はじめに:共有持分保有のリスクを徹底解説
共有持分とは、一つの不動産を複数人で共有して所有権を持つ形態のことを指します。たとえば、親からの相続や、兄弟姉妹での共同購入などさまざまな理由で「共有」という形になる場合があります。しかしながら、一見すると「複数人で負担を分担できて便利」だと思われがちな共有持分には、実は多くのリスクや問題点が潜んでいます。
本記事では、不動産鑑定士・宅地建物取引士としての専門的知見をもとに、共有持分の保有によって具体的にどのようなリスクや問題が生じるのかを徹底解説します。不動産についての知識がない方でも理解できるよう、専門用語をできるだけ噛み砕きながら、詳細にわかりやすくご紹介していきます。最後までお読みいただくことで、共有持分にまつわる複雑な事情やリスクへの対策をイメージしやすくなるはずです。
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1. 共有持分とは何か?基本概念と特徴
1.1 共有持分の定義と概要
共有持分とは、民法上の「共有」という制度を指し、一つの不動産を複数の所有者がそれぞれの持分割合に応じて共有する状態をいいます。持分割合は「1/2」「1/3」「2/5」などと定められ、登記簿上でそれぞれの所有権の割合を明示する仕組みです。持分はあくまで「抽象的な割合」であり、不動産のどの部分をどの共有者が使用するのかを物理的に分けているわけではありません。これが後述する様々な問題やリスクの発生源となります。
1.2 共有持分が生じる主なケース
共有持分を保有する背景には、以下のようなケースがよく見られます。
相続: 親が亡くなった際に、子どもたち全員で不動産を相続する。
夫婦共有名義: 夫婦が共同で住宅ローンを組んで自宅を購入し、それぞれの名義で持分登記をする。
共同投資: 複数の投資家が一緒に資金を出し合い、不動産を購入する。
親族や友人同士での購入: 分譲マンションや土地を共同で購入し、持分を分ける。
一見すると合理的なようにも見えますが、共有であるがゆえの制限やリスクを正しく把握しておかないと、後々トラブルに発展することが少なくありません。
1.3 共有持分の法的性質
民法において、共有物(不動産を含む)を管理・処分するには、共有者の数や行為の内容によって必要となる同意の範囲が異なります。たとえば、通常の管理行為(清掃、補修など)であれば過半数の同意でOKとされていますが、売却や大幅な改修工事など、共有物の処分や変更に当たる行為には原則として共有者全員の合意が必要です。これが「共有物の流動性を下げる大きな要因」となり、様々な問題を引き起こします。
2. なぜ共有持分を保有すると問題が生じるのか
共有持分を保有すること自体は決して違法でも悪いことでもありませんが、不動産を共有するという仕組みには根本的な構造的リスクが存在します。ここでは、その根本原因を掘り下げます。
2.1 意思決定の複雑化
一つの不動産を複数人で所有しているということは、何か重要な決定を下す際に、すべての共有者の合意あるいは過半数以上の同意が必要になるということです。たとえば、売却のタイミング、賃貸に出すかどうか、リフォームを行うかどうかなど、あらゆる事柄が複数人の話し合いで決められます。共有者同士の利害や価値観が合わなければ、議論は長期化し、意思決定が先延ばしになりがちです。
2.2 使用方法をめぐる対立
共有不動産の使用方法が共有者ごとに異なると、対立が生じやすくなります。例えば、居住用に使いたい人と投資用に貸し出したい人、先祖伝来の土地を守りたい人と早く売却して現金化したい人など、考え方やライフスタイルが異なれば合意形成は困難です。こうした対立が長期化すると、不動産の適切な活用ができず、資産価値の維持も難しくなります。
2.3 コスト負担の不公平感
固定資産税や管理費、修繕費など、不動産を保有する限り必ず発生するコストがあります。共有者全員で費用を負担するのが原則ですが、どのように按分するか、また誰がいつ支払うのかなど、細かいルールづくりが必要です。利用頻度の違いや、一部の共有者の経済的状況などが絡むと「支払い能力が低い人が負担を拒む」「ほとんど使っていないのに負担だけはしなければいけない」などの不満が生じます。
