不動産を共有名義で所有している場合、さまざまな理由から「自分の持分だけ売りたい」と考えることがあります。しかし、本当に共有持分だけを単独で売却することは可能なのでしょうか?
一般的な不動産売買では、物件そのものをまるごと売るイメージが強いかもしれませんが、「共有持分」の売却となると取引相手や手続きの流れが異なります。また、実際に買い手を見つけるうえでも注意すべき点がたくさんあります。そこで、本記事では不動産の共有持分を単独で売却できるかどうか、その具体的な手続きや注意点について、専門用語を極力避けながら初心者にもわかりやすく解説します。
共有持分をめぐるトラブルやリスクを理解して、賢く売却を進めるためのポイントをまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
共有持分とは何か?基本をおさらい
まずは、「共有持分」の基本的な概念を確認しておきましょう。
共有持分の定義
不動産を複数人で所有している場合、それぞれの所有者が持っている権利の割合を「共有持分」と呼びます。たとえば、3人で一つの土地を所有している場合、「Aさんが50%、Bさんが30%、Cさんが20%」というように分けて考えるイメージです。
このような状態を「共有」といい、共有者一人ひとりが「共有持分を持っている」ということになります。
共有持分の性質
共有持分を持っている人は、あくまでも不動産全体を共同で所有している立場にあります。しかし、自分が持っている「権利の割合」だけを単独で処分(売却や譲渡など)することは、原則として法律で認められています。
つまり、土地や建物そのものをすべて売るのではなく、「自分が持っている〇%の権利」を売ることができるというわけです。
共有持分を単独で売却することは可能?
結論として、「共有持分だけを単独で売却すること」は可能です。日本の民法上、各共有者は自分の持分について自由に処分できると定められています。具体的には、他の共有者の許可を取らずとも、自分の持分を第三者に売却すること自体は法律上問題ありません。
しかし、実際の不動産市場においては「共有持分だけ」の売買は一般的ではなく、買い手が見つかりにくいのも事実です。また、売却したとしてもさまざまなリスクが伴います。以下では、そうした具体的な注意点を詳しく見ていきましょう。
共有持分の単独売却で注意すべきこと
1. 買い手を探すのが難しい
通常の不動産売買では、「土地や建物をまるごと手に入れたい」というニーズが大半です。共有持分だけを購入する場合、その共有不動産を自由に使えるわけではなく、他の共有者との協議や合意が必要になる場面が多く出てきます。
そのため、共有持分を買うことにメリットを感じる投資家や専門家は限られています。買い手が見つかったとしても、市場価格よりかなり低い金額しか提示されないケースが多いです。
2. 共有者間の関係悪化リスク
法律上は自由に売却できるとはいえ、他の共有者に何の相談もなく第三者に持分を売ってしまうと、相手方が突然その物件の「共有者」として参入することになります。
もともと親族や知人同士で共有していた場合、新しく加わる第三者との関係がぎくしゃくしたり、共有者同士の意思決定がスムーズにいかなくなることも考えられます。これによって長期的なトラブルが発生するリスクも否定できません。
3. 売買後の通行・利用権の問題
共有持分を買い取った第三者が、その不動産を自由に利用できるかというと、そう簡単ではありません。たとえば敷地を分割して専有部分として使うには、他の共有者の合意や法的な手続きが必要です。勝手にフェンスを立てたり、建物を建てたりすることはできないケースがほとんどです。
そのため、買い手が実質的な利用価値を得にくい可能性があり、結果として「安く買い叩かれる」「そもそも買い手がつかない」という状況につながりやすいのです。
4. 税金や費用負担の精算
不動産を売却するときには、譲渡所得税(売買による利益が出た場合)や印紙税、仲介手数料など、各種コストが発生します。また、共有持分を手放した後も、固定資産税の負担や管理費などをどう分担するかで揉めることがあるかもしれません。
売却条件だけでなく、税金・費用面の清算についてもあらかじめ計算し、十分に理解した上で進めることが重要です。
共有持分の売却をスムーズに進めるためのポイント
1. 他の共有者に買取を打診する
まず考えられるのは、他の共有者にあなたの持分を買い取ってもらう方法です。共有者がすでに不動産を利用していたり、資産価値を認めている場合は、外部の第三者に売却するよりも話がまとまりやすいことがあります。
この場合、共有者間で合意できる価格を設定しやすく、売却後の人間関係の面でもスムーズです。ただし、相手に十分な資金がなければ成立しない可能性があります。
2. 不動産会社や専門家に相談する
