、ローン利息など)も基本的には持分割合に応じて配分されますが、実務ではどのように負担しているか、実態に即した計算が必要です。
もし不正な経費配分で申告を誤ると、追徴課税などのリスクがあるため、税理士に確認すると安心です。
2. 固定資産税・都市計画税の負担軽減
賃貸に出すことで、住宅用地の特例(建物がないと適用外になるケースあり)や、さらなる税制優遇が受けられることもあります。共有者間でしっかり話し合い、賃貸用の建物として扱えるなら、固定資産税負担を抑えられる可能性があります。
3. 相続時の評価減
賃貸中の不動産を相続する際は、借家建付地として通常より評価額が下がる制度があります。また、共有のままでも適切な管理をしていれば、流動性の低さを考慮して一定の減額を見込めることがあります。不動産鑑定士に依頼し、共有状態ならではの評価減を活用できないか検討してみましょう。
合意形成に必要な対策
賃貸運用を実行するには、共有者全員の合意が必要不可欠です。以下の対策を講じてスムーズな意思決定を図りましょう。
1. 共有契約(協定)の締結
誰が管理責任を負い、どのように収益を分配するかなど、共有契約として明文化しておくと後々のトラブルが激減します。特に、費用負担や今後の売却方針などを具体的に定めましょう。
2. 定期的な報告・連絡・相談
賃貸運用は、時間とともに修繕や更新などのイベントが発生します。定期的なミーティングやオンライン連絡をセットし、収支報告や今後の方針を共有者全員が把握できるようにしましょう。
3. 外部専門家を積極的に活用
法的な問題(賃貸借契約や相続登記、共有物分割など)や税務上の疑問が出てきたら、弁護士・司法書士・税理士・不動産鑑定士など専門家に早めに相談するのが賢明です。解決の先送りは、より深刻な対立を生む原因になります。
まとめ
共有名義の不動産でも、誰も住んでいない物件を賃貸に出すことで収益化し、税金負担を相殺することは十分に可能です。ただし、そのためには共有者全員の合意形成や適切な管理、税金面でのリスクを理解しておく必要があります。
- 管理会社の活用で運営業務をプロに任せ、共有者の負担を軽減
- リフォームや賃貸形態(シェアハウス、民泊など)の検討で収益性を高める
- 経費配分や減価償却などの税務処理を正確に行い、節税を狙う
- 共有契約を締結して責任分担や方針を文書化
- 必要に応じて弁護士や税理士、不動産鑑定士との連携を図る
これらの施策を組み合わせることで、誰も住まない共有不動産でも賃貸収益を得ながら賢く運用できるでしょう。
お問い合わせ
共有持分、共有名義、再建築不可、底地などの訳あり物件でお困りではありませんか?私たちは、どんなに複雑なケースでも迅速かつ丁寧に対応する専門チームを備えています。24時間365日、お気軽にご相談ください。
【24時間電話相談OK】TEL:03-6823-2420 【問い合わせフォーム】 https://sakk.jp/contact/
訳あり物件の可能性を見出し、解決へ導くプロフェッショナルチームがサポートします。お気軽にお問い合わせください!