2025年の建築基準法改正により、再建築不可物件への対応がさらに厳格化されます。特に旧耐震基準で建てられた建物や、建蔽率・容積率がオーバーしている物件、省エネルギー基準への適合が求められる場合など、これまで以上に高度な対応が必要になると予想されます。
本記事では、これらの課題を深く掘り下げ、法改正後の再建築不可物件の対策を詳しく解説します。
旧耐震基準建物が抱える課題と耐震補強の必要性
再建築不可物件の多くは旧耐震基準下で建てられており、現行の基準と比較して耐震性能が著しく劣ります。この章では、旧耐震基準建物が抱える具体的な問題点と、それに対する耐震補強の必要性について詳しく解説します。
旧耐震基準と新耐震基準の違い
旧耐震基準は1981年6月以前に施行されたもので、地震時の安全性が十分ではありません。一方、新耐震基準は地震に対する耐久性が強化されており、現行法に基づく確認申請を行うにはこの基準を満たす必要があります。
耐震補強が求められる理由
再建築不可物件では、耐震壁の増設や梁・柱の補強、基礎補強、接合部金物の追加などが必須となります。これにより、建物全体の構造安全性を向上させることが可能ですが、大幅な工期とコストが必要です。
補強工事に伴う費用増大
耐震補強は建物内部を大きく開放して行う必要があるため、同時に設備や内装の更新が求められる場合があります。結果として、工事規模が拡大し、費用は飛躍的に増大します。
建蔽率・容積率オーバーと減築の課題
再建築不可物件のもう一つの大きな課題は、建蔽率や容積率が現行基準を超過しているケースが多いことです。この章では、減築の必要性とその課題について解説します。
建蔽率・容積率オーバーの背景
戦前や戦後直後、または法改正前に建てられた密集住宅では、現行の用途地域や防火・準防火規定、日影規制などと合わない「過剰な床面積」を有していることがよくあります。
減築の現実性と課題
確認申請時に法適合を求められる場合、過剰部分を解消するための減築が必要となります。これには単純な解体作業だけでなく、構造安定性の再計算や内部間取りの再構築などが含まれ、大掛かりな施工が必要です。
減築による資産価値の低下
減築は建物の規模や使い勝手を損なうだけでなく、資産価値の低下を引き起こす可能性があります。しかし、法適合を果たさない限り確認申請が通らないため、この選択を迫られる場合があります。
省エネ基準適合の義務化とその影響
法改正後、増改築規模が一定以上になると、省エネルギー基準への適合が義務付けられるケースが増えると予想されます。この章では、省エネ基準適合が求められる際の課題について解説します。
省エネ基準適合の具体的要件
断熱性能向上、設備効率化、気密性確保などが省エネ基準適合の要件となります。これには高性能断熱材や高断熱サッシ、高効率設備の導入が必要となり、コスト負担が増大します。
再建築不可物件における追加負担
再建築不可物件は築年数が古いため、断熱材が不十分である場合が多く、窓の交換や外壁・屋根の断熱強化が必要です。これにより、従来の部分的な設備入れ替えリフォームでは済まなくなります。
包括的な性能改善への移行
これまでの「表層的なリフォーム」から「包括的な性能改善」への移行が求められるため、費用負担だけでなく、計画・施工の難易度も大幅に増加します。
まとめ
2025年の建築基準法改正により、再建築不可物件における耐震補強、減築、省エネ基準適合などの課題が浮き彫りとなります。これらの対応には大規模な工事と多額の費用が必要であり、これまでのような安価なリフォームでは対応できなくなるでしょう。
所有者は、これらの課題を踏まえた上で計画的な対策を講じる必要があります。専門家と連携し、法規制に適合した改修を行うことで、再建築不可物件の価値を最大限に引き出すことが可能です。法改正後の新たな環境に備え、柔軟な対応を検討することが重要です。
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