2025年に予定されている建築基準法改正によって、木造2階建て住宅の区分が「4号建築物」から「新2号建築物」へと移行し、これまで認められていた大規模リフォーム(大規模修繕・模様替え)にも大きな制限がかかる見通しです。とくに「再建築不可物件」を所有されている方は、「そもそも建築確認申請がおりないのに、大規模リフォームはどうなるのか?」と不安を感じているのではないでしょうか。
本記事では、「再建築不可物件」とは何か、その定義と接道義務違反などの法的背景から、2025年の建築基準法改正により生じる影響、そして再建築不可物件の活用やリノベーションを行う際のポイントを詳しく解説していきます。併せて、弊社・株式会社SAが実際に行っている再建築不可物件のリノベーション施工事例などにも触れながら、専門性の高い知見をお届けいたします。
再建築不可物件とは?その定義と背景を解説
再建築不可物件の4つのパターン
「再建築不可」とは文字通り、新たに建物を「建て替え」できない物件を指す総称です。再建築不可となる理由はいくつかありますが、主に以下の4パターンに大別できます。
- 敷地上空に17万ボルト以上の高圧線が通っている場合
高圧線の真下での建築には厳しい制限があり、電力会社や行政の指導により建て替えが認められないケースがあります。これは安全性や送電設備保護の観点から定められているもので、敷地が高圧線の保護区域に該当すると建替え工事は原則NGとなります。
- 既存不適格物件である場合
建築当時には適法だった建物が、後年の法改正によって現行法の基準に合わなくなった状態です。耐震性や防火性能、接道義務などの問題が生じているケースが多く、同一規模の建物を建て直すことができません。特に昭和56年(1981年)以前に建築された「旧耐震基準」の建物は既存不適格になりやすく、全面改修を行おうとしても新耐震基準を満たせずに再建築不可となる例が見られます。
- 市街化調整区域内にある場合
都市計画法により市街化を抑制する地域(市街化調整区域)は、建物の建築が大幅に制限されます。農地や山林を保護する目的もあり、既存建物があっても建て替え許可が下りにくいです。一定の要件を満たせば「既存宅地」として建替え可能な場合もありますが、多くは行政との協議が難航し、再建築不可のまま放置されることもしばしばです。
- 接道義務違反(建築基準法第42条・43条)
幅員4m(地域によっては6m)以上の道路に、2m以上の間口で接していない敷地では原則建築不可となります。実際には再建築不可物件の大半がこの接道義務違反に該当し、都市部の細い路地や、昔ながらの分筆が繰り返された土地などで多く見られます。
接道義務違反とは?再建築不可になってしまう最大の原因
建築基準法の道路と接道義務
建物を建てるうえで最も重要なのが「接道義務」です。建築基準法では、都市計画区域や準都市計画区域内で建築物を建てる場合、敷地は原則「建築基準法上の道路(第42条に規定)」に2m以上接していなければならない(第43条)と定められています。この規定は消防車など緊急車両の進入・避難経路の確保という公共安全の観点から設けられたものです。
- 道路幅員が4m未満の場合(2項道路やみなし道路など)
セットバックという制度を利用すれば、道路の中心線から2m後退したラインを境に敷地を確保できるケースもありますが、道路そのものが私道だったり、公図上の認定が曖昧だったりするとセットバックが困難な場合があります。
- 私道や通路扱いの道
外観上は「道路」に見えても、実際は隣同士で勝手に設定した「通路」や「農道」の場合、建築基準法上は道路とみなされません。いざ売買や建替え段階になって初めて気づき、再建築不可となってしまうケースも多々あります。
再建築不可物件が生まれる背景
現在の法律が施行される前に建築された物件や、独自の慣習で敷地を分筆してきた地域特有の事情があるため、一度「接道義務違反」となってしまうと行政の承認を得るのは非常に難しいです。特に密集地の下町エリアや、農道がそのまま宅地に転用されたエリアなどでは、再建築不可物件が集中し、“住民の高齢化や空き家増加”といった社会問題も併発しています。
再建築不可にはデメリットだけじゃない?物件の見方を変えれば可能性も
相場より安く購入できるメリット
再建築不可物件は一般的には流通価格が低く、建築可能な土地と比較すると“相場の半値以下”で取引されることも珍しくありません。特に住宅ローンの利用が難しいため、現金購入を前提とした投資家やキャッシュリッチな個人が狙うケースが多いです。都心エリアでも駅近物件が割安で手に入ることもあるため、用途次第では高い収益を生み出せる可能性があります。
- 固定資産税も安い
土地評価が低い分、固定資産税や都市計画税も抑えられます。複数物件を所有している場合や投資家にとっては、保有コストを低く抑えられる点は大きな利点でしょう。
- 都心・駅近など好立地に眠る“掘り出し物”
下町や旧市街地など、好立地であっても道路幅員や行政の認定の問題で再建築不可となっている物件は少なくありません。戸建てや小規模アパートなどを賃貸運用する場合、アクセスの良さから高い需要を見込めることもあり、かえって大きな利回りを確保しやすいメリットもあります。
建て替えリスクをどうヘッジするか?