2.4 流動性の低下
共有名義の不動産を処分・売却する場合、原則として共有者全員の合意が必要となります。このため、売り時を逃したり、買い手との交渉が進みにくくなったりする可能性が高いのです。もし共有者の一人が反対すれば、売却はほぼ不可能となるため、資産の流動性は単独名義より大きく下がります。
2.5 相続や代替わりによる共有者の増加
共有者の一人が亡くなると、その相続人が共有持分を引き継ぎます。結果として、共有者の数がどんどん増えていき、合意形成がますます難しくなる場合があります。とくに、遺言書などで単独承継が行われなかった場合に、共有持分が細分化され続ける現象が起こり、トラブルが深刻化しやすくなります。
3. 共有持分に関する代表的なリスクと問題点
では、実際にどのようなリスクや問題が発生するのか、具体的な事例を踏まえてみていきましょう。共有名義で不動産を保有する際に起こりがちなリスクや問題点を整理します。
3.1 売却に関するトラブル
共有不動産の売却は、共有者全員の合意がなければ実行できません。たとえば、「まとまったお金が必要だから売りたい」という人がいても、「先祖代々の土地だから残したい」という人がいると、合意に至りません。結果として、売却のタイミングを逸し、市場価値が下がってしまうリスクが高まります。
3.2 賃貸借契約を巡るトラブル
共有不動産を賃貸に出そうとする際も、共有者全員の合意が必要となります。もし一人でも反対する共有者がいれば、貸し出しができない場合もあります。さらに、賃貸に出した場合の賃料配分や税金の按分をめぐって、後々対立が起こるケースも少なくありません。
3.3 固定資産税や管理費の滞納
共有不動産のコスト負担は、原則として持分割合に応じる形が基本です。しかし、共有者の一人が経済的理由などで支払いを滞納すると、他の共有者に請求が回ってくることもあります。支払い能力の低い共有者がいる場合、滞納や不公平感が生じやすく、これが深刻なトラブルに発展します。
3.4 使用目的の衝突
先述の通り、「住みたい」「売りたい」「賃貸で収益を得たい」といった多様なニーズがぶつかり合うことで、使用目的をめぐる対立が起こります。とりわけ相続で取得した共有不動産の場合、親族間の感情的な問題や思い入れが絡み、さらに話し合いが難航することがあります。
3.5 共有持分の第三者への売却
共有者同士で折り合いがつかず、どうしても資金が必要となった場合に、一部の共有者が自分の持分のみを第三者に売却するケースがあります。しかし、共有持分だけを買いたい第三者は限られるため、通常の市場価格より大幅に安い価格で買い叩かれるリスクがあります。さらに、新たに共有者となった第三者との間で新たなトラブルが発生することも少なくありません。
3.6 訴訟リスク
共有者間で話し合いがまったくまとまらない場合、最終的に裁判所を通じて「共有物分割請求訴訟」という手続きを行うことがあります。これは、共有状態を解消するために物理的に不動産を分割したり、競売にかけたりする手続きです。裁判費用や時間的なコストがかかるだけでなく、競売にかけられた場合には市場価格より安く売却されてしまうリスクが高くなります。
4. 共有持分トラブルの代表的な事例
実際に共有持分を巡って起こりがちなトラブル事例をいくつかピックアップしてみましょう。具体例を知ることで、リスクの現実味や深刻さをよりイメージしやすくなります。
4.1 相続人が多数いる老朽家屋の場合
都市部にある古い家屋を、祖父母から数名の孫が相続したケースを考えてみます。孫たちはそれぞれ別の地域で暮らしており、実際に住みたい人はいませんが、思い入れがあるため誰も売却に積極的でない。一方、家屋は老朽化が進み、固定資産税や修繕コストがかさみます。何年も放置しているうちに建物が傷み、近隣から苦情が出るなど、管理面でも問題が発生し始めます。最終的に誰も負担をしたがらず、廃墟化し、資産価値も大幅に下がってしまうのです。