共有持分の売却経験が豊富な不動産会社や、専門的な知識を持つ不動産鑑定士・弁護士などに相談してみるのも有力な方法です。彼らは市場の状況や法的なリスクを踏まえたうえで、最適な売却手法や価格帯を提案してくれます。
また、共有持分専門の買取業者というのも近年増えており、一般の投資家では敬遠されがちな「共有持分」でも積極的に買い取る業者が存在します。迅速に現金化したい場合は、こうした専門業者を検討する価値があるでしょう。
3. 共有物分割請求を検討する
もし他の共有者との協議が難航しており、「どうしても売却できない」という場合は、共有物分割請求の手段も検討できます。これは裁判手続きによって共有関係を解消し、不動産を単独名義にしたうえで売却するなどの方法です。
ただし、裁判所が「競売による売却」を命じる可能性もあり、市場価格より低くなってしまうケースが多いので、最終手段と考えたほうが良いでしょう。
4. 価格査定と売却時期を慎重に判断する
共有持分の売却を成功させるには、市場相場や不動産の需要状況を十分にリサーチし、適切な時期に売りに出すことが大切です。とくに、不動産市況が下落傾向にあるタイミングでは買い手がつきにくく、売却価格も期待できません。一方、都市部の需要が高まっているエリアや再開発エリアなどは、持分でも一定の需要が見込まれる場合があります。
また、「相場そのものの価格」と「共有持分の割引」を考慮しながら、現実的な売り出し価格を設定するのがポイントです。
共有持分売却の流れと必要書類
共有持分の売却も、通常の不動産売買に近い流れで進めます。ただし、持分売買ならではの注意点があるため、一連のプロセスを把握しておきましょう。
1. 事前調査・相談
- 不動産登記簿謄本を取り寄せ、持分割合や共有者を確認
- 固定資産税評価証明書などを用いておおよその評価額を把握
- 専門家(不動産鑑定士、不動産会社)に相談し、価格査定
2. 売り出し・交渉
- 他の共有者に買取を打診するか、第三者への売却を検討
- 不動産会社や買取業者に声をかけ、条件交渉を進める
3. 契約締結
- 売買契約書を作成し、売主・買主が署名捺印
- 印紙税の納付、手付金の受領
4. 決済・引き渡し
- 残代金の受領と同時に共有持分の移転登記手続きを行う
- 仲介手数料や司法書士報酬の支払い
このように、契約締結から決済・引き渡しに至る流れは、通常の不動産売買とほぼ同じです。ただし、共有持分の売買契約書には「何分のいくつの持分を売却するか」を正確に明記する必要がある点が大きな特徴といえます。
共有持分売却に関するよくある質問
Q1:他の共有者の許可は必要ないの?
A:法律上は、自分の持分だけを売却するのに他の共有者の許可は必須ではありません。ただし、第三者が共有者として加わることで、後々トラブルが発生しやすくなります。できれば円滑な人間関係を保つためにも、事前に共有者へ相談することが望ましいでしょう。
Q2:価格はどのように決まる?
A:不動産鑑定士や不動産会社に依頼し、周辺相場や固定資産税評価額などを踏まえて査定してもらうのが一般的です。ただし、共有持分の場合は通常の市価よりも値下がりする(共有持分割引)傾向があります。買い手にとって使い勝手が悪くリスクが高い分、安価でなければ売れないことが多いのです。
Q3:共有持分を売った後、建物や土地の管理費用はどうなる?
A:持分を手放した後は、基本的に所有者ではなくなるので管理費や税金の負担義務はなくなります。ただし、売却前に未納の費用がある場合や、売却時の固定資産税の清算などでトラブルが生じる可能性があるため、あらかじめ共有者や買主との間でルールを決めておくと安心です。
Q4:競売や共有物分割請求はどう違う?
A:共有物分割請求は、裁判を通じて「共有関係を解消」する手段です。その結果、裁判所が不動産を分割するか、売却して代金を分配させるかを判断します。競売は通常の市場売買より安値になることが多く、共有者全員にとって不利益が生じがちです。
したがって、できる限り任意での売買や共有者間の話し合いを優先し、裁判は最終手段と考えるのが一般的です。
まとめ
不動産の共有持分は法律上、単独で売却が可能とはいえ、買い手探しの難しさや価格面のハードル、他の共有者とのトラブルリスクなど、注意すべき点がたくさんあります。スムーズに売却を進めるには、他の共有者への買取打診や専門家への相談を経て、適切な価格設定や契約手続きを整えることが重要です。
もし、共有持分を売りたいものの「なかなか買い手がつかない」「他の共有者と相談がまとまらない」といったお悩みがある場合は、不動産のプロや弁護士、司法書士などの専門家の力を借りるのがおすすめです。早めに正しい知識とサポートを得ることで、リスクを最小限に抑えながらベストな選択をすることができるでしょう。
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