とはいえ、「将来的に建て替えができない」という根本的なハンデは拭えません。特に築古物件の場合、耐震基準が旧耐震であることも多く、火災リスクや自然災害への耐久性が懸念されます。弊社・株式会社SAでは、詳細な構造計算や補強工事でリスクを抑えるノウハウを蓄積しており、再建築不可でも“使い続ける”選択肢を後押ししています。
再建築不可物件のリフォーム・改修はどこまで可能?
増築・改築と「大規模修繕・模様替え」の違い
建築基準法では、次のような工事は原則「建築確認申請」が必要となり、再建築不可物件では申請が通らないケースがほとんどです。
- 増築:建物面積を増やす工事(高さを変える、床面積を足すなど)
- 改築:建物の主要構造(柱・梁・壁など)を一度撤去して、ほぼ新築同様に作り直すこと
一方で、「大規模修繕・大規模模様替え」は主要構造部の一種以上を1/2超修繕・改造するような工事を指しますが、これまでは木造2階建てや延床面積500㎡以下などの4号建築物に該当する場合、建築確認申請が不要とされてきました。再建築不可物件でもスケルトンリフォームやフルリノベーションを実施できたのは、この「4号特例」の恩恵が大きかったのです。
2025年建築基準法改正で「4号特例」が縮小!
新2号建築物と再建築不可物件リフォームへの影響
2025年4月に予定される建築基準法の改正では、「4号建築物」の定義が変更され、これまで対象となっていた木造2階建て住宅や延床面積200㎡を超える平屋などが「新2号建築物」に分類される見込みです。新2号建築物は「大規模修繕・模様替え」であっても建築確認が必要となる可能性が高く、接道義務を満たしていない再建築不可物件の場合には申請がおりない(すなわち工事ができない)事態が想定されます。
- 大規模修繕・模様替え
主要構造部の1/2超を改修するような工事(屋根の吹き替え、外壁全面張り替え、柱や梁の交換、階段位置の変更、大幅な間取り変更など)が対象。
- 確認申請ができない再建築不可物件
これまで可能だった“スケルトンリノベ”などの大規模リフォームが実質不可能になるおそれがあります。一般住宅や収益物件であっても、劣化や老朽化が進んだ際に大幅な改修が難しくなるため、資産価値の低下や安全面のリスクが高まります。
小規模リフォームは可能だがスケルトンリフォームはNGに?
