相続や共同購入によって複数名義になった不動産(共有不動産)を扱う際、資産の価値を正しく把握することは非常に重要です。しかし、「普通の不動産の査定」と「共有不動産の査定」とでは、評価方法が大きく異なる場合があります。特に、一般的に言われる“相場”と、不動産鑑定士が行う“鑑定評価”には大きな違いがあるのです。本記事では、不動産鑑定士・宅地建物取引士として、共有不動産の正しい評価とは何か、なぜ相場とは異なるのか、その理由を詳しく解説します。共有持分の売却や相続で悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧いただき、正確な情報をもとに最適な選択をしてください。
共有不動産と評価の基本
まず前提として、共有不動産とは、1つの不動産を複数人がそれぞれの持分割合で所有している状態を指します。相続などで形成されることが多く、「兄弟でそれぞれ3分の1ずつ所有」といったケースが典型例です。こうした不動産を売却する場合や、共有者同士で持分を買い取り合う場合、まず問題になるのが「この共有不動産(または共有持分)は、いくらの価値があるのか」という点です。
しかし、共有不動産の評価には通常の不動産以上に注意が必要です。なぜなら、共有人数や持分割合、他の共有者との協調関係など、多様な要因が価値を大きく左右するからです。たとえば、共有人数が多いほど持分の流動性は下がり、実際の売却価格は単独所有と比べて低く評価される傾向があります。
「相場」と「不動産鑑定士の評価」の違い
共有不動産を評価しようとするとき、多くの方はまず「相場はいくらか」を知ろうとします。相場とは、近隣で売り出されている物件や、同様の不動産の成約事例などから、おおむねの金額を推測する方法です。実際、インターネットの不動産ポータルサイトや不動産会社の査定を利用すれば、相場感を得ることは容易でしょう。
しかし、これらの「相場」はあくまで“単独所有での取引”を念頭に置いた価格感であり、共有不動産特有の制限—たとえば、他の共有者の同意なしには再開発や大規模リフォームを行えないなど—は十分に反映されていない場合が多いのです。
1. 相場とは
相場は、一般的に不動産市場が形成する平均的な価格帯を指します。物件の立地、築年数、広さ、設備などを参考に、不動産会社が「このくらいの金額なら売れる(もしくは買える)」という値段を算出します。
- メリット:簡単に把握できる、手軽に比較できる
- デメリット:共有特有の条件や物件の個別事情を考慮していない
2. 不動産鑑定士の評価とは
一方、不動産鑑定士が行う評価(鑑定評価)は、法律や公的基準(不動産の鑑定評価に関する法律、国土交通省の指針など)をベースに、対象物件の個別的要因や市場動向を総合的に考慮して算定します。
- メリット:共有持分や借地権などの特殊な権利関係も正確に反映される
- デメリット:評価に時間や費用がかかる(専門家への依頼が必要)
鑑定評価は相場よりも精密に計算され、価格算定の根拠が明確です。そのため、裁判所や金融機関など公的な機関でも説得力ある証拠として認められやすい特徴があります。
共有不動産の評価が相場と異なる理由
では、具体的にどのような要因によって、共有不動産の評価が相場と異なるのでしょうか。以下の要素が大きく影響します。
1. 利用制限が大きい
共有名義だと、物件のリフォームや売却など重要な決定を行うには全員の合意が不可欠です。合意が取れない場合、所有者が自由に活用できないため、実質的な市場価値が単独所有物件と比べて下がることが多いです。
2. 流動性が低い
共有不動産の持分だけを買いたいという需要は、一般的にはほとんどありません。たとえ場所や物件自体に魅力があっても、他の共有者との協調関係にリスクがあるため、買い手がつきにくいのです。その結果、相場よりも割安な価格になりがちです。
3. 他の共有者との関係性
評価額を算定する上で、不動産鑑定士は他の共有者の属性や意思決定のしやすさなど、通常の査定では考慮しない要素も検討することがあります。たとえば、共有者の一人が持分を勝手に担保に入れている場合などは、潜在的なリスクが高まるため、価格に反映されることがあります。
鑑定評価が必要なシーン
「相場」と「鑑定評価」は使い分ける場面が異なります。特に、共有不動産において不動産鑑定士の評価が必要とされるのは、以下のようなシーンです。
1. 持分の売買や相続分の調整
共有者同士で持分を買い取るケースや、相続で複数人に分割するケースなどでは、公正な価格算定が求められます。どちらかが高すぎる/安すぎる価格を主張すると、長期的な争いに発展する恐れがあるからです。鑑定評価を取得しておけば、納得感のある売買や分割が可能になります。
2. 裁判や調停での証拠
もし共有物分割請求などの裁判に発展した場合、鑑定評価書は裁判所が判断を下す際の重要な証拠となります。相場だけを根拠にしても、裁判所が必ずしも認めるわけではありません。客観的かつ専門的な評価書があることで、説得力が大きく高まります。
3. 融資や担保設定
金融機関が融資審査を行う際、共有不動産の担保価値を正しく評価しなければなりません。単独所有と比べて担保価値が下がることも多いですが、鑑定評価があれば金融機関としてもリスクを明確に把握しやすくなります。
共有不動産の評価をスムーズに進めるためのポイント
それでは、共有不動産の評価を円滑に進め、トラブルを回避するためには、具体的にどのような点に気をつければよいのでしょうか。以下のポイントを押さえておくと、よりスムーズな合意形成や資産活用が期待できます。
1. 共有者同士での情報共有
評価の前段階として、共有者同士が現状認識を揃えることが欠かせません。物件の状態、修繕履歴、賃貸の実績など、必要な情報を全員が共有し、評価に必要な資料をスムーズに提供できるようにしておきましょう。
2. 鑑定評価の目的を明確にする
鑑定評価を依頼する際は、「なぜ評価が必要なのか」をはっきりさせておくと、査定の精度や報告書の内容が明確になります。持分の売買交渉が目的なのか、相続分の計算が目的なのか、裁判での提出用なのかなど、目的によって鑑定のアプローチが多少異なるからです。
3. 専門家との連携
不動産鑑定士だけでなく、弁護士や税理士との連携も視野に入れましょう。法的な手続きや税務面の対応が絡む場合、鑑定評価だけでは解決できない問題が出てくることもあります。多角的なアドバイスを受けることで、共有者全員が納得できる結論に近づけます。
まとめ
共有不動産の評価は、単独所有の不動産とは異なる特有のリスクや制約が反映されるため、単に“相場”を見るだけでは正確な価値を算出できません。
- 相場は近隣事例や一般的な条件をもとに大まかな価格感を示すもの
- 不動産鑑定士が行う鑑定評価は、法律や公的基準に則り、共有特有の要素や権利関係を詳細に分析する
- 共有名義のままでは活用制約が大きく、流動性が低い分だけ価値は下がる傾向
- 持分売買や相続、裁判など公正な手続きが求められる場面では鑑定評価が強い説得力を発揮
こうしたポイントを踏まえて、共有者全員で情報を共有しながら、目的に合わせて適切な評価方法を選択することが肝心です。鑑定評価にかかるコストや手間を「もったいない」と感じる方もいるかもしれませんが、後々のトラブルや不適正な価格設定による損失を考えれば、結果的に大きなメリットをもたらすはずです。
共有不動産は感情や利害が複雑に絡み合うことが多いからこそ、客観的で専門性の高い評価を活用して、円満かつ確実な資産活用・処分を目指しましょう。
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