4.2 兄弟間での使用目的の対立
親から土地を共有で相続した兄弟が、「家を建て替えて住みたい人」と「賃貸アパートにして収益化したい人」に分かれて対立するケースがあります。どちらの案にもメリット・デメリットがあるため、話し合いがまとまらないまま年月だけが過ぎ、最終的に誰も行動せず土地が空き地のまま放置されることも。こうなると固定資産税や雑草管理などの問題だけが増え、資産の有効活用がまったくできない状況に陥ります。
4.3 第三者が新たに共有者になる場合
共有者の一人が、資金が必要になったため自分の持分のみを第三者へ売却するケースもあります。もともと親族や友人同士であれば多少の話し合いはできたものの、突然現れた第三者(投資家など)は「早く高く売却したい」「自分の方法で管理したい」といった全く異なる目的を持っていることが多いです。新たな共有者との間で意見が合わず、さらに深刻な紛争に発展する場合があります。
4.4 裁判による競売の末に安値で処分
共有持分が細分化している不動産をめぐって共有者同士が対立し、「共有物分割請求訴訟」にまで発展した事例では、裁判所が不動産の競売を命じることがあります。競売にかけられた不動産は一般的に市場価格を大きく下回る金額で落札されることが多く、共有者全員が結果的に損をしてしまうケースが後を絶ちません。
5. 法律上のルールと共有持分の規定
共有持分を巡るリスクを理解するためには、基本的な法律のルールも把握しておく必要があります。民法上の共有に関する規定は、問題解決の糸口となる場合もあれば、逆にトラブルの根源となる場合もあるからです。
5.1 民法における「共有」の取り扱い
民法249条以下には「共有」に関する規定が置かれており、共有物の管理・使用・処分などが定められています。代表的なものとしては次のようなルールがあります。
共有物の保存行為: 各共有者が単独で行うことが可能
共有物の管理行為: 持分の過半数による決定が必要
共有物の処分・変更行為: 原則として全員の合意が必要
上記の通り、処分や大きな変更には全員の同意が必要とされるため、売却や大規模リフォームなどは一人でも反対者がいれば行えません。
5.2 共有物分割請求権
民法256条によって、共有物をいつでも分割できる権利が各共有者に認められています。これを「共有物分割請求権」と呼び、他の共有者が反対しても裁判所に訴えることで分割を実現できます。ただし、実務上は物理的に分割できない不動産は競売にかけられることが多く、市場価格より安価で売却されるリスクが高いため、実行に移すには慎重な判断が必要です。
5.3 優先交渉権や買い取り権はない?
共有持分を第三者に売却するとき、他の共有者が優先的に買い取る権利(優先買取権)があるのではないかと誤解されることがあります。しかし、日本の民法には、マンションの区分所有法など特別法の例外を除いて、共有物に関して「他の共有者が優先的に買い取る」法的制度は明確には定められていません。そのため、共有者の一人が持分を勝手に第三者へ売却し、結果的に見知らぬ人が共有者として加わるケースも起こり得るのです。
6. 共有持分を保有することによる経済的リスク
共有持分は、権利関係だけでなく経済的な面でもリスクを伴います。ここでは、特に費用面や資産価値の下落リスクについて考察します。
6.1 保有コスト(固定資産税・管理費・修繕費など)の増加
不動産を保有している以上、固定資産税や管理費、必要に応じて修繕費が発生します。共有持分の場合、これらの費用をどのように按分して支払うのかを決めておかなければ、誰か一人が多く負担する事態や滞納が発生しやすくなります。特に収益性が低い物件や老朽化が進んでいる物件だと、持ち出しの負担ばかりが増え、経済的リスクが高まります。
6.2 資産価値の目減り
共有状態で管理が不十分なまま放置されると、建物の劣化や周辺環境の変化などで資産価値が下がりやすくなります。また、市場で不動産を売却する際に共有名義の状態だと、買い手が敬遠して価格が下がる可能性があります。共有トラブルによって売却時期を逃すことも含め、実質的な資産価値の目減りは大きなリスクです。
