相続や共同購入などによって、複数の人が同じ不動産を共有しているケースは珍しくありません。しかし、時間の経過とともに各共有者の考え方やライフスタイルが変化し、共有状態を維持することが難しくなることもあります。そんなときに検討されるのが「共有物分割請求」です。本記事では、共有物分割請求を検討するにあたって、まず知っておきたい基本的な知識と手続きの流れを、不動産鑑定士・宅地建物取引士の視点からわかりやすく解説します。
共有物分割請求とは
共有物分割請求とは、ひとつの不動産を複数人で共有している状態を解消するために、共有者の一人が共有の解消を訴えることです。民法では、共有者は「いつでも共有物の分割を請求できる」と定められており、共有状態を強制的にやめられる手段を提供しています。
相続で共有になった土地や建物、あるいは共同出資による不動産購入などでは、共有者間の意見が対立しがちです。持分の買取や協議による任意の売却ができない場合、最終的な解決策として共有物分割請求が行われることがあります。
共有物分割請求を検討する背景
なぜ共有物分割請求が必要になるのでしょうか。主な理由としては以下のようなものが挙げられます。
- 相続による共有化:遺産分割協議がまとまらず、やむを得ず共有にしてしまった
- 意見の不一致:売却したい人、賃貸収益を得たい人、自ら居住したい人など、活用方針がバラバラ
- 管理費や固定資産税の負担問題:維持費の配分に不満が出て、誰も費用負担をしない状態に
- 所有者間の関係悪化:コミュニケーション不足や過去の確執で協議が成立しない
こうした要因によって物件が活用されず放置されると、不動産の資産価値は下がり、固定資産税などの出費ばかりが増えてしまいます。最終的には裁判所を通じて共有を解消する手段が「共有物分割請求」というわけです。
共有物分割請求を行う前の基本知識
共有物分割請求を検討する前に押さえておきたいポイントをいくつか挙げます。これらを理解しておくことで、無用なトラブルや手続きの混乱を避けることができます。
1. 共有者はいつでも請求が可能
民法の規定によれば、共有者は他の共有者の意向に関わらず、いつでも共有物の分割を請求できます。これは、共有状態が永久に続くわけではなく、一人の共有者が望めば解消を求められるという重要な権利です。
ただし、相続開始から一定期間は遺産分割協議が優先される場合があるため、状況に応じて確認が必要です。
2. 分割方法は主に3つ
共有物の分割には、大きく分けて下記の3パターンがあります。
- 現物分割:土地を分筆するなど、物理的に不動産を分割して共有を解消
- 代金分割:物件を売却し、売却代金を共有者間で分配する
- 競売:裁判所で競売にかけ、落札代金を共有者間で分ける
実際には、不動産の構造や立地条件、共有者の意向などを考慮して決定します。競売は価格が安くなるリスクが高いため、任意売却や持分買取を模索するのが一般的です。
3. 裁判手続きには時間と費用がかかる
共有物分割請求を裁判所に申し立てる場合、弁護士費用・裁判費用・鑑定費用など、想定外の出費がかかる可能性があります。また、共有者間の対立が激しい場合は、長期化するリスクも考えなければなりません。
そのため、まずは任意交渉や調停など「話し合いによる解決」を試みることをおすすめします。円満にまとまる見通しがない場合に、最終手段として裁判を検討するという流れです。
共有物分割請求の手続きの流れ
実際に共有物分割請求を行う場合、どのようなステップを踏むのでしょうか。ここでは一般的な流れをご説明します。
1. 任意の話し合い・交渉
まずは、共有者同士で話し合い、売却や持分の買取など任意の方法で共有を解消できないか模索します。協議がまとまれば、裁判手続きを経ずに共有状態を解消できます。たとえば、一部の共有者が他の共有者の持分を買い取り単独所有にする、あるいは不動産全体を売却して代金を分配するなどの方法があります。
2. 調停や仲介機関の利用
