株式会社SA|共有不動産の解決実績No.1

SOLUTION

トラブル解決 その他

2025年1月23日

不動産における「通行・掘削承諾」とは?承諾が得られない場合の売買リスクと対処法を徹底解説【専門家監修】

不動産の売買や開発を検討している際、「通行承諾」や「掘削承諾」といった言葉を耳にすることがあります。これらは、物件を利用または工事する上で不可欠な権利関係をクリアにするための書面や手続きのことであり、特に隣接地を通らないと道路に出られないケースや、地中に埋設された管や配管を設置・改修したい場合などに深く関わってきます。

一見すると難しそうに思えるこれらの承諾ですが、売主や買主にとっては、とても重要なポイントです。承諾が得られなかったり、不備があるまま売買契約を結んでしまうと、後々に大きなトラブルや損失が発生する可能性があります。そこで本記事では、不動産鑑定士・宅地建物取引士の立場から「通行・掘削承諾」の基礎知識を初心者向けにわかりやすく解説し、承諾が得られない場合に不動産売買で注意すべき点や対処方法を、詳しくかつ実践的にご紹介いたします。

これから不動産取引や開発を考えている方はもちろん、すでに問題を抱えている方にも役立つ内容です。ぜひ最後までご覧いただき、大切な資産を守り、円滑に活用するための参考にしてください。

1. 通行・掘削承諾の基礎知識

1-1. 通行承諾とは何か

通行承諾とは、他人の所有地を通行する権利を、地権者から承諾してもらうための書面や契約のことを指します。一般的には「通行承諾書」という形をとり、地権者(地主)が「一定の範囲内であれば、あなたの土地(建物)から当方所有の土地を通行しても構いません」という意思表示を示したものです。

日本の都市部や住宅密集地などでは、私道や他人の土地を経由しないと公道に出られない「袋地(ふくろち)」が存在します。そのような場合、通行承諾を得ていなければ、実質的には車の出入りや工事に必要な搬入ができず、不動産の活用が大きく制限されてしまいます。建築確認や融資審査などにおいても、この通行に関する権利が明確化されているかどうかは重要な審査項目となるのです。

通行承諾は口頭だけでも事実上の同意として機能するケースがある一方で、法的には書面で結ぶのが望ましいです。後々トラブルが起きたとき、口約束だけでは権利を証明しづらく、争いが長引くリスクがあります。そのため、不動産業界では書面化して押印(または署名)をもらうのが一般的です。

1-2. 掘削承諾とは何か

一方、掘削承諾とは、地中に埋設物(上下水道管、ガス管、電力ケーブルなど)を設置・改良・点検などを行うために必要な承諾のことです。特に道路の下や他人所有の土地の地中を通して管を引き込む場合は、土地の所有者や管理者の承諾が必須となります。

たとえば、新しく建物を建設する際や、設備を大幅にリニューアルする際には、給排水管やガス管、通信ケーブルなどを敷設・交換する必要があります。このとき道路管理者や他の地権者の許可が得られないまま工事を進めると、不法行為となり、行政処分や損害賠償を請求されるリスクがあります。

また、掘削承諾には、行う工事の範囲期間費用負担などの詳細を記載しておくことが重要です。曖昧なまま合意してしまうと、工事時にトラブルが起こり、追加費用や賠償問題が発生する可能性があります。そのため、こちらも書面化が不可欠となるのです。

1-3. 承諾の内容と「地役権」

通行や掘削といった行為について、恒久的な権利を設定する場合は、民法上の「地役権(ちえきけん)」を設定することがあります。地役権とは、「自己の土地(需役地)の便益のために、他人の土地(供役地)を特定の目的で使用できる権利」です。地役権を登記しておけば、土地が売買されてもその地役権は効力を失いません。

これに対して、通行承諾や掘削承諾だけでは、形式上は単なる許可契約にとどまっている場合が多く、地役権ほどの強い効力はありません。将来的な安定性権利保全を重視するのであれば、地役権の設定登記を検討することも選択肢の一つですが、その分費用や手間がかかるため、状況に応じて選択する必要があります。