6.3 機会損失の発生
不動産を単独所有していれば、必要に応じてすぐに売却や賃貸などの決断を下すことができますが、共有名義の場合はそうはいきません。共有者の都合を待っているうちにタイミングを逸し、結果的に収益機会を逃すことも珍しくありません。これが長期的に続けば、保有コストだけが積みあがり、機会損失が増大していくことになります。
6.4 競売による大幅な損失リスク
共有物分割請求が行われ、競売という形で強制的に不動産を売却させられる場合、落札価格は一般市場で売るよりも低くなるケースが多いです。そのため、共有者全員が大きな損失を被るリスクが高まります。特に、すぐに換金したい人と長く保有したい人との利害が対立すると、この競売リスクが顕在化しやすくなります。
7. 相続が絡む場合の特有のリスク
共有持分の問題は、特に相続が絡む場合に顕著化しやすいです。親族間の人間関係や感情的要素が絡むことで、純粋な経済合理性だけでは解決しにくいケースが増えます。
7.1 遺産分割協議がまとまらない
相続が発生し、複数人の相続人が共有名義で不動産を取得することになった場合、遺産分割協議を進める段階で意見が対立するケースが多々あります。特に、「不動産は売りたくない」という感情的な意見が強い場合や、「すぐに現金化して借金を返したい」という経済的ニーズがある場合など、利害が一致しないと協議が長期化しやすいです。
7.2 代償分割や換価分割の難しさ
共有状態を避けるために「一人が不動産を取得し、他の相続人に金銭(代償金)を支払う」という代償分割の方法が考えられますが、実際には多額の資金が必要となります。相続人がその資金を用意できなければ、最終的に共有名義にならざるを得ないという状況が生まれます。また、不動産を先に売却して現金を分配する「換価分割」も、前述の通り共有者全員の合意が得られなければ実行できません。
7.3 親族内の感情的対立
相続に伴う共有不動産の問題は、家族や親戚同士の感情的対立を引き起こしやすいです。「介護をしていた・していなかった」「生前に援助を受けていた・受けていない」など、経済面だけでは割り切れない要素が絡むことで、話し合いが暗礁に乗り上げるケースもあります。結果的に裁判や調停にまで発展すれば、家族関係が破綻する可能性も否定できません。
7.4 「不在相続人」問題
相続人の中に海外に住んでいたり、連絡の取れない人物が含まれている場合もあります。不在相続人がいると、売却や管理行為に必要な同意を得られず、事態が進展しないリスクが生じます。最悪の場合、家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらうなど、非常に煩雑な手続きが必要になります。
8. 共有持分を保有してしまったときの対処策
ここまでご紹介してきたように、共有持分を保有することには多くのリスクや問題がつきまといます。では、すでに共有名義の不動産を持ってしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
8.1 共有者同士のルール作りと合意形成
最も望ましいのは、共有者全員で話し合い、不動産の利用や管理、費用負担について明確なルールを作ることです。誰がどのように使うのか、賃貸する場合の収益分配、修繕費の負担など、具体的な項目を決めて書面化しておくことで、後々のトラブルを大幅に減らせます。
8.2 共有物分割請求を視野に入れる
話し合いがどうしてもまとまらない場合、最終手段として「共有物分割請求」を検討することになります。裁判所の判断によって物理的に分割できるか、競売にかけるかが決定されますが、競売は資産価値が大きく下がる可能性が高いため、専門家のアドバイスを受けつつ慎重に進める必要があります。
8.3 他の共有者への買取交渉
自分が共有持分を手放したい場合、まずは他の共有者に買取を打診する方法があります。他の共有者にとっても、赤の他人が共有者になるリスクを避けられるため、話がまとまりやすいケースもあります。ただし、買い取り資金を用意できるかどうかが最大のカギとなります。
