親が認知症になって実家が空き家同然となってしまった場合、住んでいる場所から近ければ掃除や草むしりといった管理は可能です。
しかし遠方の場合は管理が難しく誰も住まないまま放置してしまうことになりますが、家は誰も住まない状態で長期間放置すると設備や配管が破損する可能性が高くなります。
さらに草が生い茂ることで害虫が発生し、火災のリスクも高まるため近隣住民からクレームが入ることもあります。
場合によっては自治体による強制解体や固定資産税優遇措置撤廃なども考えられるため、実家の活用方法を考慮しておくべきです。
この記事では親が実家を所有した状態で認知症となった場合の、活用方法や売却方法について解説します。
高齢の両親が実家を所有している人は、参考にしてください。
売却は所有者のみが実施できる
大原則として不動産の売却は所有者のみが実施することができ、親族であっても勝手に実家を処分することはできません。
そのため所有者が自分の意志で売却することになりますが、認知症が認められている状態での売却は本人の意志が確定していないことから売買が成立しないため、無効となってしまいます。
つまり、親が認知症になったタイミングでは原則売却することができず、実家を相続するタイミングまで待つことになるといえます。
しかし実家を維持する費用や工数が親族の負担になることから、この仕組み自体が近年問題視されています。
親が認知症になった場合の実家活用方法
実家に住んでいた親が認知症になり空き家になってしまった場合に備え、活用方法をイメージしておくことが大切です。
この章では具体的な活用方法について解説しますので、参考にしてください。
自己利用する
一番手間がかからないのが自己利用する方法です。
草むしりや家の修繕をする必要はありますが、住んでいる状態でメンテナンスできるため生活拠点からの往来がなくなります。
また家賃が発生しないという点もメリットとなることから、実家が空き家になった時点で生活拠点を移す人も多いです。
そのため、実家が空き家になることが分かった段階で移住の可能性を模索すべきといえます。
ただし勝手に実家にあるものを処分することはできないため、物が多い家に住む場合は生活できるかどうかの見極めが重要です。
そのまま放置する
生活拠点は簡単に変えられないためそのまま放置してしまうケースもありますが、この方法はおすすめではありません。
なぜなら家は経年劣化によって損傷することになり、メンテナンスしなければ資産価値が減少してしまうからです。
さらに空き家は不法侵入や害虫の発生、犯罪の拠点に使われるなど所有しているだけでリスクを抱えることになり、思い出の実家がトラブルの原因になることもあり得ます。
このようなリスクを避けるためにも、実家は空き家にせず有効活用するか処分すべきだといえます。
近所の人に貸す
売買と同様に第三者へ貸し出しするのにも本人の承諾が必要ですが、無償で提供する分には認められるケースもあります。
たとえば使っていない敷地を無償で駐車場として貸し出ししたり、庭の手入れをしてもらう代わりに庭を使ってもらう場合は、本人ではなく親族の承諾でも問題ありません。
そのため空き家になってしまう前に近隣住民へ相談することもおすすめです。
ただしあくまでも家賃が発生しない「使用収益」であって賃料が発生してしまうと賃貸借に関する権利が発生してしまうため民法上問題となってしまうため、注意が必要です。
親が所有している実家を売却する方法はある?
親が認知症になってしまうと所有している実家は売却することが難しくなってしまいますが、全く売却できないわけではありません。
この章では親が認知症でも実家を売却できる可能性について、解説します。
委任状を取得する
認知症は厚生労働省が公開している「認知症高齢者の日常生活自立度」でランクを計測することができ、ランクが低ければ十分に判断できます。
たとえばランクⅠの場合は「何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している。」と定義されることから、正しい判断で実家を売却することが可能です。
このことからも空き家になってしまった実家を売却するのであれば、認知ランクが低いうちに進めていくことをおすすめします。
また認知症のランクは低くても足腰が弱っていて移動できないケースも多く、その場合は委任状を取得することで親族が代わりに売買することができます。
このように、委任状を取得し親族や弁護士、司法書士が代理で契約する方法は有効的です。
成年後見人制度を利用する
成年後見人制度とは認知症などで成年被後見人である本人と家族の生活が困窮してしまった際に、成年後見人が代わりに不動産を売却して生活資金に充当する制度です。
この制度は家庭裁判所の許可や成年後見人の選出などステップが多いものの利用することで所有していない実家を売却できることができることから、親の認知症を疑うようになった時点で、検討しておくべき方法です。
なお、成年後見人制度を利用するためには裁判所と直接やり取りすることになるため、弁護士や司法書士などに委任することがおすすめです。
親が所有している実家の売却には注意点がある
成年後見人制度や委任状によって親が所有している実家を代理で売却することは可能ですが、長年住んでいない実家の売却は注意点があります。
この章では実家を売却する上で起こり得るトラブルや注意点について解説します。
現状を把握していないとトラブルが発生することがある
長年住んでいなかった実家を売却する場合、給湯器や水回り、配管の破損に気づかないことがあります。
また自然災害によって土砂が敷地に流れ込んでいたり、親族も知らない井戸が発見されることもあります。
こうしたポイントは不動産売買契約において告知事項となり、売主として買主に伝える義務があります。
こうした告知事項があるにも拘わらず気付かずに売買してしまい、引渡し後に買主が損害賠償を請求されるケースもあるため注意が必要です。
売買自体が無効になることもある
成年後見人制度を利用し家庭裁判所から許可を得た場合は問題ありませんが、委任状を取得して売買した場合は委任状の効力について注意すべきです。
委任状によって売買の代理自体は可能ですが、その間に売主の容体が急変し死亡した場合は委任状自体が無効となるため、その結果契約も無効となります。
この場合は法定相続人を集めて相続登記からやり直すことになるため、買主とトラブルになる可能性が高くなってしまいます。
親が認知症になった場合の実家売却は、買取がおすすめ
親が認知症になり処分を検討するのであれば、不動産買取がおすすめです。
なぜなら買取であれば委任状取得から1ヶ月かからずに売買契約締結と引渡しを実行することもでき、安心安全に取引できるからです。
また仲介による売却では買主から残置物撤去や確定測量といった条件を提示されることになりますが、買取は不動産のプロが買主になるため「現況」で引き渡すことができ、その結果諸費用を減らすことができます。
買取業者によっては親から取得委任状や司法書士、弁護士の手配なども全てお任せできることから、認知症になった親が持つ空き家の処分は買取を優先的に検討することをおすすめします。