2. 通行・掘削承諾の法的背景

2-1. 民法の「袋地通行権」について

民法には、通路がなくて道路に出られない土地(袋地)に関して、一定の条件下で周囲の土地を通行する権利を認める規定があります(民法210条など)。これを一般に「袋地通行権」と呼び、地権者の合意が得られなくても強制的に通行権を設定できる可能性を示すものです。

ただし、この袋地通行権を主張するには、あくまで通行が絶対的に不可欠であるということや、通行ルートが最も損害の少ない形であることなど、法律上の要件を満たす必要があります。さらに、地権者には相応の損失補償を支払うことが求められます。そのため、現実には簡単に行使できるものではなく、また訴訟リスクも伴うため、実務ではできる限り話し合い承諾書で解決するケースが多いといえます。

2-2. 道路法や建築基準法との関係

掘削承諾を検討する場合、道路法や建築基準法との関係を無視できません。公共の道路(公道)を掘削するには、国や自治体の道路管理者の許可が必要です。民間所有の私道であっても、道路として認定されている場合位置指定道路の場合は、管理者や他の所有者の同意を得る必要があります。

建築基準法では、建築確認申請の段階で敷地と道路の接道状況が適法かどうか、上下水道の引き込みは問題ないかといったことが審査されます。つまり通行承諾や掘削承諾が不十分な状態では、建築確認が下りない、あるいは将来のリフォームや増改築の際に問題が生じるリスクが高まります。

2-3. 通行・掘削承諾と契約の形式

通行承諾や掘削承諾は、厳密にいえば「許可」の一種ですが、実務上は契約書覚書の形で交わされることが多いです。両者の利害を調整し、期間範囲費用負担損害賠償などを定めたうえで、双方が合意して書面に署名・捺印することで法的拘束力を持たせます。

なお、地役権として設定し登記を行う場合は、さらに厳格な手続きを踏む必要があります。費用や登録免許税、司法書士報酬などがかかるため、不動産の価値将来的な利用計画に応じて検討すべきでしょう。

3. 通行・掘削承諾が得られない場合の不動産売買への影響

3-1. 借地借家法や周辺環境による制限

もし隣地所有者や道路管理者から通行・掘削承諾を得られない場合、建物を新築・増築する際のライフライン敷設搬入経路が確保できず、そもそも建築が不可能となるケースがあります。また、建物があっても車の出入りができず、売却価値が極端に下がることも考えられます。

借地借家法が絡むケースだと、地主との間で契約更新や転貸の問題が生じるときにも承諾の有無が大きく影響します。土地と建物の所有者が異なる状況で、掘削が必要なのに地主が許可しないとなれば、設備の老朽化などを放置せざるをえなくなるかもしれません。

3-2. 売買価格への大きな影響

不動産の売買価格は、物理的な要因だけでなく法的・権利的な要因によっても大きく左右されます。通行承諾が得られない場合は「実質的に道路に出られない土地」とみなされ、市場価値が大幅に下落します。掘削承諾が得られない場合も、設備の整備が難しく快適な生活が送れないリスクがあるため、買い手が付きにくいのが現実です。

また、金融機関の融資審査では、通行の確保設備工事の支障が大きい物件は担保価値が低いとみなされることがあります。そのため、ローンが組めない融資額が大幅に減額されるなどの問題が生じる恐れもあるのです。

3-3. 売買契約での説明義務と紛争リスク

宅地建物取引業法では、売買の仲介業者や宅地建物取引士は、重要事項説明の際に「通行承諾の有無」「掘削承諾の状況」「建築基準法上の接道要件」などを正確に説明する義務があります。もしこれを怠って契約を締結し、後から買主が承諾不可であることに気づいた場合、契約不適合(旧・瑕疵担保)の問題や損害賠償請求契約解除などのトラブルに発展する可能性があります。