8.4 第三者への売却や専門業者の利用
他の共有者との交渉が決裂した場合、自分の持分だけを第三者に売却する選択肢もあります。しかし通常の不動産仲介会社では扱いにくいため、共有持分買取を専門に行う業者に相談するのが現実的です。売却価格が相場より安くなるリスクはありますが、早期に現金化できるメリットがあります。
8.5 専門家への早めの相談
共有持分に関する問題は法的・税務的にも複雑です。弁護士、不動産鑑定士、税理士などの専門家に早い段階で相談し、最適な解決策を模索することが望まれます。特に感情的対立がある場合は、第三者の専門家が間に入ることで冷静な話し合いが可能になるケースも多いです。
9. 共有持分のリスクを軽減するための予防策
共有持分のリスクは「共有してから」の対処だけでなく、事前の予防策によって大きく軽減できます。将来的に共有名義を回避するための方法や、共有に備えるための事前準備について解説します。
9.1 遺言書の作成
相続による共有を回避する最も効果的な方法の一つが「遺言書の作成」です。被相続人が生前に遺言書をきちんと作成しておけば、「誰がどの不動産を単独で相続するか」を明確に指定できます。これにより、共有トラブルを未然に防ぐことができるのです。
9.2 代償分割用の資金準備
親などが生前に資金を用意し、後継者となる人が不動産を単独で取得し、他の相続人には金銭を支払う「代償分割」の手段を取りやすくしておく方法です。相続時にまとまったお金がないばかりに共有になることを避けられるため、生前贈与などの制度を活用して資金を準備するケースもあります。
9.3 生前贈与・売買による名義整理
親や家族がまだ健在で、不動産活用の方向性がある程度定まっているのであれば、生前贈与や売買によって名義整理を進める方法があります。たとえば、すでに自宅を継ぐ意志のある子どもに早めに贈与しておけば、後々の相続時に余計な共有状態を生まずに済みます。
9.4 共有者間での書面による合意
やむを得ず共有となる場合でも、共有者間で管理や将来的な処分について書面(契約書や覚書)を作成しておくことが重要です。誰がどのような場合にどの程度費用を負担するのか、将来的な売却の判断基準などを事前に取り決めることで、トラブル発生時にも対処しやすくなります。
10. 税金・費用面の注意点
共有持分を保有すると、税金やその他の費用面でも注意が必要です。特に相続税や固定資産税、譲渡所得税などは、共有者ごとに計算や負担が発生するため混乱を招きやすいです。
10.1 相続税の按分と評価額
相続税の計算においては、不動産の評価額を持分割合に応じて按分し、それぞれが相続税を支払うことになります。しかしながら、不動産全体で見ると評価額が高くなる場合でも、共有持分だけを評価すると市場性が低いため、実際の売却価格との乖離が生じるケースが多いです。資金計画の見誤りを防ぐため、早めに不動産鑑定士などの専門家に相談するのが賢明です。
10.2 固定資産税の通知と支払い
固定資産税の納税通知書は通常、代表者に一通届きます。共有持分の場合、誰が代表者になるかでトラブルが生じることがあります。代表者が「自分ばかり支払っている」と感じると、後から他の共有者に請求してもスムーズに払ってもらえなかったり、対立の原因となりがちです。納税方法については共有者間で事前に取り決め、必要に応じて書面化すると良いでしょう。
10.3 譲渡所得税の取扱い
共有不動産を売却した場合、それぞれの共有者が持分に応じて譲渡所得税を計算します。もし自分の持分だけを売却する場合でも同様です。ただし、共有状態による売却価格の低下や競売による低額売却など、実際には想定よりも譲渡益が少ない場合が多く、税額計算が複雑になることがあります。
10.4 贈与税との関係
共有者同士で持分のやり取りをする場合、贈与とみなされる可能性があります。たとえば、一方が無償で持分を放棄した場合や、相場よりも著しく低い価格で譲渡した場合などが該当します。贈与税は高額になる可能性があるため、共有者間の名義変更には十分に注意しましょう。
11. 共有持分を活用するメリットはあるのか?
