底地の評価額を知る方法のひとつとして、相続税路線価を用いた計算式があげられます。
とはいえ、実際の取引価格とは異なるため、あくまでも相続時の評価額として捉えておきたいところです。
ここでは底地の評価額の目安のひとつとなる、相続税路線価を用いた計算についてご紹介します。
底地の評価額を路線価を用いて計算してみよう
路線価とは、国土交通省が毎年7月に発表する「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」を基準とする土地の評価額です。
相続税路線価を用いた底地の評価額の計算式は次のとおり。
底地の評価額=相続税路線価×(1-借地権割合)
路線価図の数字(金額)
数字 | 金額 |
---|---|
1 | 1,000円 |
10 | 10,000円 |
100 | 100,000円 |
1,000 | 1,000,000円 |
10,000 | 10,000,000円 |
路線価図には道路に面した宅地1㎡ごとの金額(路線価)が表記されています。
単位は1,000円です。
「10」であれば1㎡あたり10,000円、「500」の場合には1㎡につき500,000円ということになります。
借地権割合
路線価の右隣に記載されたAからGまでのアルファベットは、借地権割合を表しています。
借地権割合は底地の評価額を算出する際に用いられる数値です。
記号(アルファベット) | 借地権割合 |
---|---|
A | 90% |
B | 80% |
C | 70% |
D | 60% |
E | 50% |
F | 40% |
G | 30% |
たとえば「200B」と表記されている場合、1㎡あたりの路線価は200,000円。
借地権割合は80%です。
土地の面積が500㎡であれば、200,000円×500(㎡)×(1-0.8)=20,000,000円が底地の評価額として算定されます。
実際の底地の取引価格
相続税路線価を用いた底地の評価額は、実際の取引価格とは異なります。
相続税路線価はあくまでも相続時の評価額です。
実際の底地の取引価格は、過去の取引を参考にした「取引事例比較法」などを用いて算定されます。
特に底地は借地権が設定されていることから、売却が難しい不動産のひとつです。
借地人との契約期間が長期間に渡るため、その間は地主(底地の所有者)であっても自由に使用することができません。
地主 | 借地人 | |
---|---|---|
権利 | 土地の所有権 | 土地の借地権 |
どのような関係? | 借地人に土地を貸している | 地主から土地を借りている
借りた土地に戸建住宅などを建てている |
費用 | 借地人から支払われた地代を受け取る | 土地の使用料として地主に地代を支払う |
借地権の売買時 | 借地人より承諾料を受け取る | 地主に承諾料を支払う |
底地の売買 | 可能
※買主が見つかることが条件 |
地主から購入することも可能 |
固定資産税 | 土地に対する固定資産税を納める | 建物に対する固定資産税を納める |
都市計画税 | 土地に対する都市計画税を納める | 建物に対する都市計画税を納める |
借地権の種類 | 初回設定期間 | 更新後の期間 |
---|---|---|
普通借地権 | 30年 | 更新1回目:20年
更新2回目以降:10年 |
定期借地権(一般定期借地権)
※戸建住宅、マンション(住宅用) |
50年以上 | 更新なし
契約期間満了後は更地にして地主に返す |
事業用定期借地権 | 10年以上50年未満
※2008年1月1日以前の場合は10年以上20年以下 |
更新なし
契約期間満了後は更地にして地主に返す |
建物譲渡特約付借地権 | 30年以上 | 更新なし
契約期間満了後は地主が建物を買取する |
一時使用目的の借地権 | 2年などの設定も可能 | 更新なし
※一時的な使用が目的のため |
※借地借家法(1992年8月1日以降の契約)
底地を所有する3つのメリット
相続などで底地を受け継いだ場合、次の3つのメリットが得られます。
・長期的に安定した不動産収入
・自身で建物の管理をする必要がない
・固定資産税および都市計画税の軽減措置が受けられる
長期的に安定した不動産収入
底地の所有者(地主)は、借地人より月々の地代を受け取ることが可能です。
借地権の契約期間は30年などの長期で設定されていることから、その間は安定した不動産収入が得られます。
自身で建物の管理をする必要がない
底地の場合には借地人が建物の管理やメンテナンスを担うため、地主自身で建物の管理をする必要がありません。
建物の建て替えや増改築の際には、地主への承諾料が発生します。
固定資産税および都市計画税の軽減措置が受けられる
底地は建物を有する土地であることから、固定資産税および都市計画税の軽減措置が受けられます。
税金の名称 | 軽減措置 | |
---|---|---|
小規模住宅用地
※200㎡以下 |
固定資産税 | 固定資産税評価額×6分の1 |
小規模住宅用地
※200㎡以下 |
都市計画税 | 固定資産税評価額×3分の1 |
一般住宅用地
※200㎡超 |
固定資産税 | 固定資産税評価額×3分の1 |
一般住宅用地
※200㎡超 |
都市計画税 | 固定資産税評価額×3分の2 |
建物の固定資産税や都市計画税は借地人が納付する形です。
地主は土地に対する固定資産税と都市計画税を納めれば問題ありません。
底地の相続時には名義に注意しよう
相続で底地を受け継ぐ際には、必ず名義を確認しておきましょう。
相続人が複数存在する場合には、次のいずれかの方法で分割されます。
分割方法 | 内容 | 特徴 |
---|---|---|
現物分割 | 相続人の数に応じた分割
※相続人2人⇒2分の1 ※相続人3人⇒3分の1 |
・相続人全員に公平な分割が可能
・相続人ごとの相続税の負担が軽減される ・測量費用などが生じる可能性 |
代償分割 | 相続人のうち1名が土地の所有者になる
他の相続人には現金にて分割 |
・相続人全員に公平な分割が可能
・土地をそのままの形で残すことができる ・不動産評価額を算定する必要がある |
換価分割 | 土地の売却後に得た売却金額を相続人全員で均等に分ける | ・相続人全員に公平な現金での分割が可能
・売却の際に所有権移転登記が必須となる ・売却金額によっては譲渡所得税の納付も |
共有分割 | 相続人の全員で土地を共有する
※特定の所有者を決定しない |
・土地をそのままの形で残すことができる
・相続人全員が承諾しないと売却できない |
特に共有分割で底地を相続する際には相続人のすべてが名義人となるため、相続時には他の相続人と話をしておくことをおすすめします。
まとめ
ここまで、底地の評価額の目安のひとつとなる、相続税路線価を用いた計算について紹介してきました。
実際の取引価格は相続税路線価で算出した金額と異なるため、あくまでも参考数値として捉えていただけると幸いです。