売主側の立場でも、承諾を得ていない事実承諾を得られる見込みの有無を買主にきちんと開示することが必要です。仮に「通行承諾が得られなくても買主が納得している」という形をとる場合は、契約書にその旨を明記し、リスクを買主が承知の上で引き受けることを確認するようにしましょう。

4. 通行・掘削承諾を得られない場合の対処方法

4-1. 近隣との交渉と代償金の提示

最も現実的な解決策は、近隣地権者との交渉を粘り強く行うことです。通行や掘削によって生じる損害や迷惑を具体的に把握し、それに見合う形で代償金や補償を提示することで合意を得られる場合があります。金銭だけでなく、工事の際の安全対策工事後の原状回復をしっかり行うことを約束するなど、相手が納得しやすい条件を提示することが重要です。

なお、交渉が難航する場合や相手が法人(デベロッパーや管理組合)である場合は、弁護士不動産鑑定士の力を借りるとスムーズに話が進むケースもあります。専門家が間に入ることで、権利の範囲補償額について公平かつ客観的な判断を下せるからです。

4-2. 袋地通行権の行使・法的手段の検討

もし交渉が全く進展しない、または相手が法外な金額を要求してくるといった場合には、民法の袋地通行権を検討することも選択肢になります。これは、土地が袋地であることや通行が真に必要であることなどの要件を満たしていれば、裁判所を通じて認められる可能性があります。ただし、法手続きには時間や費用、精神的負担も大きく、相手との関係が決定的に悪化するリスクがある点には注意が必要です。

掘削承諾に関しても、公共機関を相手にする場合は、道路法に基づく手続き行政訴訟などを通じて争うことが考えられますが、一般個人のレベルではハードルが高いのが実情です。最終手段としての法的措置を視野に入れつつ、できる限り穏便に解決を図る努力を継続するのが得策といえるでしょう。

4-3. 代替ルートの確保や設備設計の見直し

場合によっては、別の経路を確保できないか、設備のルートを工夫できないかを検討するのも有力な手段です。たとえば、公共下水道が近い別方向の道路につながるなら、そちらから配管を引き込む。あるいは、電気設備なら電線を上空配線で回避できないかなど、工事費用はかかるものの承諾を得ずに済む方法が見つかるかもしれません。

もちろん、こうした代替策はコスト面で不利になる場合もありますが、長期的なトラブル回避法的リスクを考慮すると、結果的にメリットが大きいケースもあります。複数の工事プランを用意して、費用対効果法的安全性を比較検討するのがポイントです。

5. 不動産売買時のチェックポイント

5-1. 重要事項説明書で確認すべき点

不動産の売買では、重要事項説明書の内容を細かく確認することが不可欠です。特に、接道状況(道路法や建築基準法に適合しているか)、私道負担(私道の所有者や管理者の情報)、通行・掘削に関する権利関係などは入念にチェックしましょう。もし文面が曖昧だったり「承諾が取れていない」といった表現があれば、なぜなのかどのような影響があるのかを仲介業者や売主に具体的に説明してもらう必要があります。

5-2. 売買契約書の条項と解除条件

契約書の中で、「もし承諾が得られなかった場合、買主は契約を解除できる」「売主が承諾取得のために最大限努力する」などの条項が定められることがあります。売買契約書特約条項にこれらの文言を盛り込むかどうかによって、後日のトラブル対応が大きく変わります。

例えば、解除条件付きで契約を結べば、買主は承諾不可が判明した段階で契約解除ができるため、手付金違約金のリスクを負わずに済みます。ただし、売主の立場からすると、契約が白紙に戻るリスクがあるため、契約締結のタイミングや期間をどこまで譲歩できるかが交渉のポイントとなります。

5-3. 融資利用予定の有無と金融機関の対応

不動産購入時に住宅ローンを利用する場合は、金融機関の担保評価が通行・掘削承諾の有無で大きく左右されます。通行や設備敷設ができない物件は、担保価値が低いと見なされ、融資を断られる融資額が大幅に減額される可能性があります。買主としては、事前に金融機関と相談し、当該物件が融資対象となるかどうか確認しておくことが非常に重要です。

6. 通行・掘削承諾に関するQ&A

Q1. 通行・掘削承諾はどのタイミングで取得するのがベスト?