ここまでリスクを中心にお伝えしてきましたが、共有持分にもまったくメリットがないわけではありません。特定の条件下では、共同所有することによってコストや負担を分散できるメリットが得られる場合があります。
11.1 資金負担の軽減
不動産を単独で購入するには高額な資金が必要ですが、複数人で持分を出し合うことで一人あたりの資金負担を軽減できます。投資目的などであれば、リスクを分散する効果も期待できるでしょう。
11.2 管理の手間分散
不動産の管理には、税金の支払いや修繕手配、借り手やテナントとのやり取りなど、様々な手間がかかります。共有者間で役割分担することで、一人の負担が軽くなる場合もあります。ただし、明確なルールづくりが不可欠です。
11.3 家族内での資産共有
相続した不動産を「先祖代々守っていきたい」「複数人で活用したい」という思いから、あえて共有にすることもあります。たとえば、大きな実家を兄弟姉妹で交代で利用したり、親族間でイベントスペースとして使うなど、家族のコミュニケーションを深める方法として機能する場合もあります。
12. 共有持分の売却方法と注意点
もしすでに共有持分を保有しており、「手放したい」と考えた場合、具体的にはどのような方法があるのでしょうか。ここでは売却手段と注意点を整理します。
12.1 他の共有者への優先打診
まずは他の共有者に対して自分の持分を買い取ってもらえないか打診するのが一般的です。共有者としても見知らぬ第三者が入ってくるリスクを避けられるため、円満解決しやすい方法といえます。ただし、買い取り資金が用意できるかどうかが課題となります。
12.2 第三者への持分売却
共有者間で買取の合意が得られない場合は、第三者に売却することになります。しかし、共有持分のみを購入したいという買主は非常に限られ、いたとしても安値で買い叩かれるケースがほとんどです。一般の不動産仲介会社では取り扱いを断られることも多いため、共有持分買取を専門に行う業者に相談するのが現実的です。
12.3 共有物分割請求による競売
共有者同士の話し合いが決裂し、自分の持分売却もままならない場合、裁判所に「共有物分割請求」を行って強制的に不動産を分割・売却(競売)させる方法があります。競売は一般的に市価よりも大幅に安い落札価格となる可能性が高いため、大きな損失を被るおそれがあります。最終手段として検討すべきでしょう。
12.4 持分買取業者のメリット・デメリット
持分買取専門業者を利用するメリットは、通常の市場では敬遠されがちな共有持分を、スピーディーかつ確実に売却できる点です。対してデメリットとしては、買い取り価格が相場より低くなる傾向があること、さらにその後、業者が他の共有者と交渉や法律手続きを進めるために新たなトラブルの火種になり得ることが挙げられます。
13. 共有持分を抱えたままにしないことが肝要
共有不動産におけるリスクは、時間とともに大きくなる場合が多いです。特に相続で取得した不動産を「何となく置いているだけ」という状態は、後々取り返しのつかないトラブルを招く可能性があります。
13.1 先延ばしの危険性
共有持分問題を先延ばしにすると、共有者の死亡や相続人の増加により所有者が増え、問題がさらに複雑化します。気づいたときには数十名以上の共有者が存在するケースもあり、合意形成はほぼ不可能になります。早めに状況を整理し、必要な手段を講じることが重要です。
13.2 適切な専門家に相談を
不動産の法律問題は複雑で、感情的要素が絡む相続などはさらに難易度が上がります。弁護士や不動産鑑定士、宅地建物取引士、税理士などの専門家に相談し、法的・税務的観点から最善策を検討することが不可欠です。放置せずに、まずは相談窓口にアプローチするところから始めましょう。
13.3 共有解消の選択肢を知る
共有状態を解消するには、他の共有者への買取、第三者への売却、共有物分割請求などいくつかの方法が存在します。それぞれにメリット・デメリットがあるため、どの手段が自分の状況に最適かを見極める必要があります。時間をかけて情報を収集し、納得のいく選択をすることが大切です。
14. まとめ
共有持分を保有することには、意思決定の複雑化や使用目的を巡る対立、売却や賃貸のハードルの高さ、相続人の増加による混乱、そして大幅な資産価値の下落など、実に多くのリスクや問題が潜んでいます。特に、家族間や親族間であっても感情的な対立が深まると、裁判や競売という望まない事態にまで発展し、結果的に全員が損をする可能性が高くなります。
一方で、初めから適切な対策を講じることで、共有に伴うリスクを軽減したり回避したりできることも事実です。遺言書の作成や生前の名義整理、共有者同士の明確なルールづくりなどが功を奏すケースもあります。また、すでに共有持分を保有している方は、先延ばしにするほど問題が深刻化していくため、できるだけ早い段階で専門家に相談し、最善の対処法を探ることが重要です。
不動産は高額かつ長期的に保有する資産であり、その管理や処分には多くの時間と手間、そして専門知識が求められます。共有持分によって引き起こされるトラブルは、一度発生すると解決までに大きな労力と費用がかかってしまいます。本記事で紹介したリスクや問題をしっかりと理解し、トラブルを未然に防ぐ、あるいは早期に解決に導くための行動を起こしてください。
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