2025年以降も、内装のクロス張り替えやキッチン・浴室の部分的なリフォームなど、小規模工事なら建築確認申請が不要である可能性が高いと見込まれています。ただし、屋根や外壁の全面取り替え、主要構造を変更する改修は新2号建築物扱いで審査対象となり、再建築不可物件ではほぼ認められない可能性があるため、所有者としては慎重な検討が必要です。
弊社(株式会社SA)の実績:再建築不可物件の耐震補強リフォーム
詳細な構造計算で耐震性を担保
弊社・株式会社SAでは、これまで多くの再建築不可物件のリノベーション・リフォームを手がけてまいりました。再建築不可の建物には、築年数が古く図面が残っていないケースが非常に多く見受けられます。そこで独自の計測や詳細な構造計算を行い、可能な限り安全性を高める工法を採用しています。
- 耐震等級3相当の補強
柱・梁・筋交いの補強や、接合部に金物を追加することで構造体全体の強度を高めます。特に旧耐震物件では、建物の歪みや劣化箇所の補強が必須ですが、これを適切に行うことで震度6~7程度の地震にも耐え得る補強が可能です。
- 防火対策・断熱性能の強化
隣家との離隔距離が狭い密集地でも、外壁や内壁に耐火素材を加える「裏打ち工法」を採用することで、火災リスクを軽減します。また、断熱材を適切に配置することで省エネ性能と快適性を同時に向上させることができます。
2025年以降はどうなる?
法改正後に「大規模修繕・模様替え」そのものが建築確認の対象となれば、再建築不可の建物ではリフォームが難しくなります。ただし、「完全に不可能」というわけではなく、小規模な改修や安全対策は引き続き実施できる可能性があります。弊社では法改正後の詳細な運用を見極めつつ、安全性向上・資産価値維持につながる最適なリノベーションプランをご提案していく予定です。
再建築不可物件の活用策:今後の選択肢は?
1. 接道義務をクリアして再建築可能にする
最も根本的な解決策は、隣地を買収して敷地を広げる、またはセットバックを行って法定道路に2m以上接する形へ敷地を再配置する方法です。これには相当な費用と近隣交渉が必要なため、簡単には進まないケースが多いですが、実現できれば正式に「再建築可能」となり、将来的に建て替えができるようになります。
2. 小規模リフォームにとどめる
壁紙や床材の変更、設備交換、浴室・キッチンの入れ替えなど、構造に影響を与えない範囲のリフォームを行い、現状の建物を使い続けるという選択肢です。2025年の法改正後も、この範囲であれば建築確認が不要である可能性が高く、比較的安全かつ低コストで居住性をアップできます。
3. 専門会社に売却する
「大掛かりなリフォームが難しいなら、手放したい」「老朽化が進む前に売却したい」という方は、再建築不可物件の扱いに慣れた専門会社に相談するのが得策です。一般的な不動産仲介会社では適正な査定が行いにくかったり、買主がつかずに売却できなかったりするリスクがありますが、再建築不可を含む特殊物件に特化した企業なら、活用ノウハウや補強工事の経験をもとにスピーディーな買取査定を行えます。
まとめ:2025年以降、再建築不可物件はどう動く?
2025年4月の建築基準法改正による「4号特例」縮小は、木造2階建て住宅を中心とした大規模リフォームのハードルを大きく上げるもので、再建築不可物件にも直接的な影響を与えることが予想されます。これまで認められていたスケルトンリフォームやフルリノベーションが不可能になる可能性があり、今のうちから具体的な対策を検討しておく必要があります。
- 接道義務違反の解消ができるか?
隣地買収やセットバックによる再建築可能化を模索し、建物資産価値を回復できるか検討しましょう。
- 小規模リフォーム・設備更新などで対応可能か?
主要構造をいじらない範囲の改修であれば、建築確認申請不要の範囲にとどまる可能性があります。
- 専門会社による買い取りや資産活用も視野に
法改正の影響でリフォーム規制が厳しくなる前に、早めに不動産会社へ相談・査定を依頼するのも一手です。
弊社・株式会社SAでは、これまで数多くの再建築不可物件の施工や耐震リノベーションに携わってきました。詳細な構造計算や防火・断熱対策を駆使し、物件を最大限活用するノウハウを持っております。今後の法改正でリフォーム基準がどう変わるのか、政府の具体的なアナウンスを見据えつつ、最適なリフォームプランや売却・買取のご提案を行っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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