最も望ましいのは、不動産の売買契約を結ぶ前に承諾を確保しておくことです。そうすれば、買主も安心して購入の判断ができ、売主も後からトラブルになるリスクを軽減できます。ただし、先に契約が進んでしまった場合でも、特約条項などで「承諾取得を条件とする」旨を定め、一定期間内に取得できなければ契約解除ができるようにしておくのが現実的な落としどころといえます。

Q2. 地役権の設定と通行・掘削承諾の違いは?

地役権は民法上の物権であり、土地の登記簿にも登記できます。一度設定すれば、土地が売却されてもその地役権は消えません。これに対し、通行・掘削承諾は基本的に債権上の権利(契約や承諾書)にとどまる場合が多く、土地の所有者が変わると再度の合意が必要になる場合があります。将来にわたって安定的な利用を確保したい場合、地役権の設定を検討するメリットは大きいでしょう。

Q3. 通行承諾が得られない土地を購入してもよいの?

理論的には購入自体は可能ですが、活用が非常に制限されることを覚悟しなければなりません。将来、通行権を取得するために大きな交渉コストがかかるか、袋地通行権などの法的手段に訴える必要が出るかもしれません。結果として、融資を受けにくい再販売が難しいなどのデメリットも考えられるため、投資としての妙味はかなり低くなるのが通常です。

Q4. 掘削承諾が得られないときの代替策はある?

先述のように、他のルートで配管を通すことや地役権を別の場所に設定するなどの方法が考えられます。また、上空線での配線が可能な場合、屋内に給排水設備を引き直すなど技術的な工夫ができるケースもあります。費用と労力を天秤にかけながら、現実的な選択肢を探すのが重要です。

7. まとめ

不動産の活用や売買において、「通行承諾」や「掘削承諾」は非常に大切なポイントです。承諾が得られないままの物件は、事実上道路に出られない、ライフラインを引き込めないなど、根本的な問題を抱えてしまいます。その結果、資産価値の低下や、買主側の融資難航、さらには裁判やクレームといったリスクを避けられません。

こうしたトラブルを防ぐためには、事前の調査交渉が欠かせません。売買契約の前に通行・掘削に関する権利を確認し、必要があれば地権者との話し合いで合意を得ること。万が一合意が得られない場合は、袋地通行権などの法的手段や代替ルートの検討なども視野に入れる必要があります。重要事項説明や契約書でしっかり条項を整備し、買主・売主双方が納得できる形で進めることで、後々の紛争リスクを最小限に抑えられるでしょう。

不動産は高額かつ長期的に保有する資産でもあるため、ほんの小さなミスや見落としが、大きな損失につながることも珍しくありません。ぜひ専門家のサポートを積極的に活用しながら、通行・掘削承諾や権利関係をクリアにして、安心・安全な不動産取引を実現してください。

お問い合わせ

共有持分、共有名義、再建築不可、底地などの訳あり物件でお困りではありませんか?私たちは、どんなに複雑なケースでも迅速かつ丁寧に対応する専門チームを備えています。24時間365日、お気軽にご相談ください。

【24時間電話相談OK】TEL:03-6823-2420 【問い合わせフォーム】 https://sakk.jp/contact/

訳あり物件の可能性を見出し、解決へ導くプロフェッショナルチームがサポートします。お気軽にお問い合わせください!

キーワード

カテゴリ

まずはお気軽に
ご相談ください。

お客様のお悩みをしっかりお伺いし、プロの視点で解決の糸口を見つけます。

24時間電話相談OK
03-6823-2420
24時間受付中
お問い合わせフォーム
友達登録で簡単
LINEで無料相談
株式会社SA