相続や共同購入で不動産を共有していると、「売りたい人」「住み続けたい人」「賃貸で収益化したい人」など意見がバラバラになることは珍しくありません。さらに、近隣トラブル(騒音や境界問題、立退きなど)を抱えている場合は、売却のハードルが一気に上がります。しかし、不動産鑑定士・宅地建物取引士の観点から見ると、共有者の反対や近隣クレームがあっても、適切な手段を講じれば相続税の負担を抑えながら円満に売却する道が拓けるのです。本記事では、そんな“両立回避”を叶えるための具体的勘所を解説します。
共有名義の不動産が売りにくい原因
共有名義の物件では、売りたいと思っても自分ひとりでは決められないため、下記のような問題が発生しやすいです。
1. 全員の同意が必要
民法上、共有不動産の処分には共有者全員の合意が不可欠です。1人でも反対すると売却できません。「話が進まない」「感情的な対立」が起こりがちです。
2. 相続税や管理費の負担に温度差
相続税の納税や固定資産税・修繕費の分担で意見が対立することも。使っていない共有者ほど、「なぜ費用を出さなきゃならないの?」という不満を抱きやすいのです。
3. 近隣トラブルが面倒だから動きたくない
境界問題や騒音クレームなど、近隣との対立があると「今は売却するタイミングじゃない」と先延ばしにしがち。その結果、老朽化が進み、相続税評価は高いまま、売り時を逃す悪循環に陥る可能性があります。
近隣トラブルと相続税を同時に回避するポイント
共有者が反対しても「大丈夫」と言えるのは、専門家を活用して以下のポイントを押さえながら進めるからこそです。
1. 共有契約(協定)を作成
共有者同士で共有契約を取り交わし、次の事項を明文化するだけで劇的にトラブルが減ります。
– 売却時期の目安
– 売却価格の目標や妥協ライン
– 修繕費・管理費の負担割合
– 近隣問題の対処方針
2. 弁護士の仲裁で合意形成
共有者の中に強く反対する人がいる場合は、弁護士の立ち合いで合意形成を図りましょう。契約書にサインすると「もう覆せない」と反対者も理解し、折り合いをつけやすくなります。
また、近隣トラブルがあれば、弁護士が適切な法的対応を提案して解決を加速させることができます。
3. 不動産鑑定士による評価で納得感を得る
「こんなボロ物件、もっと安くてもいいだろう」と主張する共有者と、「いや、リフォームすればもっと高く売れる」と主張する共有者が対立するのはよくある話。不動産鑑定士の評価書を根拠に「修繕前後の価値」や「周辺事例」と比較すれば、数字をもとに冷静に判断できます。
相続税を抑えながら売却するテクニック
共有不動産を売却して現金化する際、節税を意識すれば更なるメリットが期待できます。以下に代表的な方法を示します。
1. 長期譲渡所得の優遇
物件の所有期間が5年を超えていれば、長期譲渡所得として税率が大幅に低くなります。相続した物件なら、被相続人の取得日を継承できるので、思いのほか早く長期譲渡に該当することがあります。
2. 小規模宅地等の特例
被相続人が住んでいた宅地を相続する場合、小規模宅地等の特例で最大80%評価が減らせることがあります。共有状態でも要件を満たせば適用可能。税理士と相談し、節税チャンスを逃さないようにしましょう。
3. 賃貸化で借家建付地に切り替える
近隣トラブルを解決したうえで、賃貸化すると借家建付地評価が適用され、相続税の評価が下がるケースがあります。使用貸借から賃貸借契約に切り替えるだけでも評価が下がり、共有者にとって大きなメリットとなる可能性があります。
売却活動:近隣問題の先手解決が効果的
実際に売り出す際、買い手が一番嫌がるのが未解決のトラブルです。時間と費用をかけたくない投資家や住み替え検討者は敬遠しがちなので、以下を実践しましょう。
1. 境界測量や樹木越境を事前に解消
地積測量図の作成、フェンスの設置、樹木の剪定など、隣地との問題をクリアにしてから売り出すと、値引き要求を抑えられ、買い手が安心して購入検討できます。
2. トラブル解決後のレポート提出
弁護士や調停で問題が解決した場合は合意書や解決報告書をまとめ、内覧や商談時に「過去にあった問題はすでに解決済み」と明示しましょう。これが買い手にとっての信頼材料となります。
3. 不動産鑑定士の客観評価で過度な値下げを防ぐ
“訳あり”と見える物件も、専門家の評価を提示すれば、修繕やトラブル解決後の実勢価格を正しく主張できます。安く買い叩かれないためにも有力な交渉ツールです。
まとめ
共有者が反対しても、近隣トラブルがあっても、相続税の負担を最小化しながら物件を売却する道はしっかり存在します。以下のステップを実践すれば、意外なほどスムーズに問題を一掃できるかもしれません。
- 共有契約(協定)や弁護士の仲介で共有者全員の同意を形成
- 近隣トラブルを先手で解決し、境界確定や合意書作成で買い手の不安を除去
- 不動産鑑定士の評価で欠点を正当に減額要因として説明し、売却価格を高める
- 相続税での特例(小規模宅地等、借家建付地)を活かし、税理士と節税プランを練る
- 賃貸化や長期譲渡所得の優遇など、売却タイミング・手法を選択して最大収益を確保
問題を先送りにするほどトラブルは大きくなり、資産価値は目減りします。まずは専門家と相談しながら行動を起こし、共有者間や近隣との交渉を段階的に進めることで“両立回避”を実現できるでしょう。
お問い合わせ
共有持分、共有名義、再建築不可、底地などの訳あり物件でお困りではありませんか?私たちは、どんなに複雑なケースでも迅速かつ丁寧に対応する専門チームを備えています。24時間365日、お気軽にご相談ください。 【24時間電話相談OK】TEL:03-6823-2420 【問い合わせフォーム】 https://sakk.jp/contact/ 訳あり物件の可能性を見出し、解決へ導くプロフェッショナルチームがサポートします。お気軽にお問い合わせください!