底地と借地との違いを徹底解説
「底地って何?」「借地とはどう違う?」「売るといくら・買うときの注意は?」という疑問に、専門用語を避けて順序だてて解説します。
本稿は定義→法律→評価→売却/買取→購入メリット・デメリット→実務チェックリスト→FAQの流れで解説します。
目次
- 1. 底地の意味と借地との違い
- 2. 契約と法律の基本(地代・更新・承諾)
- 3. 評価の考え方(相続・売買の目安)
- 4. 底地を売る方法:3ルート比較と手順
- 5. 底地を買う人向け:メリット・デメリットと注意点
- 6. よくあるトラブルと解決のヒント
- 7. すぐ使える実務チェックリスト
- 8. よくある質問(FAQ)
1. 底地の意味と借地との違い
底地=借地権が設定されている土地。
借地=その土地を借りる側の立場(借地権者)が使う呼び方。
同じ土地でも、地主から見れば「底地」、借地人から見れば「借地」です。
- 地主(底地所有者):地代を受け取る/更新料・承諾料を受ける場面がある。
- 借地人(借地権者):契約に基づき土地を使い、建物を所有・利用できる。
税金は土地の固定資産税・都市計画税を地主が、建物分を借地人が負担します。地代は公租公課(固定資産税・都市計画税)を基準に決める実務が多く、住宅で公租公課の目安3〜5倍、商業地で5〜8倍がよく使われます(契約・地域で変動)。
2. 契約と法律の基本(地代・更新・承諾)
底地・借地は、現在は借地借家法が基本。旧来の契約は旧借地法の影響を受けることがあり、相続・売買時は契約書の条項・締結時期を必ず確認します。
- 契約期間・更新:普通借地は期間到来でも更新が前提。定期借地は満了で返還(更新なし)。
- 地代の改定:物価・税負担・近隣相場の変化で増減を請求できる仕組みがある(合意→調停→裁判の順で検討)。
- 承諾が必要な主な行為:借地権の譲渡・転貸、建替え・増改築、抵当権設定など。実務上、承諾料が発生することが多い(相場例:譲渡承諾料=借地権価格の約10%、建替承諾料=同2〜5%など。地域・契約で大きく異なる)。
ポイントは「契約書に何が書かれているか」。まず契約書、次に覚書・更新合意・判決・調停調書の有無を確認しましょう。
3. 評価の考え方(相続・売買の目安)
相続税評価の目安(路線価地域の基本形):
- 自用地価額=路線価(円/㎡)×地積(㎡)
- 借地権割合:路線価図のアルファベットで判定(A=90%、B=80%、C=70%…G=30%)。
- 底地評価額=自用地価額 ×(1 − 借地権割合)
例:路線価「510C」の道路に接する100㎡の土地なら、自用地価額=51万円×100=5,100万円。借地権割合C=70%なので、底地評価額=5,100万円×(1−0.7)=1,530万円が概算の目安です(角地・不整形・私道負担等は補正)。
売買では、上記に加え契約条件(残存期間・地代水準・承諾条項・未払の有無・建替可否)が価格に強く影響します。
4. 底地を売る方法:3ルート比較と手順
売却先 | スピード | 手取り傾向 | 主なメリット | 注意点 |
---|---|---|---|---|
借地人へ売却 | 1〜3か月 | 高い(相場〜+10%) | 権利が一体化し価値が上がりやすい | 借地人の資金・ローン可否に影響される |
底地専門の買取会社へ | 最短2週間 | 相場の80〜90% | 早い・確実・手間が最小 | 価格はやや抑えめ |
底地+借地の同時売却(共同) | 2〜4か月 | 最大化(相場〜+10%) | 一体売却で買い手の融資が通りやすい | 双方の合意形成とスケジュール調整が必要 |
底地売却の手順(基本)
- 契約書・覚書・地代台帳・更新履歴・未払の有無を収集
- 査定(借地人/専門買取/仲介)の同時比較
- 重要論点の整理(建替承諾可否・譲渡承諾・地代水準・更新条件)
- 条件提示・合意書作成(承諾の要否・引渡し条件・滞納精算)
- 売買契約→決済・名義変更
5. 底地を買う人向け:メリット・デメリットと注意点
メリット
- 表面利回りが相対的に高い(地代収入/取得価額)。
- 借地と一体化できれば資産価値が大きく上がる可能性。
デメリット
- 自由な再開発は不可(借地権が存続)。
- 地代滞納・承諾トラブルのリスク。
デューデリジェンス(必ず確認)
- 契約の種類(普通/定期)、満了日、再契約条件。
- 地代水準(公租公課倍率・近隣相場)と改定条項。
- 承諾が要る行為と承諾料の目安(契約書の記載)。
- 借地人の属性・滞納履歴・増改築の履歴。
6. よくあるトラブルと解決のヒント
- 地代滞納:内容証明で催告→分割和解→担保提供の合意→不履行時は法的手続を検討。
- 無承諾の増改築・譲渡:現況確認→是正協議。承諾料の相場・契約条項に沿って交渉。
- 借地人と連絡が取れない:相続・転居の調査→必要に応じて不在者財産管理人選任を検討。
- 契約書が見当たらない:過去の更新覚書・領収書・建築確認など二次資料で条件を復元し、覚書で再確認。
7. すぐ使える実務チェックリスト
売る/買う前に下記を確認すると、価格・スピード・安全性が大きく向上します。
- 最新の契約書・覚書・更新履歴・地代台帳を揃えた。
- 地代が公租公課の倍率や近隣相場と乖離していないか確認した。
- 譲渡・建替・増改築の承諾条項と承諾料を把握した。
- 未払・係争中の有無、是正計画を整理した。
- 査定は借地人・専門買取・仲介で同時比較した。
8. よくある質問(FAQ)
Q. 底地の相続税評価はどう求めますか?
A. 路線価×地積で自用地価額を出し、(1−借地権割合)を掛けます。例:路線価51万円・100㎡・借地権割合70%なら、5,100万円×30%=1,530万円が目安です。
Q. 借地人の承諾料に法的な決まりはありますか?
A. 明文の金額規定はありません。契約書の定めと地域実務で決まるのが一般的です(譲渡承諾料は借地権価格の約10%、建替承諾料は同2〜5%が一つの目安)。
Q. 底地を高く売るコツは?
A. 借地人との同時売却を打診し、一体化価値を提示すること。難しければ、承諾条件・滞納精算・建替可否など論点を先に整理してから専門買取と交渉すると価格が安定します。