話し合いが難航する場合、裁判所の調停や第三者機関の仲介を利用できます。調停では、裁判所に調停委員が立てられ、中立的な立場から共有者間の合意をサポートします。時間と費用を抑えつつ解決を図れるメリットがありますが、それでも合意に至らなければ裁判に進む可能性があります。
3. 訴訟(裁判)での共有物分割請求
最終的に共有者間の合意が得られなければ、裁判所に共有物分割の訴えを起こすことになります。裁判では、以下のような手続きを経て、判決によって分割方法が決定される流れです。
- 訴状の提出:分割を請求する側が裁判所に訴状を提出
- 証拠や主張の提出:不動産の評価額や共有の経緯、要望する分割方法などを示す
- 裁判所による審理:裁判官が証拠・主張を吟味し、和解の可能性を探る
- 判決の言い渡し:現物分割、代金分割、競売の中から最終的な方法が決定
ここで競売が選択されると、市場価格より低い価格で売却せざるを得ないことが多く、共有者全員にとってデメリットが大きい結果となりやすい点に注意が必要です。
共有物分割請求のメリット・デメリット
共有物分割請求は、共有状態を解消する確実な手段ですが、メリットとデメリットが存在します。事前に理解しておきましょう。
メリット
- 対立が長引いても、最終的には裁判所の判断で共有を解消できる
- 法律に基づいた公平な解決方法が得られる
- 競売になれば、強制的に不動産を売却して代金を分配できる
デメリット
- 弁護士費用や裁判費用などコストがかさむ可能性がある
- 裁判が長期化すると精神的負担が大きい
- 競売は市場価格より安価で落札されるリスクが高い
- 共有者間の対立が深刻化し、関係が修復困難になる場合もある
円満解決のためのポイント
できるだけスムーズに問題を解決し、余計な費用や対立を避けるために、以下のポイントを意識してみてください。
1. 不動産の客観的評価
共有物分割請求の前に、不動産鑑定士や不動産会社などで正確な査定を行い、物件の実勢価格を把握しておくと、共有者同士の合意形成が進みやすくなります。感情的な価値観だけでは話が平行線に陥りがちですが、客観的な数値があれば現実的な落としどころを見つけやすいでしょう。
2. 専門家との連携
共有者間の直接交渉で解決が難しい場合は、弁護士や司法書士、不動産鑑定士などの専門家を早めに活用することをおすすめします。法的手続きの流れや税務面、評価額の根拠などが明確になるため、交渉がスムーズに進むケースが多いです。
3. 話し合いの場を定期的に設ける
共有不動産の問題は、放置すればするほど感情的なしこりが生まれ、トラブルが深刻化しがちです。早めに定期的な話し合いを行い、「共有をどうするか」という論点を共有者全員で検討していく姿勢が大切です。将来的な相続対策ともあわせて見直すと、より効果的な解決が図れます。
まとめ
共有物分割請求は、共同で所有している不動産を「どうしても分けたい」「円満に話し合いが成立しない」といった状況で検討される法的手段です。以下のポイントを押さえておけば、スムーズな準備と円滑な手続きに役立ちます。
- 共有者はいつでも分割を請求できるが、時間や費用がかかる可能性がある
- 現物分割・代金分割・競売の3パターンがあり、競売は価格低下リスクが高い
- 調停や仲介を通じた円満解決をまずは目指し、それでもまとまらなければ裁判を検討
- 正確な不動産の評価と、専門家のサポートが合意形成を後押しする
共有状態が長引くほどトラブルの火種が大きくなり、資産価値も下がりやすいのが現実です。もし共有者間で問題がこじれ始めているなら、早めに専門家へ相談し、最適な解決策を見極めていくことが賢明です。
お問い合わせ
共有持分、共有名義、再建築不可、底地などの訳あり物件でお困りではありませんか?私たちは、どんなに複雑なケースでも迅速かつ丁寧に対応する専門チームを備えています。24時間365日、お気軽にご相談ください。
【24時間電話相談OK】TEL:03-6823-2420 【問い合わせフォーム】 https://sakk.jp/contact/
訳あり物件の可能性を見出し、解決へ導くプロフェッショナルチームがサポートします。お気軽にお問い合わせください!